MINATAと学ぶオートメーション #15:24VDC電源 — 制御盤のための選定と計算
24VDC電源:制御盤のための選定と計算
ある制御盤が数か月安定して動いたのち、「ぐずり」始める:ときどきPLCがリセットし、センサーが不安定に読み、HMIが明滅する。PLCもセンサーも交換して直らない。犯人は、ぎりぎりで選んだ24VDC電源だった:バルブとランプが同時に入ると電流が電源容量を超えて跳ね上がり、電圧がしきい値以下に落ち、盤全体が一度に「電気に飢える」。電源は完全に壊れてはいない——ただ十分に強くないだけだ。
24VDC電源は現代の自動化盤の電気的な心臓である:PLC、センサー、リレーコイル、電磁弁、HMIはほぼすべて24VDCで動く。容量の選び違い、雑な配線、余裕の省略は即座に故障を起こさず、もっとも見つけにくい断続的な不具合を生む。
本記事では、なぜ24VDCが標準になったか、電源種類の選び方、負荷合計と余裕の計算、突入電流の注意点、保護・配線・接地の仕方、重要機械のための冗長化を説明する。
本記事は原則を述べる。具体的定格は電源のカタログと盤に適用される規格(例:IEC 60204-1)に従うこと。0Vの接地方法はメーカーの指示と設置規定に従う。
なぜ24VDCが標準になったか
24VDCが産業制御で主流になったのは、三つを両立するからだ:
- 安全性: 24Vは特別低電圧(ELV)域にあり、220Vより操作・配線がはるかに安全。
- 届く強さ: 12Vより高いので、盤内や現場への長い配線での電圧降下に耐え、信号を安定に保つ。
- 既存のエコシステム: ほぼすべてのPLC・センサー・リレー・バルブ・HMIに24VDC版がある——一つの電圧で揃えると盤が小さく保守しやすい。
こうした理由から、現代の制御回路は既定で24VDCであり、220VACは動力回路と一部の大型電磁接触器コイルに残るのみだ。
電源種類:リニアとスイッチング(SMPS)
主な二系統:
- リニア電源: かさばる変圧器、低効率、熱い、重い。今日の盤ではまれで、極低ノイズが要る一部用途に残るのみ。
- スイッチング電源(SMPS): 小型、高効率、DINレール取付、広い入力範囲。自動化盤の既定である。電源に合う入力範囲(例:85〜264VAC)を持ち、過負荷/短絡/過熱保護と状態表示があるものを選ぶ。
一部のSMPSは「パワーブースト」特性——短時間の過負荷に耐えて突入に打ち勝つ——を持ち、電流ピークの高い負荷に非常に有用だ。
負荷合計と余裕の計算
これが決定的な段階だ。原則:すべての24V負荷の消費電流を合計し、25〜30%の余裕を足す。

図のような小型盤の例:
| 負荷 | 電流 (A) |
|---|
| PLCのCPU+I/O(AX-308E) | 1.5 |
| センサー(光電/近接) | 1.0 |
| リレーコイル/電磁弁 | 2.0 |
| HMI+表示灯 | 0.8 |
| 合計 | 5.3 |
30%の余裕を足す:5.3 × 1.3 ≈ 6.9A → 7A以上の電源を選ぶ。実際には余裕と拡張余地のため24V/10A電源へ丸めることが多い。
余裕が要る理由:(1) 紙上の計算は小さな負荷を落としがち、(2) 後日機器を足すと負荷が増える、(3) 100%近くで運転すると電源が熱くなり寿命が縮み、ピーク時に電圧が落ちやすい。合計にぴったりの電源を選んではいけない。
突入電流——見落とされがちな罠
多くの負荷は、定常運転電流より高い投入時のピーク電流を引く:
- 電磁弁・リレーコイル: 吸引時の電流ピーク。
- ランプ(特に白熱)・容量性負荷: 初期充電の大きなピーク。
- 入力コンデンサを持つモジュール: コンデンサ充電が短い電流ピークを作る。
多数の負荷が同時に入ると、合成ピークは平均合計電流をはるかに超えうる。容量不足の電源は一瞬電圧が落ち、PLC/センサーを乱す。対策:余裕とピーク耐量のある電源を選ぶか、全部同時でなく負荷の投入をずらして順序づける。
微妙な点:電源は過渡的な過負荷に遭うと、通常二つの挙動のどちらかを取る——「ヒカップ」(繰り返し再試行)か「定電流」(電流を保ち電圧を落とす)。始動ピークのある負荷には定電流かパワーブーストが向く。ヒカップだと電源が明滅し続けて負荷を起動できないことがあるからだ。「難しい」負荷では電源の過負荷特性をよく読むこと。
分岐保護・配線・接地
- 24V分岐を分ける: すべての負荷を一本の線で走らせない。分岐(PLC、センサー、バルブ…)に分け、各分岐を小型ヒューズかブレーカー、または保護付き分配モジュールで守る。一つの分岐が短絡してもその分岐だけ開き、残りは秩序ある停止のため動き続ける。
- 電源のAC入力: 開閉と保護のため専用のMCBを介して給電する。
- 明確な+24V/0V配線: 一貫した規約色、電流と電圧降下に十分な断面積、長い配線に細すぎる線を避ける。
- 0Vの接地: 多くの系はノイズ耐性と安定した基準のため、メーカーの指示に従い一点で0Vを接地する。複数の任意点で接地してアースループを作らず、資料どおりに行う。
電源購入時の仕様の読み方
出力電流のほか、ラベル/カタログの数項目に注目する価値がある:
- 出力電圧と調整範囲: 多くの産業用SMPSは出力電圧の微調整(例:24〜28V)ができる。長い配線の降下を補うため少し上げてよいが、負荷の許容範囲を超えない。
- 入力電圧範囲: 電源の変動を心配しなくてよいよう広範囲(例:85〜264VAC)を選ぶ。電源事情の弱い場所では非常に重要。
- 効率と発熱: 高効率は涼しく、盤内の放熱スペースが少なくて済む。電源が熱いほど寿命は縮む——指示どおり周囲に通気を確保する。
- 保持時間(hold-up): 入力喪失後に24Vを保てる時間。短い停電を乗り切る能力に関係する。
- 内蔵保護: 過負荷(通常は自己復帰)、短絡、過電圧、過熱。そしてPLCへ戻す状態表示(DC-OKのLED/接点)。
- 取付方式と寸法: DINレール、盤内の占有幅、端子の向き——配置(#47の盤配置)に影響する。
「ワット」の数値は電流×電圧にすぎない。比較のときは24Vでの電流に換算して負荷表と突き合わせる。
安定した電圧は定格数値より重要
24V負荷は通常、電圧の幅(例:24V ±10%)を許容する。しかし危険なのは少しずれた電圧ではなく、ピーク時の変動や瞬時の電圧降下だ。良い電源は負荷が急変しても電圧を安定に保つ(過渡応答が良い)。だから余裕を持って容量を選び信頼できるブランドを選ぶことが、定格数値に固執するより重要だ:紙上の24Vでも、バルブが吸引するたびに20Vへ落ちるなら不具合を起こす。
重要機械のための冗長化と監視
24Vを失うことは制御を失うことなので、重要機械では次を検討する:
- バッファモジュール: エネルギーを蓄え、停電の瞬断中も数百ミリ秒〜数秒24Vを保つ——過渡的な電圧降下でPLCがリセットしない程度に。
- 二重電源+冗長モジュール: ダイオードモジュールを介した並列二電源。一方が壊れても他方が負荷を担い、無停電。
- DC UPS: 商用電源喪失時に電池から24Vを供給し、安全停止か短時間の継続運転を可能にする。
- 電圧監視: 24Vがしきい値を下回ると警報するリレー/信号をPLCへ戻し、盤全体が飢える前に早期警報する。
すべての機械が全部を要るわけではない。重要度と制御喪失時の影響で選ぶ。
参考となる技術シナリオ
以下の図はMINATAの設計思想に沿った参考案である。最終的な定格と構成は、実際の資料・規格・機器に照らして確認すること。
MINATAの機械セルでは、220VAC入力が専用MCBを介して、総負荷に対し余裕をもって選んだSMPS 24Vへ入る(上記の負荷合計+30%を適用)。電源から24V分配バーが保護付き分岐へ分かれる:AX-308EとI/Oモジュールへの分岐、センサー分岐、リレーコイル/バルブ分岐(ピーク電流が最大で電源の最寄りに置く)、HMI/表示灯分岐。
重要なセルでは、MINATAは商用電源の瞬断でPLCがリセットしないようバッファモジュールを加え、24V電圧監視信号をPLC入力へ戻す。こうして電源が弱り始めると、断続的な不具合の群れの中で作業者に当て推量させる代わりに、系が早期に警報する。
よくある誤り
- 合計にぴったりの電源を余裕なしで選ぶ → ピーク時に電圧降下。
- 突入電流を無視し、全負荷を同時に投入。
- 全負荷を一分岐で走らせ個別保護がない → 一つの短絡が盤全体を落とす。
- 24V/0V配線が長距離で細すぎ、電圧降下を起こす。
- 0Vを任意の複数点で接地し、アースループとノイズを作る。
- 重要機械なのにバッファ/監視がなく、商用瞬断でPLCがリセット。
24VDC電源チェックリスト
- [ ] すべての24V負荷電流を合計し、25〜30%の余裕を足す。
- [ ] 過負荷/短絡/過熱保護のあるレール取付SMPSを使う。
- [ ] 突入電流を考慮し、負荷の投入をずらすことを検討。
- [ ] AC入力はMCBを介し、各24V分岐を個別保護。
- [ ] +24V/0V配線は十分な断面積、規約色、降下を範囲内に。
- [ ] 0Vはメーカー指示に従い一点接地。
- [ ] 重要機械:バッファ/冗長/UPS+電圧監視を検討。
保守のこつ:電源自体に設計総負荷と取付日を表示しておくと、次の拡張時に技術者が一から測り直さずに残り余裕を把握できる。電源は、機械が長年かけて機器を足すうちに「静かに過負荷」になりやすい箇所だ。
24VDC電源は盤内で最も注目されないが、盤内のあらゆる機器の下に位置する。少し余裕をもって選び、分岐を分け、きちんと監視すれば、運転時に最も厄介な「断続的で原因不明」の不具合を一群まるごと取り除ける。
MINATAで自動化の知識をもっと読む:https://minatavn.com/ja/blog/industrial-automation
前の記事 — #14:ヒューズとブレーカー:短絡と過電流の保護:https://minatavn.com/ja/blog/automation-14-fuses-circuit-breakers-ja
次の記事 — #16:光電センサー:透過形・回帰反射形・拡散反射形:https://minatavn.com/ja/blog/automation-16-photoelectric-sensors-ja
MINATAの技術記事をすべて見る