MINATAと学ぶオートメーション #69:PIDの調整と巻き込み対策 — データで調整し、操作端の限界を尊重する
PIDの調整と巻き込み対策:データで調整し、操作端の限界を尊重する
よい調整は、説明できる安定した応答を生む。工程がどうふるまったかの記録を取らないまま急いで調整すると、たいてい問題が別の問題に入れ替わるだけである。揺れが止まれば遅くなり、遅さが取れれば行き過ぎる。
応答の目標から始める
何かをいじる前に、目標を数字で書く。目標値に届くまでの時間、許せる行き過ぎ、許せる揺れ、エネルギーの限界、落ち着くまでの時間。質量の大きい温度の制御に、速い圧力の制御と同じ応答は要らない。期待を間違えると、調整も間違った方向へ進む。
データを見て調整する
目標値を変えたとき、負荷が変わったときの応答を記録し、勘ではなくその記録から調整する。よく使われる進め方はこうだ。揺れが出ない範囲で、応答が十分速くなるまで比例を上げる。残った偏差を消すために積分を足す。微分は、信号が十分きれいで、行き過ぎを抑えたいときにだけ使う。一度に変えるのは一つだけにして、様子を見る。三つ同時に触らない。
積分の巻き込みと、その対策
出力が零や百に張り付いているあいだも、積分の項は偏差を積み続けることがある。これが 積分の巻き込み である。工程が制御できる範囲に戻ってきたとき、出力は行くべきところをはるかに越えて引っぱられ、大きな行き過ぎを生む。手立ては、巻き込み対策、出力の追従、積分の制限 である。実装はメーカーごとに違うので、使っている制御器で設定し、確かめること。
操作端の限界を尊重する
調整で物理を超えることはできない。操作端がしょっちゅう振り切れているなら、問題は機器の大きさか工程そのものであって、係数ではない。操作端にできる以上の速さを求めれば、揺れを生み、機器をすり減らすだけである。
参考になる現場の一場面
ある弁の制御は、負荷が急に増えると出力が百に張り付き、負荷が戻ると大きく行き過ぎていた。担当者は制御器の資料にしたがって巻き込み対策と積分の制限を有効にし、前後の応答を記録した。行き過ぎははっきり減った。残った分は、係数をさらに上げるのではなく、弁の大きさを見直して手当てした。
係数の値、巻き込み対策の設定、応答の目標は、工程と機器の資料に従う。
よくある間違い
- 数字の目標も応答の記録もないまま調整する。
- 比例と積分と微分をまとめて変え、何が効いたか分からなくなる。
- 出力がよく振り切れる制御で、巻き込みを放っておく。
- 操作端が物理的に出せない応答を期待する。
- 工程の性質が違う制御のあいだで、係数を写す。
チェックリスト
- [ ] 調整の前に、応答の目標を数字で書いた。
- [ ] 記録したデータに沿って、一度に一つずつ調整した。
- [ ] 巻き込み対策と積分の制限を、制御器に合わせて設定した。
- [ ] 出力が振り切れたあとの応答を確かめた。
- [ ] 操作端の限界を、押し切らずに尊重した。
データに沿って、操作端の限界の中で調整することが、長持ちする応答をつくる。次の #70 ではセンサーの校正と換算に入る。PLCの中の値を、大もとから信用できるものにする話だ。
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