機械設計 #01:チェーン・ベルト駆動における軸受と軸の荷重計算
軸受と軸にかかる荷重
この記事は、チェーンやベルトを使う駆動系で、軸受と軸にかかる荷重を求めるための計算方法をまとめたものです。設計と荷重検証でよく使う基本式に焦点を当て、NTN の軸受カタログを参考資料としています。
① 軸受と軸にかかる荷重の式
荷重の計算は次のとおりです。
この計算は NTN の製品カタログの式を参考にしています。 (参考:NTN 転がり軸受総合カタログ CAT. NO. 2202-Ⅶ/J, A-23)。
なお、参考資料では、軸受荷重の式は伝達動力(kW)に基づいています。ただし私の場合は、実際の運転トルクから計算することが多いため、トルクを伝達動力(kW)に換算してから式に当てはめています。
② 必要な条件 計算に必要な条件は、上の図を参照してください。
2. 軸受について計算すべき荷重値
① トルクから伝達動力を求める(補足計算) W[kW] = (0.1047 × N × T1) / 1000
② スプロケットまたはプーリにかかる荷重 Kt[N] = (19.1 × (10⁶ × H)) / (Dp × Ns)
③ 初期張力(initial tension)を含む荷重 Kr(F1)[N] = fb × Kt
④ 軸受 A にかかるラジアル荷重 FrA[N] = (((a + b) / b) × F1) + ((d / (c + d)) × F2)
⑤ 軸受 B にかかるラジアル荷重 FrB[N] = -((a / b) × F1) + ((c / (c + d)) × F2)
3. 計算ファイルのダウンロード
この荷重計算式の Excel シートをダウンロードできます。
この式が前提にしていること
式が並んでいると数値はすぐ出る。だから危ないのは計算そのものではなく、前提のほうである。 結果を使って軸受を選ぶ前に、次の五点を確かめる。
| 式の前提 | 実際が違うとどうなるか |
|---|
| ラジアル荷重だけを扱う | はすば歯車、芯ずれしたVベルト、軸の芯ずれはアキシアル荷重を生む。別途計算が要る |
| 力が同一平面にある | チェーンとプーリが別方向に引くなら、平面ごとに分解してベクトルで合成する |
| Dpはピッチ円直径である | スプロケットやプーリの外径を取ると、結果は実際より小さく出る |
| Hは運転中に実際に伝達している動力である | 電動機の銘板値を取ると、実際の負荷次第で荷重が過大にも過小にもなる |
| f<sub>b</sub>はその伝動形式の初張力係数である | チェーン、Vベルト、歯付ベルトで係数は違う。一つの値を共用した時点で誤りになる |
さらに、FrAとFrBはある定常運転状態での荷重である。始動トルク、かじり時のトルク、衝撃荷重 は式に含まれていない。軸受の静的な確認では、これらを別に考える必要がある。
間違えやすい三箇所
- FrBの式の負号。 これは図で仮定した向きに対する力の向きを示すものであり、「負の荷重」では
ない。軸受を選ぶときは大きさを使い、軸を計算するときは符号を保って正しく足す。
- 軸受荷重と軸受寿命の混同。 KtとFrは作用する荷重にすぎない。L10寿命は別の計算であり、
実際に選んだ軸受の基本動定格荷重Cを使う。
- a、b、c、dが配置で変わることを見落とす。 同じ伝動でも、プーリを軸受から数十ミリ遠ざける
だけで片方の軸受荷重は目に見えて増える。動力と回転数が工程で決まるのに対し、ここは設計者が まだ変えられる変数である。
計算の前に用意すべき入力データ
軸受や軸支持の荷重を計算する前に、次の情報をそろえておくべきです。
- 実際の動力・回転数・トルク。
- プーリ・スプロケット・歯車の直径。
- 力の作用点から各支持までの距離。
- 作用力の方向:ベルト張力、チェーン力、ラジアル荷重、アキシアル荷重。
- 運転条件:衝撃荷重、連続運転、反転、粉じん/高温/多湿の環境。
- 要求寿命と、顧客または工場の社内安全率。
これらのデータが欠けていると、計算は数値を出せても、軸受の選定や設計評価に十分な信頼性を持ちません。
よくある質問
実際の運転トルクと電動機の銘板値、どちらを使うべきですか。
記事のとおり、実際の運転トルクを使い、kWへ換算する。電動機は余裕をみて選ばれるのが普通なので、 銘板値は電動機の能力を示すだけで、伝動が実際に伝えている量ではない。測定できない場合は機械 負荷から計算し、その値が仮定であることを明記する。
初張力係数はどこから取りますか。
使用している伝動形式のカタログから、そのチェーンまたはベルトに合わせて取る。その形式の張り方 を前提に製造者が公表している値であり、別の形式から流用したり、感覚で決めたりするものではない。
計算した荷重が小さければ、大きな軸受は不要ですか。
荷重が小さいことは、最小の軸受でよいことを意味しない。軸径、取付け方法、芯ずれの許容、潤滑の 条件、必要な寿命がいずれも選定に関わる。計算した荷重は入力条件であって、結論ではない。
同じ軸に二つのプーリがある場合はどう計算しますか。
プーリごとの力を別々に求め、軸上の実際の位置に応じて二つの軸受へ作用させる。記事のFrAとFrBの 式は、すでに二つの力F1とF2を足し合わせる形になっている。三つ目の力も、各軸受まわりのモーメント のつり合いという同じ原理に従う。
実際の設計に適用するときの注意
多くの場合、軸受の故障は、最初に型番を選び間違えたことからではなく、運転条件の評価不足から生じます。たとえば、初期のベルト張力が大きすぎる、組み立て時の芯ずれ、支持フレームの剛性不足、あるいは粉じん/油が実寿命を縮める、などです。
そのため、荷重を計算した後は、次も確認すべきです。
- 軸受に十分な動荷重・静荷重の能力があるか。
- 軸がたわみすぎて軸受を芯ずれさせていないか。
- 支持は十分に剛か。
- 防じん・防水・潤滑の適切な手段があるか。
- 保守のとき、作業者が芯出しを崩さずに交換できるか。
計算は最初のステップにすぎません。良い設計は、計算と組み立て条件と実際の運転条件を組み合わせます。
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