MINATAと学ぶオートメーション #68:PID制御の基礎 — 係数より先に、工程とセンサーと操作端を理解する
PID制御の基礎:係数より先に、工程とセンサーと操作端を理解する
PIDは、当てずっぽうに試す三つの数字ではない。制御の出来は、信用できる測定と、大きさの合った操作端と、言葉で説明できる工程から始まる。この三つが定まらないうちに係数をいじるのは、症状を撫でているだけである。
測定値、目標値、操作量、そして動作の向き
三つの量をはっきりさせる。測定値、たとえば温度。目標値。そして 操作量、つまり無接点継電器や弁へ出す出力である。単位、取り込みの周期、センサーの範囲、出力の上下限、そして 動作の向き も書き残す。出力を増やすと測定値は上がるのか、下がるのか。この向きを取り違えると、制御は目標へ近づくどころか離れていく。基本的な誤りだが、よく起きる。
比例、積分、微分のそれぞれの役目
- 比例: いまの偏差に応じて動く。強めれば速くなるが、揺れやすくもなる。
- 積分: 残った偏差を消し、測定値を目標に載せる。強すぎると行き過ぎと、ゆっくりした振れを生む。
- 微分: 変化の勢いに応じて動き、行き過ぎを抑える。雑音に敏感なので、温度の制御では小さくするか零にすることが多い。
PIDでは治らないもの
雑音の多いセンサー、固着した弁、長い無駄時間、すでに振り切った出力。これらは係数を上げ続けても治らない。零から百までしか開かない弁は、積分がどれだけ出力を押し上げても、それ以上のエネルギーを送れない。調整の前に、測定と操作端を確かめる。PIDは良い工程をうまく制御するが、壊れた工程を直しはしない。
参考になる現場の一場面
ある温度の制御では、測温抵抗体が測定値、目標の温度が目標値、無接点継電器が操作量になっている。係数に触れる前に、担当者は動作の向きが正しいこと、つまり出力を増やせば本当に温度が上がることを確かめ、センサーが安定して読めていること、継電器と加熱器に十分な容量があることを確かめた。調整はそのあとである。加熱器の容量が足りなければ、どんな係数でも時間内に目標へは届かない。
係数の値、取り込みの周期、上下限は、工程、機器、運転の要求に従う。
よくある間違い
- 測定と操作端を確かめないまま、係数を当てずっぽうに試す。
- 動作の向きを取り違え、制御が目標から離れていく。
- 雑音の多い信号に大きな微分をかけ、出力が震える。
- 容量の足りない操作端を、積分で押し切ろうとする。
- 無駄時間を無視して、速い応答を期待する。
基礎のチェックリスト
- [ ] 測定値、目標値、操作量、単位、動作の向きを定めた。
- [ ] センサーが安定して読め、操作端に十分な容量がある。
- [ ] 触る前に、比例と積分と微分の役目を理解している。
- [ ] 無駄時間と出力の上下限を勘定に入れている。
- [ ] 測定や操作端の不具合を、PIDで覆い隠していない。
先に工程を理解することが、調整を結果に変える。次の #69 では調整と積分の巻き込み対策に入る。データに基づいて調整し、操作端の限界を尊重する話である。
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