MINATAと学ぶオートメーション #02:電力 — 正しい電圧でもなぜ過負荷になり得るのか
電源には 24 VDC、電磁弁にも 24 VDC と書かれています。つなげば動きます — ただし、安定して動くとは限りません。
正しい電圧は「機器が同じ電位レベルを使うかどうか」に答えるだけです。電源がシステム全体を養えるかを知るには、さらに電流と電力を計算しなければなりません。各機構を単体で試すと問題なく動くのに、複数の負荷が同時に入ると電圧が落ちたり再起動したりする — その原因はまさにここにあります。
1. 電力は何を教えてくれるのか
直流(direct current — DC)回路での基本計算は、
P = V × I
ここで、
- P は電力、単位はワット(W)。
- V は電圧、単位はボルト(V)。
- I は電流、単位はアンペア(A)。
たとえば、0.25 A を流す 24 VDC の電磁弁コイルの電力は、およそ
24 × 0.25 = 6 W
NIST によれば、1 ワットは 1 秒あたり 1 ジュールに等しく、電気回路では 1 ボルトの電位差を 1 アンペアが通過することで生じる電力とイメージできます。
純抵抗負荷では、次の式も使います。
この二つの式は、接触抵抗が増えた接続点がなぜ急速に発熱するのかを説明します。熱は電流の二乗に比例して増えるからです。緩んだ圧着端子はすぐに機械を止めるとは限りませんが、発熱してはいけない場所でちょうど電気エネルギーを熱に変えているのです。
2.「24 V 電源」は無限の電力を意味しない
24 VDC のラベルは公称出力電圧を示します。電源には電流の上限もあり、たとえば 2.5 A や 5 A です。
| 電源 | 定格電流 | おおよその出力電力 |
|---|
| 24 VDC – 1 A | 1 A | 24 W |
| 24 VDC – 2.5 A | 2.5 A | 60 W |
| 24 VDC – 5 A | 5 A | 120 W |
合計負荷が 3 A を要求するのに電源が連続で 2.5 A しか供給できない場合、システムは次のようになり得ます。
- 電圧が落ちる;
- 過電流保護が働く;
- 遮断と復帰を繰り返す;
- PLC や HMI が再起動する;
- センサーが断続的に反応する;
- 電磁弁の吸引が歯切れ悪くなる。
これが、機械が「ちょうど 24 V」でも不具合を起こす理由です。
3. 制御盤の電力バジェットを立てる
次の 24 VDC 負荷を持つ小型機械を考えます。
| 負荷グループ | 数量 | 1台あたりの電力 | 同時率 | 計算電力 |
|---|
| PLC と I/O モジュール | 1 セット | 8 W | 100% | 8 W |
| センサー | 6 | 1.2 W | 100% | 7.2 W |
| 電磁弁 | 4 | 6 W | 50% | 12 W |
| HMI | 1 | 12 W | 100% | 12 W |
| 想定合計負荷 | | | | 39.2 W |
| 25% の余裕を加算 | | | | 49 W |
機械のロジックで、4 つの弁のうち同時に入るのは最大 2 つと保証できるなら、同時率 50% を使えます。ただしその条件は、設計とプログラムで確実に固定されていなければならず、単なる仮定であってはいけません。
計算上は、60 W の電源で 49 W をまかなえます。実際には、メーカーの特性曲線を読み、盤内温度・換気・突入電流・拡張計画も考慮する必要があります。環境が高温だったり、負荷に大きな電流ピークがあったりする場合は、72 W や 120 W クラスを選ぶ方が妥当なこともあります — 「大きいほど良い」からではなく、運転条件を十分に検討した結果としてです。
4. 連続負荷とピーク負荷は同じではない
ある機器は定常運転中の消費は小さくても、電源投入時の短時間だけ大きな電流を必要とすることがあります。この現象を突入電流(inrush current)またはピーク電流(peak current)と呼びます。
注意すべき負荷:
- コンタクタのコイルと電磁弁;
- DC モーター;
- 大電力 LED;
- DC–DC コンバータ;
- 入力コンデンサを持つ HMI、IPC などの機器;
- 主電源投入後に多数の機器が同時に起動する場合。
公称電力を足すだけでは、電源は数ミリ秒から数秒の間、上限に達し得ます。そのため、電源の短時間電力ブースト能力・過電流制限・起動特性を読む必要があります。
5. 温度上昇に伴うディレーティング
ディレーティング(derating)とは、運転条件が定格条件より厳しいときに、許容負荷を下げなければならないことです。電源では、よくある要因は次のとおりです。
- 盤内温度が高い;
- 取り付けが密すぎて対流が悪い;
- 標高が高く放熱能力が下がる;
- 入力電圧が限界付近にある;
- 高い負荷が長時間続く。
ラベルに印字された電力の数値をそのまま取り、技術資料を見ずに年間を通じて 100% で運転すべきではありません。該当する電源型番のディレーティング曲線こそが根拠になります。
6. 配線上の損失を忘れない
電源は端子で 24 V を保っていても、長いケーブルの先にある負荷は電圧降下のためにより低い値を受け取ります。電流が大きく、電線が細く、配線が長いほど、損失は大きくなります。
実用的な確認手順:
- 電源出力のすぐそばで電圧を測る。
- 負荷が動作している間に、負荷で電圧を測る。
- 二つの値を比較する。
- 端子・圧着端子・端子台・電線断面積を確認する。
- 異常な発熱の兆候があればサーモカメラを使う。
無負荷で測ると、高抵抗の接続部はたいてい見つけられません。
7. 電源の電力は保護機器の代わりにならない
大電力の 24 VDC 電源だからといって、ヒューズや分岐ブレーカーを省けるわけではありません。保護は次と協調する必要があります。
- 電線の許容電流;
- 負荷の動作電流と突入電流;
- 短絡時の遮断能力;
- 電源の電流制限特性;
- ある分岐の故障が制御全体を巻き込まないためのゾーニング要求。
PLC・センサー・弁は、別々の保護分岐に分けられます。重要な機械では、制御用電源とアクチュエータ用電源を分離することで、診断を容易にし、相互影響を減らせます。
8. 電源を確定する前の MINATA チェックリスト
| 質問 | 必要な根拠 |
|---|
| 電圧と極性は正しいか? | 電気図面、機器ラベル |
| 連続負荷の合計はいくらか? | 電力バジェット表 |
| どの負荷に突入電流があるか? | データシートと電源投入シーケンス |
| どの負荷が同時に入り得るか? | 機械のシーケンスと PLC ロジック |
| 拡張の余裕はあるか? | 理由のある余裕 |
| 盤内温度でディレーティングが生じるか? | メーカーの曲線 |
| 配線末端の電圧降下は許容範囲か? | 計算と実測 |
| 負荷分岐は適切に保護されているか? | 保護図面と電線サイズ |
まとめ
電源を選ぶとき、「どれも 24 VDC だ」で止まってはいけません。負荷リストを作り、電力を計算し、同時率・突入電流・温度・電圧降下を検討してください。設計段階の小さな計算表が、機械を組み上げた後の長時間の故障診断を防いでくれます。
次回: 直流と交流 — 電源をボルトの数値だけで選ばない。
参考資料
- NIST, Watt: https://www.nist.gov/glossary-term/34606
- NIST, SI Units – Electric Current: https://www.nist.gov/pml/owm/si-units-electric-current
- OSHA, Electrical Glossary: https://www.osha.gov/electrical/glossary
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