MINATAと学ぶオートメーション #21:自己保持回路 — あらゆる制御回路の基礎
自己保持回路:あらゆる制御回路の基礎
初心者がモーター制御回路を配線し、Startボタンを電磁接触器コイルへ直接つなぐ。機械は動く——だがStartボタンに指を当てている間だけだ。離すとモーターは止まる。彼はなぜか悩むが、誰かが指摘する:Startボタンはモーメンタリ形で、その信号は押している間だけ存在する(#09で扱った)。「一度押してStopまで走らせる」には、その状態を保持する回路——自己保持回路——が要る。
自己保持回路(セルフホールド、またはシールイン)はほぼあらゆる制御回路の構成要素だ。モーター起動、正逆転、スターデルタ、インターロック——すべてがこの上に築かれる。この回路を徹底的に理解することは、一瞬の指令がどう維持状態になり、どう安全に取り消されるかを理解することだ。
本記事では、自己保持回路の原理、Start/Stop/補助接点の配線、Stop優先の規則、派生形、停電時の挙動、図面上での読み方、そしてPLCでのセット/リセットによる等価の書き方を説明する。後の記事の制御回路の大半はこの回路の拡張形なので、ここで習得に費やす時間は後で大いに報われる。
本記事は原則を述べる。部品の詳細、電流、安全は実際の機器と適用規格に従うこと。
問題:モーメンタリ押しボタンは保持しない
#09で学んだとおり、Startボタンは通常モーメンタリ——押している間だけ動作する。このボタンをコイルKへ直接つなぐと、コイルは押している間だけ通電し、離すと失われる。モーメンタリボタンで「入れて保持」するには、ボタンを離した後もコイルへ給電する回路が要る。それがまさに自己保持回路の仕事だ。
原理:コイルK自身の補助接点
秘訣は、Startボタンと並列に配線した、コイルK自身のNO補助接点にある:

動作の順序:
- Start(NO)を押す → 電流がStartを通り、閉じているStop(NC)を通り、コイルKへ → Kが通電。
- Kの通電がK補助接点(NO)を閉じる。この接点はStartと並列なので、いまコイルへ給電する別の経路がある——Startはもう不要。
- Startを離す → Startは開くが、電流はK補助接点を通り続ける → コイルKは保持されたまま。これが「自己保持」だ。
- Stop(NC)を押す → 回路が切れる → コイルKが失電 → K補助接点が開く → 回路は初期状態へ戻り、次のStartに備える。
微妙な点:保持接点がコイルKのものだからこそ、Kが何らかの理由(Stop、停電、故障)で失電すると、回路は自ら解除する——「固着」状態がない。
Stop優先:StopはつねにStartに勝つ
基本的な安全要件:StartとStopが同時に動作したら、Stopが勝たなければならない(機械は動いてはならない)。上の標準回路では、Stop(NC)がコイルへの経路に直列に配線され——Stopが押されると、Startが押されているか否かによらず回路を切る。これをStop優先(stop priority)回路と呼び、正しい配線だ。
逆に、誰かがStartがStopに「勝てる」よう誤配線すると、危険な状況が生じる:Startを押し続けるとStopが効かない。つねにStop優先で配線する。
なぜStopはNC配線か(フェイルセーフ)
#10の原則を思い出す:StopはNC接点に配線する。通常Stopは閉じているので回路は導通する。Stopを押すかStopへの断線が回路を開く → 停止。つまり故障(断線、端子の緩み)が自ら機械を安全状態へ導く。逆にStartはNO配線:Start線の断線は最悪でも「起動できない」で、危険ではない。
だからあらゆる自己保持回路で、StartはNO、StopはNC——恣意的な慣習でなく安全の論理だ。
よくある派生形
基本の自己保持回路には要件に応じ多くの派生形がある:
- 許可条件を追加: 保護(サーマルリレー95-96、#13)、安全センサー、ガード扉…のNC接点を、コイルへの経路に直列で追加する。いずれかの条件が開けば機械は止まる。
- 複数Start/複数Stopボタン: 複数のStartは並列(どれからも起動)、複数のStopは直列(どこのStopを押しても止まる——安全に正しい)。
- 状態表示灯: もう一つのK補助接点が「運転中」灯へ給電する——ただし#09を思い出す:可能なら灯は実状態(例:モーターのフィードバック)を反映すべきだ。
- 故障後のリセット: 保護が動作した後、機械が自ら再起動しないよう、再起動にリセット押下を要する回路もある。
PLC内の自己保持回路:セット/リセット
PLCへ移ると、自己保持回路には等価な二つの書き方がある:
- ラダーの「シールイン」方式: 電気回路そのままに描く——Start接点が出力ビット自身の接点と並列の分岐、Stop条件と直列、出力コイルへ。電気回路に慣れた人に直感的。
- セット/リセット方式: 構造化テキスト(ST)またはラダーで、Startと許可条件があるときセット命令、Stopまたは失われた安全条件でリセットを使う。STの考え方の例:
IF bStart AND bPermit THEN bRun := TRUE; END_IF;
IF NOT bStop OR NOT bSafe THEN bRun := FALSE; END_IF;
Stop信号の論理に注意:StopがNC配線なら、「未停止」のときPLC入力は1なので、リセット条件はその向きで書く必要がある(#10がNC信号の反転を警告した)。そして同一スキャン内でリセットが優先でなければ「Stopが勝つ」を保てない。
セット/リセット方式は、「何が入れるか」と「何が切るか」を明確に分けるので、多条件の複雑な論理では大抵保守しやすい。一方シールインラダー方式は、電気回路に慣れた人に直感的で、機器図と一対一で対照しやすい。両者は同じ挙動を与える——Stop優先とフェイルセーフを保つ限り、チームの習慣と回路の複雑さで選ぶ。
停電時と復電時の挙動
機器ベースの自己保持回路の重要な特性:停電するとコイルは解除され、復電しても回路は自ら再起動しない。 運転状態は補助接点を通る電流で保持されるので、停電はその電流を失う。復電時、コイルはまだ解除状態で、走らせるには再度Startを押す必要がある。これは通常望ましい挙動だ——停電後に機械が独りでに再起動せず、停電時に作業していた人への危険を避ける。
何らかの理由で復電後に機械を自動再起動させる必要があれば(例:レベルを保つ給水ポンプ)、意図的に設計しその安全を慎重に検討する——決して偶然に任せない。PLCでは、状態ビットが停電後にどう保持/初期化されるか(リテインか否か)に注意し、再起動挙動が設計意図に合うようにする。これは停電/再起動の記事(第5段)で再び出会う主題だ。
図面上で自己保持回路を読む
電気図面を読むとき、自己保持回路には非常に見つけやすい印がある:
- 分岐の末端(中性母線Nの近く)にコイル(K、KM…)を探す。
- 上流を見ると、Startボタンとそのコイルと同じ名前の接点(例:コイルKならK接点)の並列分岐が見える。コイル名の接点がStartと並列——これがまさに「自己保持」の印だ。
- コイルへの経路には通常直列のNC接点がある:Stop、サーマルリレー、安全——これらが停止条件だ。
命名規約が非常に重要:同じ機器の接点とコイルは同じ記号を持ち、役割(コイルと接点)だけが異なる。この規約を押さえると回路を速くたどれ、より複雑な制御図を読む基礎になる(#26が図を左→右、上→下に読む方法を詳しく扱う)。
参考となる技術シナリオ
以下の図はMINATAの設計思想に沿った参考案である。最終的な定格と構成は、実際の資料・規格・機器に照らして確認すること。
MINATAのセルでは、コンベヤモーターが機器レベルの古典的な自己保持回路を使う:Start NO、Stop NC、電磁接触器の補助接点で自己保持、サーマルリレーのNC接点と安全回路を直列に。いずれかの保護が動作すると、電磁接触器コイルが失電しコンベヤが止まる。
並行して、この論理はDelta AX-308Eでもセット/リセットの対として反映される:bConveyorRunは運転指令と条件が揃うとセットされ、Stop/安全/過負荷でリセットされる。電磁接触器の補助接点がPLCへ戻り、電磁接触器が実際に閉じたことを確認する——指令したのにフィードバックが見えなければ、PLCは盲目に信じず故障を報告する(#09の精神どおり)。両層——機器とPLC——が一つの一貫した論理を保つ。
よくある誤り
- Startをコイルへ直結し、自己保持分岐を忘れる → Startをずっと押し続ける羽目に。
- StartがStopに勝てるよう配線 → Startを押し続けるとStopが効かない。
- Start NCやStop NOを使う → フェイルセーフを失い、誤運転や断線時に止められない恐れ。
- 複数Stopを直列でなく並列に配線 → 一つのStopで全回路を切れない。
- PLCで非優先のリセットを書く → Stop後も機械が走るスキャンが生じる。
- 保護接点(サーマルリレー、安全)を保持回路に直列で入れ忘れる。
自己保持回路チェックリスト
- [ ] Start(NO)をコイル自身のNO補助接点と並列に。
- [ ] Stop(NC)を直列に、Stop優先で配線。
- [ ] 許可/保護条件(サーマルリレー、安全)を直列に。
- [ ] 複数Startは並列、複数Stopは直列。
- [ ] PLCでは:リセット優先、NC信号の反転を正しく処理。
- [ ] 確認が要る所では実状態フィードバック(補助接点)を。
- [ ] 自動再起動を防ぐため故障後のリセットを検討。
- [ ] 停電時の挙動を確認:復電しても機械が自ら再起動しない(意図的に設計する場合を除く)。
自己保持回路は小さく単純だが、この後のほぼあらゆる制御回路で繰り返されるひな型だ。四つのこと——補助接点による自己保持、Stop優先、Stop NCのフェイルセーフ、そしてPLCでのセット/リセットへの翻訳——を押さえれば、続く記事のより複雑な回路を読み・組む基礎ができる。
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