MINATAと学ぶオートメーション #40:エンコーダと位置の帰り値 — 動きは測れなければならない
エンコーダと位置の帰り値:動きは測れなければならない
エンコーダは回転や直線の動きを信号に変え、PLCやドライブに、機構がどれだけ進んだか、どれだけ速いか、いまどこにいるかを伝える。これは帰り値であって、魔法ではない。機構が滑っていたり、カップリングにガタがあったり、測る場所を間違えていたりすれば、エンコーダの数値は健全に見えたまま、機械の先端は違うところにいる。
何に使うのか
- コンベヤや回転軸の速度を測る。
- 測長ローラで長さを数える。
- サーボの位置の帰り値として、また原点復帰の手順のために。
- 包装、印字のマーク、送り切断の同期のために。
インクリメンタル形はA相とB相、多くの場合はZ相のパルスを出し、そこから数と向きを得る。アブソリュート形は、適した通信の規約で絶対位置の符号を返す。どちらを選ぶかは、停電をまたいで位置を保つ必要があるかどうか、そして速度、ケーブルの長さ、環境、入力やドライブが実際に読める範囲で決まる。
パルスから工業単位へ
運転者に「123456パルス」と見せてはいけない。エンコーダの分解能と伝達比を使い、数をミリメートル、毎分回転、角度に直す。測長ローラを介する場合は、有効な円周、滑り、材料の当たり方まで数に入れる。図面の上で正しい式でも、ローラが滑れば機械の上では合わない。
原点復帰と基準点
インクリメンタル形は、電源を入れた時点ではどこが零かを知らない。機械には原点復帰の手順が要る。安全な速度で動かし、原点のセンサーかZ相を探し、止めて座標を与える。ソフト上の制限が意味を持つのは、位置が基準づけられたあとである。機械的な限界と、リスクアセスメントが求める安全の手当ては、それとは別に必要である。
インクリメンタルとアブソリュート
| 種類 | 停電をまたいで位置を保つか | 原点復帰の要否 | 備考 |
|---|
| インクリメンタル(A/B/Z) | 保たない | 必要 | 安価で一般的。相対的なパルスの数え上げ |
| アブソリュート・シングルターン | 一回転の中では保つ | ほとんど不要 | 一回転の中の絶対位置が分かる |
| アブソリュート・マルチターン | 保つ。多回転にわたって | 不要 | 停電後も絶対座標を保持する |
分解能と四逓倍、数値の例
インクリメンタル形はA相とB相の縁で数える。四逓倍で読めば、一回転あたり1000パルスのエンコーダは 一回転あたり4000カウント になる。円周200mmの測長ローラを介せば、材料のところでの分解能は200mm ÷ 4000 = 1カウントあたり0.05mm である。もっと細かくしたければ、パルス数を上げるかローラの円周を小さくする。ただしその前に、最高速度のときのパルス周波数を、入力やドライブが読める上限と突き合わせること。
出力の形式とケーブル
ラインドライバの出力、つまり差動のRS-422は、オープンコレクタやプッシュプルより雑音に強く、距離も伸ばせる。長いケーブルと高いパルス周波数が重なると、数え落としが起きる。一回転あたりのパルス数に毎秒の回転数を掛けた値を、入力の上限と比べる。シールド線を使い、保護接地へ正しく落とす。そうして初めて、数えた値が信用できる。
参考になる現場の一場面
すべり台がエンコーダ付きのサーボで動いている。電源を入れると、自動運転に入る前に原点復帰を求める。PLCは原点復帰の完了、位置到達、ドライブの異常を見張り、HMIでは範囲を限った寸動ができる。モーターが回っているのに数が変わらないなら、切り分けはカップリング、エンコーダのケーブル、ドライブ側の帰り値から始める。理屈を書き換えるのは、そのあとだ。
エンコーダのチェックリスト
- [ ] 目的が速度か、長さか、絶対位置かを書き残した。
- [ ] 分解能を換算し、機械の先端で確かめた。
- [ ] ケーブル、シールド、入力やドライブの規格が合っている。
- [ ] 原点復帰、範囲の限界、帰り値を失ったときの動きが決まっている。
- [ ] 試運転のあと、一度きりではなく繰り返しの精度を測った。
エンコーダは動きをデータに変える。次の #41 ではHMIに移る。そのデータを、運転者が正しく判断できる形で見せる場所である。
MINATAで自動化の知識をもっと読む:https://minatavn.com/ja/blog/industrial-automation
前の記事 — #39:サーボとインバータ:https://minatavn.com/ja/blog/automation-39-servo-vs-vfd-ja
次の記事 — #41:機械のためのHMI入門:https://minatavn.com/ja/blog/automation-41-basic-hmi-ja
MINATAの技術記事をすべて見る