MINATAと学ぶオートメーション #70:センサーの校正と換算 — 信号から、信用できる値へ
センサーの校正と換算:信号から、信用できる値へ
HMIに整った数字が出ていることは、その数字が正しいことの証明にはならない。物理の量からPLCのタグまでの道はいくつもの区間を通り、誤差はそのどこにでも潜む。正しい校正と換算が、その数字を信じるための条件である。
測定の連なりを描く
連なりを最後まで描く。物理の量、センサー、伝送器、配線、必要なら絶縁器、アナログ入力の機器、PLCでの換算、HMIに出す単位。そして校正の履歴も添える。誤差が現れたとき、この連なりが、どこを測るべきかを教えてくれる。勘でセンサーを交換するのではなく。不具合は伝送器にも、換算にも、入力の機器にもありうる。センサーとは限らない。
換算は、もれなく書き出す
換算には、入力の機器の 生値の範囲、工業単位の範囲、ずれの補正、上下限、そして 範囲を外れたときのふるまい を書く。直線の式が正しいのは、その機器の本当の生値の範囲を使ったときだけである。三つの範囲、つまりセンサーと機器と表示の範囲を、必ず一緒に記録する。HMIには一つの範囲が書いてあるのに、PLCは別の範囲で換算している、という状態をつくらないために。
範囲の下と、断線の扱い
4〜20mAでは、4mAが工業単位の零を表すことがある。しかし 4mAを下回る値 は、資料にしたがって異常か範囲外として扱う。本当の零と混ぜてはいけない。線が切れた伝送器はおよそ0mAになる。それをPLCが「0bar」と読めば、機械は誤った判断をしうる。しきい値とそのときの動きを、はっきり決めておく。
何点かで校正する
範囲の中の何点か、たとえば零、中央、上限で、標準器と比べて換算を確かめる。中央の一点だけでは足りない。直線から外れた誤差は、複数の点を見て初めて姿を現す。校正した日付、使った標準器、結果を記録し、時間とともにずれていく様子を追えるようにする。
参考になる現場の一場面
0〜10barを測る4〜20mAの伝送器がある。試運転のとき、担当者は標準の圧力を何点か加えてPLCの値と比べ、換算が正しいことを確かめ、4mAを下回る値では異常を出すように設定した。おかげで、のちに線が切れたとき、PLCは0barと表示して運転を続けるのではなく、信号を失ったことを知らせた。
範囲、しきい値、校正の手順は、機器の資料と工程の要求に従う。
よくある間違い
- 測定の連なりを確かめずに、HMIの数字を信じる。
- その機器の本当の生値の範囲ではない値で換算する。
- 4mAを下回る値を本当の零と読み、断線に気づけなくする。
- 一点しか確かめず、直線から外れた誤差を見落とす。
- 校正の履歴を残さず、ずれの進み方が分からなくなる。
校正と換算のチェックリスト
- [ ] 物理の量からPLCのタグまで、連なりを資料にした。
- [ ] 換算に、生値の範囲、工業単位の範囲、ずれの補正、上下限を書いた。
- [ ] 範囲の下と異常を、本当の零とは別に扱っている。
- [ ] 範囲の中の何点かを、標準器と比べて確かめた。
- [ ] 日付、使った標準器、結果を記録した。
大もとから信用できる値が、正しい制御と見える化の土台である。次の #71 では空気圧と圧力の監視に移る。機械が黙って力不足に陥らないようにする話だ。
MINATAで自動化の知識をもっと読む:https://minatavn.com/ja/blog/industrial-automation
前の記事 — #69:PIDの調整と巻き込み対策:https://minatavn.com/ja/blog/automation-69-pid-tuning-anti-windup-ja
次の記事 — #71:空気圧と圧力の監視:https://minatavn.com/ja/blog/automation-71-pneumatics-pressure-monitoring-ja
MINATAの技術記事をすべて見る