MINATAと学ぶオートメーション #09:押しボタン・セレクタスイッチ・表示灯 — 自動機のいちばん単純なインターフェース
押しボタン・セレクタスイッチ・表示灯:自動機のいちばん単純なインターフェース
包装機がシフトの途中で止まる。オペレーターが盤面を見ると、緑ランプは点いているのにコンベヤが動いていない。何度かStartを押しても反応せず、保全を呼ぶ。原因は、緑ランプがモーターの実フィードバックではなく「運転許可」指令から直接配線されていたこと。サーマルはすでにトリップしていたのに、ランプは点いたままだった。「嘘をつく」ランプ一つのために15分の停止である。
自動機では、オペレーターがPLCに触れたりプログラムを読んだりすることはまずない。毎日触れるのは盤面の押しボタン、セレクタスイッチ、表示灯である。インターフェースの中で最も単純な部分だが、機械が今どこにいて、何が許可され、次に何を確認すべきかを、オペレーターが理解できるかどうかを左右する。
色を誤り、機能を曖昧にし、表示を不統一にすることは、見た目の問題ではない。誤操作、異常時の反応の遅れ、直(シフト)ごとの「このランプは何を意味するのか」という食い違いを生む。単純なインターフェースとは雑でよいという意味ではなく、各信号にちょうど一つの明確な意味を持たせるということである。
本記事は設計の原則を説明する。色コードと安全要求は、運用現場で適用される規格(例:機械の電気装置についてIEC 60204-1、表示色についてIEC 60073、非常停止についてISO 13850)と、各機械・顧客固有の規定に従うこと。
単純なインターフェースこそ雑にしない
オペレーターは見て押すもので、数秒のうちに判断する。ある機械でStartが赤、隣の機械でStopが赤なら、遅かれ早かれ誰かが押し間違える。黄ランプがあるときは「運転中」、あるときは「警報」を意味すれば、オペレーターはそれを無視することを学び、本当に重要なときにも見落とす。
根本原則は単純である。一つの色に一つの意味を、機械全体でも工場内の機械間でも統一する。 色の規格はこのために存在するのであって、装飾のためではない。
押しボタン:モーメンタリとオルタネート
色の前に、ボタンが状態をどう保持するかを理解する。
- モーメンタリ(自動復帰): 押している間だけ作用し、離すと戻る。Start・Stop・Reset・Jogに最も一般的。信号は押している間しか存在しないため、PLCが自己保持回路で状態をラッチする必要がある(自己保持回路の記事で扱う)。
- オルタネート(維持形): 一度押すとラッチし、もう一度押すと解除する。制御電源が失われても物理状態を保ちたい指令に使う。
- 照光式押しボタン: ボタンと表示灯を一体化し、狭い場所に便利だが、そのランプが指令受付を示すのか機構の実状態を示すのかを明確にする。両者は異なる。
押しボタンの色は装飾ではない
IEC 60204-1では、押しボタンのアクチュエータ色は機能で決まる。
| 色 | 意味 | 使用例 |
|---|
| 赤 | 停止/切;非常時に操作 | Stop、Off、非常停止(E-stop、下記参照) |
| 緑 | 始動/運転/入 | Start、On |
| 黄/橙 | 異常を抑えるための介入;中断した工程の再開 | 故障リセット、介入 |
| 青 | 必須の動作を要求する機能 | 強制リセット、確認指令 |
| 白/灰/黒 | 固有の意味を持たない一般指令 | Jog、上記に属さない指令 |
最も重要な二つの規則:
- STARTは緑を優先し、赤は絶対に使わない。
- STOPは赤を優先し、緑は使わない。
Start/Stopを交互に行うボタン(プッシュオン/プッシュオフ)には、白・灰・黒を使う。赤も緑も使わず、誤認を避ける。
非常停止(E-stop)は普通の押しボタンではない
E-stopを「大きなStopボタン」と捉える人が多いが、そうではない。非常停止はISO 13850とIEC 60204-1に基づく安全機器であり、必須の特徴を持つ。
- 黄地に赤いきのこ頭で、見やすく手が届きやすい。
- ラッチ形: 押すと停止状態を保持し、能動的に回す/引くまで解除されない。ひとりでに復帰しない。
- 直動(強制開離)形のb接点を使う。押すと接点がばねに依存せず機械的にこじ開けられ、接点が溶着していても遮断できる。
- E-stopの解除はラッチを解くだけで、機械がひとりでに動き出してはならない(機械安全の記事で詳述)。
- E-stopを通常の運転停止として使わない。 通常工程内の停止には専用のStopボタンを設ける。
言い換えれば、黄地の赤とラッチ機構は「これは人の安全である」という合図であり、工程制御のボタンと混ぜてはならない。
セレクタスイッチ:モードを選び保持する
セレクタスイッチは瞬時の指令ではなく運転モードを設定する。
- 2または3ポジション。モード変更の権限を制限するキー操作式もある。
- 維持形であり、オペレーターが回すまで位置を保つ。PLCはこれを常時条件として読む(例:ManualかAutoか)。
- 代表例はOff / Manual / Auto。Manualでは各機構をjogでき、Autoでは工程を運転する。
陥りやすい点は運転中のモード切替である。運転中にAutoからManualへ回すことは、PLCのビットを変えるだけでなく、安全に扱う(運動を止め、負荷を保持し、ステップを飛ばさない)必要がある。手動と自動は同じ安全条件のセットを共有しなければならない。
表示灯:一つの色に一つのメッセージ
IEC 60204-1/IEC 60073による表示灯の色は、機械状態とオペレーターの動作に対応する。
| 色 | 状態 | オペレーターの動作 |
|---|
| 赤 | 故障/危険、直ちに処置 | 直ちに介入 |
| 黄 | 異常/警告、限界に接近 | 監視または介入準備 |
| 緑 | 正常/準備完了/安全 | 動作不要 |
| 青 | 必須:特定の動作が必要 | 要求された動作を実行 |
| 白 | 一般情報/中立 | 監視 |
実用上の注意:
- 点滅と点灯: 点滅は通常、注意を引くか、「保留/これから起こる」と「確定」を区別する。点滅の規約も統一する。
- ランプテスト: 球切れを検出する手段を設ける。「安全」を示す緑が切れたまま黙っていると、情報が隠れる。
- ランプに嘘をつかせない: ランプは送った指令ではなく、フィードバックから取った実状態を映す(冒頭の話のとおり)。
取付と配線:耐久性を決めるもの
ボタンと表示灯の機械・電気の側面が、機械が安定して動く期間を決める。
- 標準の取付穴径: 最も一般的なのはØ22 mm(特殊用途にØ16 mm、Ø30 mm)。一つの径を選び、盤全体で統一して付属品を共通化する。
- 接点ブロックの分離: ボタン・表示灯の本体は接点ブロックと分かれることが多い。一つのボタン頭に複数のNO/NCブロックを積める。だから一つのStartボタンがPLC入力への信号と補助回路の投入を兼ねられる。NO/NCの詳細は第10回の内容。
- 保護等級(IP): 湿気・粉塵のある盤面にはIP65以上のボタン・表示灯を選ぶ。噴流水環境ではさらに上を。
- 表示灯の電圧: 現代の制御盤には24 VDC LEDを優先する。長寿命、低電流、PLC/リレー出力に合う。図面に電圧を明記し、220 V球の誤取付を防ぐ。
- 接点電流: ボタン接点は小電流用である。ボタン接点で大負荷を直接開閉しない(モーター、大容量弁)。ボタンはリレー/電磁接触器を駆動し、その機器が負荷を開閉する(第11・12回)。
- 配線は整然と番号付け: ボタン・表示灯から端子台へ戻る各線に番号を付け、I/Oリストと一致させる。ノイズを避けるため信号線は動力線から分ける。
盤面からPLCロジックへ
ボタンと表示灯は始点と終点にすぎず、間にロジックがある。下図は代表的なStart信号の全経路をまとめたものである。

- モーメンタリのStart/Stopボタンは、手を離した後も状態を保つためPLC内の自己保持回路が要る。
- E-stopは自己保持を直接遮断する。 オペレーターがStartを押し続けても運転状態は0に落ちなければならない。
- ボタンがa接点かb接点(NO/NC)かは、断線や信号喪失時の機械の挙動を決める。これがまさに次回第10回の主題である。
- 表示灯は投入したばかりの出力ではなく、機構の実フィードバックから取る(コイルが励磁されても機構が実際に動いたとは限らない)。
MINATAの技術リファレンス
下の例はMINATAの設計思想に沿った参考案であり、最終的な仕様と構成は実際の記録・規格・機器に照らして確認すること。
Delta AX-308E(CODESYS)で制御するMINATAの機械セルでは、最小限の盤面は通常、緑のStart、赤のStop、Off/Manual/Autoセレクタ、一つのE-stop(黄地の赤きのこ)、そして緑(運転中)/黄(警告)/赤(故障)の三つのランプを持つ。
ロジックの接続:
- Start(モーメンタリ)はデジタル入力へ入り、STではStartと許可条件があるとき変数
bRunをセットし、Stopまたは安全回路の喪失でリセットする。 - E-stopはまずハードウェア安全回路を通り、その後に状態がPLCへ報告されて表示される。PLCは唯一の保護層ではない。
- 緑ランプは
bRunではなく機構の実フィードバック(ドライブの運転信号や運動センサーなど)から取り、冒頭の「嘘をつくランプ」を避ける。 - 黄ランプは「機械は止めないが注意が必要」な警告をまとめ、赤ランプは工程を止める故障をまとめる。
色の規約を守り、ランプをフィードバックから配線することで、次直のオペレーターは前直に尋ねずとも盤面を見るだけで機械の状態を理解できる。
よくある失敗
- 「見た目のため」にStartへ赤、Stopへ緑を使う。
- E-stopを大きなStopボタンとみなし、終業時の停止にまで使う。
- 「運転中」ランプを実フィードバックではなく指令から直接配線する。
- 一つの盤に複数の穴径(Ø16/Ø22/Ø30)を混在させ、付属品在庫を乱す。
- ボタン接点でリレー/電磁接触器を介さず大負荷を直接開閉する。
- ランプテストがなく、球切れを黙って放置して安全情報を隠す。
ボタン・スイッチ・表示灯インターフェースのチェックリスト
- [ ] 各ボタン・スイッチ・表示灯が一つの機能と明確な表示を持つ。
- [ ] 色が規格に従い、機械全体・工場全体で統一されている。
- [ ] Startは赤でなく、Stopは緑でない。
- [ ] E-stopは黄地の赤きのこ、ラッチ形、強制開離接点で、通常のStopと分離。
- [ ] モードセレクタが運転中の切替を安全に扱う。
- [ ] ランプが実状態を映し、球確認の手段がある。
- [ ] モーメンタリボタンにPLC内の対応する自己保持回路がある。
- [ ] 穴径・IP等級・ランプ電圧が図面に明記されている。
ボタン・スイッチ・表示灯のインターフェースは、オペレーターが毎直向き合うものである。これを統一的で正直なものにすることが、使いやすく安全な機械への第一歩である。
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