MINATAと学ぶオートメーション #80:自動化システムの引き渡し — 運転し、切り分け、保全できる形で渡す
自動化システムの引き渡し:運転し、切り分け、保全できる形で渡す
自動化の系が本当に完成するのは、運転する人たちが安全に動かし、様子がおかしいことに気づき、正しく復旧し、自分たちの手に余るところで誰を呼べばよいかを知っているときである。検収の日に動いた機械は、引き渡しの必要な条件ではあるが、十分な条件ではない。
最低限の引き渡しの束
引き渡しに要るのは、使える資料であって、署名の場で見栄えのする資料ではない。最低限、たいてい次が入る。
- 完成図書。 電気と空気圧の図面、入出力の一覧、部品の一覧。
- ソフトと控え。 版数付きで。パラメータと生産条件の台帳も添えて。
- 利用者と権限。 手順どおりに。そしてネットワークの地図。
- 機器の説明書、立会検査の記録、残項目の一覧。
- 保全の予定 と、よく起きる不具合への手引き。
どのファイルにも、置き場所と持ち主と改訂の番号が要る。あとから来る人が、いまのものを見つけられるように。
教育も引き渡しの一部である
教育とは、始動のボタンを実演することではない。運転する交替の人たちには、モード、許可の条件、警報、そして始動と停止と再始動の手順が要る。保全の人たちには、施錠の手順、回路の確認、控えの取り方と戻し方、機器の交換の仕方、そして どこまで手を出してよいか が要る。自分で処置するところと、技術やメーカーを呼ぶところの境目である。
引き渡しは、長く使うためにある
最後の目標は、現場の人たちが、当てずっぽうによらずに動かし、切り分け、保全できることである。よく起きる不具合は、口伝えではなく、チェック表と、手引きを添えた警報の中にあるべきだ。引き渡しのあとの変更にも同じ規律を保つ。理由を書き、影響を見て、変える前に控えを取り、関わるところを試験し直し、新しい版を保管する。
参考になる現場の一場面
ある設備一式を引き渡すとき、担当した側は完成図書、版数の付いたソフトの控え、パラメータと生産条件の台帳、保全の予定を渡した。運転の交替には実際の画面とチェック表で教え、保全には控えの取り方と戻し方、そして手を出してよい範囲を示した。何週間かのち、機器を一つ交換することになったとき、現場の人たちは資料を見て自分たちで済ませた。小さな用件のたびに製作した側を呼ばずに。
資料の一覧、教育の内容、変更の手順は、契約と工場の運転の要求に従う。
よくある間違い
- 一度うまく動いたことを、引き渡しが済んだことと取り違える。
- 版数も持ち主もないファイルで、いまのものが見つからない。
- 始動の実演だけで、モードも警報も復旧も教えない。
- 保全がどこまで手を出してよいかを、示さない。
- 引き渡し後の変更に、控えも再試験も新しい版もない。
引き渡しのチェックリスト
- [ ] 完成図書、控え、パラメータ、説明書、検査の記録がそろっている。
- [ ] どのファイルにも置き場所と持ち主と改訂の番号がある。
- [ ] 運転の教育が、モード、許可の条件、警報、始動と停止と再始動を含む。
- [ ] 保全の教育が、施錠、回路の確認、控えと復元、そして境目を含む。
- [ ] 引き渡しのあとの変更の手順が、合意されている。
長く使うために引き渡すこと。この連載がずっと向かっていたのは、そこである。系を理解し、証拠で確かめ、あとから来る人たちが安全に動かし、切り分け、保全できる形で残すこと。
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