MINATAと学ぶオートメーション #13:サーマルリレー — 長引く過負荷からモーターを守る
サーマルリレー:長引く過負荷からモーターを守る
コンベヤを駆動するモーターが材料をかんで詰まり、電流が定格の約1.3倍に上がる。ブレーカーが動作するには足りない——ブレーカーは短絡と非常に大きな過負荷しか捉えない。その電流がくすぶり続け、モーター巻線が熱を帯び、絶縁が急速に劣化し、数週間後にモーターが焼損する。これを捉えるべきなのは専任の機器——サーマルリレー(熱動過負荷継電器)である。
境界は重要で、よく混同される。ブレーカー/ヒューズは短絡(極大電流、瞬時遮断)を、サーマルリレーは過負荷(やや高い電流が長引く)を守る。 二つの異なる故障種別には二つの異なる機器が要り、どちらも他方を代替しない。
本記事では、サーマルリレーの動作、なぜ反限時特性で動作するのか、クラス10/20/30の意味、モーターのFLAでの電流設定、そして電磁接触器を落とす接点配線を説明する。
本記事は原則を述べる。定格は機器カタログと適用規格(例:モーター始動器についてIEC 60947-4-1)に従うこと。重要モーターには、バイメタル形の代わりに電子式保護リレーを使える。
原理:バイメタルと熱の蓄積
古典的なサーマルリレーはバイメタル——膨張係数の異なる二金属を貼り合わせたもの——に基づく。モーター電流が通る(またはバイメタル周りの加熱コイルを通る)と、電流が大きいほどバイメタルは熱を帯びて曲がる。曲がりが十分になると、機械ラッチを外し、接点群の状態を変える。
この機構の妙は、モーターの発熱の仕方を正しく模擬することにある。熱は瞬時でなく時間とともに蓄積する。やや高い電流が長時間続くと危険で、短時間の高電流(始動電流など)は危険でない。バイメタルはモーター巻線と同じく「熱を覚える」ので、始動時に誤動作せずに保護する。

反限時特性
これが核心的な性質である。電流が高いほどトリップ時間が短い(反限時)。定格をわずかに超える電流ではリレーはかなり待ってから動作し、定格の数倍では格段に速く動作する。特性曲線は図のように下り坂を描く。
これによりサーマルリレーは始動中に動作しない。かご形モーターは定格の6〜8倍の電流で始動するが数秒だけで、曲線の下にあるためリレーは「見逃す」。だがその始動電流が異常に長引く(モーターが回れない、負荷が詰まる)と、時間がしきい値を超えて動作する。
クラス10、20、30:始動にどれだけ耐えるか
クラス(トリップクラス)は、定格の7.2倍の電流に動作前どれだけ耐えるかを示す。
| クラス | 7.2×Iでのトリップ時間 | 用途 |
|---|
| クラス10 | ≤ 10秒 | 軽く速い始動のモーター(ポンプ、小形ファン) |
| クラス20 | ≤ 20秒 | 中程度の始動、中慣性負荷 |
| クラス30 | ≤ 30秒 | 重始動、大慣性(コンプレッサ、重コンベヤ) |
重始動負荷に低すぎるクラスを選ぶ → 始動時に動作して機械が動けない。軽負荷に高すぎるクラスを選ぶ → 保護が鈍く不感。クラス10が一般的な既定で、始動が長いとき上げる。
電流設定と接点配線
- FLAで電流を設定: サーマルリレーには電流範囲のダイヤルがある。モーター銘板の全負荷電流(FLA)にちょうど設定する。高すぎると保護が失われ、低すぎると誤動作する。
- 補助接点: サーマルリレーは通常NC接点(95-96)一つとNO(97-98)一つを持つ。NC 95-96は電磁接触器コイル回路に直列で、過負荷時に開く → コイルKMが失電 → モーター停止。NO 97-98は故障信号(灯/PLC)用。
- リセットモード: 重要モーターには手動リセット(再始動前の確認を強制)、適切なら自動リセットを選ぶ。安全上は手動リセットが好まれる。
- 取付位置: サーマルリレーは電磁接触器の直後、モーターへの線上に付け、実際のモーター電流を測る。多くのサーマルリレーは、同一銘柄の電磁接触器の出力端子に直接差し込む設計で、コンパクトなブロックを作る——省スペースで、電流が三相を正しく通ることを保証する。別体ブロックを使うときは相順を正しく渡し、ずらさない。
- 三相すべてを通す: サーマルリレーは三相の電流を測る。何らかの理由で二相しか通らない(誤配線)と、過負荷と欠相の検出能力がゆがむ。
注意:サーマルリレーは短絡を保護しない。極大の短絡電流はバイメタルが反応する前にリレー自身を壊す——それはブレーカー/ヒューズの仕事(第14回)。三機器(ブレーカー–電磁接触器–サーマルリレー)は協調しなければならない。
バイメタル、温度補償、欠相保護
サーマルリレーを正しく使うための実用的な特性:
- 周囲温度補償: バイメタルは熱に反応するので盤温度も影響する。良いサーマルリレーは、盤が高温でもトリップしきい値が過度に動かないよう補償機構を持つ。それでも過度に熱い盤はリレーを実際より敏感にする——盤の換気/放熱もモーター保護の一部である。
- 欠相保護: 三相モーターが一相を失うと、残る二相が電流を増しモーターが焼けやすい。多くのサーマルリレーは差動欠相機構を持ち、通常の過負荷しきい値を待たず、三相が不平衡になると速く動作する。重要モーターにはこの機能付きを選ぶ。
- 冷却とリセット: 動作後、バイメタルはリセット前に冷える時間が要る——繰り返しリセットしない。モーターがまだ熱いうちに早すぎる再始動を強いると、過熱の悪循環へ押し込む。
バイメタル形サーマルリレーと電子式保護リレー
古典的なバイメタル形のほか、電子式モーター保護リレー/ブロック(電子式過負荷)もある。
| 基準 | バイメタル | 電子式 |
|---|
| 原理 | 熱機械式 | センサーで電流測定+処理 |
| 精度 | 中程度 | 高い、広い設定範囲 |
| 機能 | 基本的 | 欠相、拘束、相不平衡、事象記録、通信 |
| 価格 | 安価 | 高め |
多くの機械にはバイメタル形サーマルリレーで十分かつ経済的である。高価なモーター、連続運転、遠隔監視が要る場合は、電子式保護ブロック(PLC/SCADAへ報告する通信網に組み込めることが多い)が投資に値する。
具体的な電流設定例
三相380 Vのモーターが銘板にFLA = 7.5 A、軽始動と示すとする。設定:
- 7.5 Aを含む範囲のサーマルリレーを選ぶ——例えば5.5〜8 A範囲。4〜6 A(届かない)や9〜13 A(7.5 Aが底に近く設定が不正確)を選ばない。
- ダイヤルをちょうど7.5 Aに設定し、「動作しないように」切り上げない。
- クラス10(軽始動)を選ぶ。重く大慣性のコンベヤならクラス20を検討。
- 電磁接触器をAC-3 ≥ 7.5 A(第12回)で、短絡保護のブレーカー/ヒューズ(第14回)を協調して選ぶ。
リレーを付けても始動時に動作するなら、順に確認する。電流が正しいFLAか → クラスが始動時間に合うか → モーターが詰まり/相不平衡か。電流を上げて「直す」ことはしない——それは保護を捨てることである。
誤動作と早すぎる再始動を避ける
サーマルリレーでよくある二つの運転上の失敗:
- 連続した再始動での誤動作: 各始動はモーターとバイメタルに熱を注ぐ。連続した速い始動は熱を逃がす時間を残さない。工程が毎時多数の始動を要するなら、モーターとクラスの選定でこれを考慮する。
- モーターがまだ熱いうちのリセット: 前述のとおりバイメタルは冷えてからリセットする。動作直後に再始動を強いると過熱の悪循環へ押し込む。重要モーターには手動リセットを使い、原因を止めて確認してから再始動させる。
MINATAの技術リファレンス
下の例はMINATAの設計思想に沿った参考案であり、最終仕様と構成は実際の記録・規格・機器に照らして確認すること。
MINATAのセルでは、各モーターに古典的な三点セットを使う。ブレーカー(短絡)→ 電磁接触器(開閉)→ サーマルリレー(過負荷)→ モーター。サーマルリレーのNC 95-96接点が電磁接触器コイル回路に直列にあり、過負荷時にPLCなしでハードウェアでモーターが止まる。
並行して、NO 97-98接点をDelta AX-308E入力へ戻し、PLCが「このモーターが今過負荷した」と分かる——対応する赤灯を点け、事象を記録し、運転中の工程をきれいに止める。オペレーターは盤を開けて各リレーを確認せず、どのモーターが故障したかを即座に見る。原因に対処後、サーマルリレーを手動リセットしてから再始動する。
よくある失敗
- サーマルリレーとブレーカーを混同し、一機器で過負荷も短絡も守ると思う。
- 「動作しないように」FLAより高く電流を設定 → 保護を失う。
- 重始動負荷に低いクラスを選ぶ → 始動時に誤動作。
- NC 95-96接点を電磁接触器コイル回路に入れ忘れる → リレーが動作してもモーターが回り続ける。
- 危険なモーターに自動リセットを使い、故障後に機械が自ら再始動する。
- 故障信号(97-98)をPLC/灯へ出さず、どのモーターが過負荷したか分かりにくい。
サーマルリレーのチェックリスト
- [ ] 明確に理解:サーマルリレーは過負荷、ブレーカー/ヒューズは短絡。
- [ ] 電流をモーター銘板のFLAにちょうど設定。
- [ ] 負荷の始動時間に合うクラスを選ぶ。
- [ ] NC 95-96接点が電磁接触器コイル回路に直列。
- [ ] NO 97-98接点が故障を灯/PLCへ知らせる。
- [ ] リセットモードを選ぶ(重要モーターは手動を優先)。
- [ ] 電磁接触器(#12)とブレーカー(#14)と協調し完全な始動器に。
サーマルリレーはモーターの「熱の番人」である。瞬時の故障には反応せず、モーターを最も殺しやすいくすぶる過負荷をちょうど捉える。正しい電流を設定し正しい接点を配線することが、駆動系で最も高価な部分の寿命を延ばす。
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