機械設計 #10:タイミングベルトの種類と機械設計での選び方
自動機の設計で、タイミングベルトは非常によく使う伝達機構です。
水平軸、スライドテーブルの引張機構、位置決めコンベア、ワーク供給ユニット、2 軸同期機構、軽〜中荷重のサーボ軸、包装機、検査装置、小型ガントリロボットなど、多くの箇所に現れます。
外から見ると、タイミングベルトはかなり単純です。
歯付きのベルト 1 本。 プーリ 2 個。 適切に張力をかける。 モーターを付ければ動く。
しかし実際に選ぶと、タイミングベルトはそれほど単純でないと分かります。
同じ歯付きベルトでも、歯形は非常に多くの種類があります。MXL、XL、L、H、T5、T10、AT5、AT10、S5M、S8M、HTD、STS、HP-STS、PowerGrip GT、Mega Torque、Poly Chain など。
それぞれ、異なる目的のために生まれました。
軽荷重と位置決めに合うもの。 大きなトルクの伝達に合うもの。 よりなめらかに走るもの。 バックラッシをよく減らすもの。 小型でも高荷重に使えるもの。 プーリが小さすぎたり張力管理が悪かったりすると使うべきでないもの。
選択を誤ると、機械は最初は走るかもしれません。しかししばらくすると問題が現れ始めます。ベルトが早く摩耗する、ベルトの歯が傷む、歯飛びする、騒音が大きい、止め位置が不安定、プーリが異常摩耗する、あるいは張力を強くかけすぎて軸受への荷重が増える、などです。
本稿では、機械設計でタイミングベルトを選ぶときの重要な点を書き留めます。
タイミングベルトとは
タイミングベルト(歯付きベルト)は、ベルトの歯とプーリの溝のかみ合いで力を伝える伝達ベルトです。
平ベルトや V ベルトと違い、タイミングベルトは主に摩擦で力を伝えません。歯の形がプーリとかみ合うことで運動を伝えます。
そのためタイミングベルトには、正しく設計すればほとんど滑らないという大きな利点があります。
これが、同期運動や比較的正確な位置決めが必要な機構で多く使われる理由です。
たとえば、
- 自動機の X/Y 軸
- スライドテーブルの引張機構
- 位置決めコンベア
- 2 軸同期機構
- ワーク供給機構
- 包装機
- プリンタ、スキャナ
- 軽量ガントリロボット
- サーボ駆動の伝達機構
ただし、タイミングベルトを使えば正確になる、と理解すべきではありません。
機構の精度は、多くの要因に依存します。歯形、ベルトとプーリのバックラッシ、ベルトの伸び、ベルト長さ、ベルト幅、張力、機構剛性、荷重、加速度、プーリの同軸度、そしてモーターの取り付け方まで。
タイミングベルトは良い解ですが、「自動的に正確」な解ではありません。
なぜタイミングベルトには多くの歯形があるのか
カタログを見ると、設計者は多くのタイミングベルトの歯形に出会います。
分かりやすく分けると、三つの大きな群に分類できます。
台形歯は古典的な形で、早くから使われてきました。当初の目標は、滑らない伝達、単純な構造、良いコスト、軽〜中荷重への適合でした。
その後、機械がより大きな荷重・高い速度を必要とすると、歯元の応力集中を減らしトルク容量を高めるために円弧歯が開発されました。
FA・ロボット・サーボ機構が大きく発展すると、要求はさらに高くなりました。大きなトルクを伝え、バックラッシを減らし、なめらかに走り、小型であること、を同時に。ここから改良円弧歯や各メーカーの高性能シリーズが生まれました。
簡単に言えば、タイミングベルトに多くの歯形があるのは、機械の要求がますます多様になったからです。
一つの歯形をあらゆる場合に使うことはできません。
タイミングベルト歯形群の簡易分類
| 歯形群 | よくある例 | 主な特徴 | 適した用途 |
|---|
| 台形歯・インチピッチ | MXL, XL, L, H, XH, XXH | 古典的、入手容易、広く使用、軽〜中荷重に適合 | 小型機器、軽い位置決め、旧型機、標準伝達 |
| 台形歯・メートルピッチ | T5, T10, T20 | メートルピッチ、mm で設計しやすい、単純構造 | 軽い機構、小型自動機、軽いスライドテーブル |
| 高荷重の台形歯 | AT5, AT10 | T シリーズより歯面が大きく、力の伝達が良い | より大きな引張力が要るが台形を使いたい機構 |
| 円弧歯 | S5M, S8M, HTD, STS | 力の分布が良く、耐荷重が高く、台形より静か | 自動機、中荷重サーボ軸、位置決めコンベア |
| 改良円弧歯 | GT, HP-STS, Mega Torque… | 歯形を最適化、バックラッシ低減、トルク容量向上 | 高要求機構、加減速の多いサーボ、小型機 |
| 超高荷重ベルト | Poly Chain GT… | 高級な材料と抗張体、一部用途でチェーンを代替可能 | 大荷重・大トルク、クリーンが必要、チェーンより保守少 |
この表は初期の方向付け用です。実際の設計では、使用メーカーのカタログを必ず確認します。
台形歯:単純で使いやすく、軽荷重ではバックラッシに有利
台形歯はタイミングベルトの古典的な歯形です。
よくあるのは、インチ系の MXL、XL、L、H、またはメートル系の T5、T10、T20 です。
台形歯の特徴は、歯形がほぼ台形であることです。プーリとかみ合うとき、ベルトの歯とプーリの溝は比較的はっきりと接触します。
台形歯の大きな利点は、単純な構造、入手容易、良いコスト、軽〜中荷重機構への適合です。
重要な点は、台形歯は軽荷重の用途で通常バックラッシが小さいことです。歯とプーリ溝の形状が、比較的小さいかみ合いすきまを許すからです。
ですから、軽い位置決め、それほど高くない速度、大きくないトルクの機構では、台形歯は依然として妥当な選択です。
たとえば、
- 位置調整機構
- 軽いスライドテーブル
- 小型測定機器
- プリンタ、スキャナ
- 軽い引張ユニット
- 単純な伝達機構
- 小型コンベア
ただし台形歯は、荷重が増えると明確な弱みがあります。
歯形の角が比較的はっきりしているため、大きなトルクを伝えると歯元に応力が集中しやすい。荷重が高い、加減速が激しい、または衝撃があると、ベルトの歯が早く摩耗し、変形し、あるいは傷むことがあります。
ですから台形歯は「今まで使ってきたから」だけで選ぶべきではありません。機構の荷重が大きく、速度が高く、生産で連続運転するなら、伝達能力と寿命を見直す必要があります。
円弧歯:より大きなトルク伝達に適する
円弧歯は、台形歯の弱みを改善するために開発されました。
角ばった形の代わりに、円弧歯はより丸みを帯びています。プーリとかみ合うとき、力が歯面により均等に分布します。
そのため円弧歯はトルク伝達がより良く、歯元の応力集中を減らし、高荷重機構により適します。
よくあるのは S5M、S8M、HTD、STS、またはメーカーごとの同等ラインです。
円弧歯の利点:
- 台形歯よりトルク伝達が良い
- 高荷重時の歯の損傷リスクを低減
- 多くの用途でよりなめらかに走る
- 自動機・サーボ伝達に適合
- 軽荷重台形歯より加減速で不利になりにくい
しかし円弧歯にも欠点があります。
歯が丸いため、プーリとなめらかにかみ合うには通常一定のすきまが必要です。このすきまが、場合によっては標準台形歯よりバックラッシを大きくすることがあります。
ですから機構が非常に正確な位置決めを要求するなら、「円弧歯」を漠然と選ぶべきではありません。具体的なシリーズ、メーカーのカタログ、許容バックラッシ、機構全体の剛性を確認する必要があります。
要するに、
円弧歯は力の伝達で台形歯より強いが、バックラッシでは常に優れるとは限りません。
改良円弧歯:トルクと精度の両方が要るとき
多くの現代的な機構では、要求は力の伝達だけではありません。
機械は速く走り、加減速を繰り返し、正しい位置で止まり、静かで、小型で、長期に安定でなければなりません。
これが、改良円弧歯や高性能タイミングベルトが生まれた理由です。
これらのラインは通常、多くの点で最適化されています。
- 歯形
- ベルト本体の材料
- 抗張体
- 歯面の布層
- バックラッシ低減能力
- トルク容量
- 高速時の耐久性
- 騒音低減能力
たとえばメーカーによって、PowerGrip GT、HP-STS、Mega Torque、Poly Chain GT などのシリーズに出会います。
これらのラインは通常、標準品より高価ですが、重要な機構ではその差額が非常に価値をもつことがあります。
たとえば、
- 加減速を連続するサーボ軸
- 小型でも大トルクが要る機構
- 安定して止まる必要のある高速軸
- 1 日に何時間も走る生産機
- 低騒音の要求がある機構
- 故障すると大きなダウンタイムを生む位置
こうした機構では、初期コスト節約のために標準ベルトを選ぶのは良い選択でないことがあります。
よく見かけるメーカーとシリーズ名
実際の設計では、設計者は S5M、S8M、T10 といった歯形名だけに出会うわけではありません。通常は各メーカーの商品名に出会います。
この点は重要です。メーカーごとに独自のシリーズ、独自の最適化された歯形、独自のプーリ/張力の推奨があるからです。
| メーカー | よくあるシリーズ | 群 | 設計上のメモ |
|---|
| ゲイツ・ユニッタ・アジア | PowerGrip GT | 高性能歯 | 高トルク伝達・良精度・バックラッシ低減を狙う |
| ゲイツ・ユニッタ・アジア | Poly Chain GT | 超高荷重ベルト | ポリウレタン本体、高い抗張体、一部用途でチェーン代替可 |
| 三ツ星ベルト | Super Torque G | 円弧歯 | 産業機で普及、性能と入手性のバランス |
| 三ツ星ベルト | Mega Torque G | 高性能歯 | より高いトルク伝達、より高要求の機構に適合 |
| バンドー化学 | STS | 円弧歯 | FA・産業伝達で多用 |
| バンドー化学 | HP-STS | 高性能歯 | STS より高荷重、小型で大トルクの機構に適合 |
| ミスミ | T, AT, S シリーズ | 一般的な標準 | 入手容易、通常設計に便利、具体カタログを要確認 |
生産機や重要機構を設計するとき、漠然と「タイミングベルト S8M」と書くべきではありません。種類、幅、歯数、メーカー、または許可される同等規格を明記しましょう。
そうしないと、購入や保守のときに「取り付くが性能が違う」種類に替えられやすいものです。
あるメーカーのベルトを別メーカーのプーリで使えるか
組み立ての面では、取り付く場合が多くあります。
たとえば同じ S8M なら、メーカー A のベルトがメーカー B の S8M プーリとかみ合えます。基本のピッチと歯形が同じ規格に従っていることがあるからです。
しかし「取り付く」は「性能が同じ」を意味しません。
メーカー間では次が違いえます。
- 詳細な歯形
- 歯の深さ
- 歯面の布層
- ベルト本体の材料
- 抗張体
- ベルトの剛性
- 推奨張力
- トルク容量
- 走行時の騒音
- 連続走行時の寿命
高要求でない軽い機構なら、入念に確認すればメーカー間の代替が許容できることもあります。
しかし高荷重・高速・サーボ・正確な位置決め・長期生産の機構では、ベルトとプーリを同じメーカー・同じシリーズで使うのが最善です。
かなり実際的なミスが、初期設計ではメーカー A のカタログを使ったのに、購入時に安いか納期が速いという理由でメーカー B のベルトを取ることです。機械は取り付きますが、走ると騒音・歯摩耗・振動・位置ずれが発生します。
そのとき原因究明に非常に時間がかかります。
設計要求に基づいてタイミングベルトを選ぶ
タイミングベルトを選ぶとき、ベルトの種類からではなく、機構の要求から始めましょう。
まず主な優先事項を決めます。
- 伝達トルク
- 位置精度
- 速度
- 加速度
- 騒音
- コスト
- 設置空間
- 寿命
- 交換入手性
- 使用環境
下の表を初期の選定指針として使えます。
| 優先要求 | 検討すべき | 理由 |
|---|
| 良いコスト・入手容易 | 台形歯、標準ベルト | 普及、入手容易、軽荷重に十分 |
| 比較的正確な位置決め、軽荷重 | 台形歯または高性能歯 | 台形歯は軽荷重でバックラッシが小さい |
| 大きなトルク伝達 | 円弧歯、高性能歯 | 力の分布が良く、歯損傷リスクを低減 |
| 高速 | 円弧歯、高性能歯 | かみ合いがなめらか、振動と騒音を低減 |
| 加減速の多いサーボ | 高性能歯 | 剛性・良い力伝達・より小さいバックラッシが必要 |
| 小型だが高荷重の機構 | 高性能歯 | 小さいサイズでより大きな荷重を伝達可 |
| 長期生産機 | 同メーカー・同シリーズのベルトとプーリ | 非互換による摩耗・騒音・差異のリスク低減 |
| 油・水・熱のある環境 | 適した材料のベルト | 荷重だけで選ばず、環境を考慮 |
| 保守容易・交換迅速 | 普及品、仕様明確 | ベルト交換時のダウンタイムリスク低減 |
この表はカタログ計算を置き換えません。
詳細計算に入る前に、設計者が正しい問いを立てるのを助けるだけです。
サーボ軸では、タイミングベルトはより入念に選ぶ
サーボにタイミングベルトを使うのは非常に一般的ですが、単純に選びすぎると問題が起きやすい。
サーボは速く加減速でき、位置を連続フィードバックします。ベルト機構が十分に硬くないと、系は振動し、発振し、あるいは不安定に止まりえます。
多くの場合、表面上はサーボのチューニング不良に見えますが、問題の根は機械にあります。
たとえば、
- ベルトが長すぎる
- ベルト幅が小さすぎる
- 張力が弱い
- プーリが小さすぎる
- モーター台が弱い
- プーリ軸がたわむ
- 軸受が過大な張力荷重を負う
- 偏心荷重
- ガイド機構が十分に硬くない
- ベルトとプーリのバックラッシが大きい
- プーリが一直線でない
サーボ軸では、平均トルクだけでベルトを算定すべきではありません。
加速時トルク、減速時トルク、負荷慣性、運転頻度、ベルト長さ、全体剛性も見る必要があります。
良いサーボでも、弱い機械を完全には補えません。
ベルト機構が柔らかければ、チューニングは末端の処理にすぎません。
最小プーリを無視しない
機械を小型に設計したいとき、設計者は小さいプーリを選びがちです。
小さいプーリはサイズを減らし、配置距離を減らし、ときにコストを減らします。しかしタイミングベルトでは、小さすぎるプーリは 1 回転ごとにベルトをより強く曲げます。
これが曲げ疲労を増やし、ベルト寿命を減らし、早期のベルト損傷を招きえます。
各ベルト種類には最小プーリの推奨があり、通常は最小歯数または最小プーリ径で示されます。
参考例:
| ベルト種類 | ピッチ | 参考最小プーリ歯数 | 参考プーリ径 |
|---|
| L | 9.525 mm | 14 | 約 42.45 mm |
| H | 12.7 mm | 14 | 約 56.60 mm |
| S5M | 5 mm | 14 | 約 22.28 mm |
| S8M | 8 mm | 24 | 約 61.12 mm |
| T5 | 5 mm | 12 | 約 19.10 mm |
| T10 | 10 mm | 14 | 約 44.56 mm |
| AT5 | 5 mm | 20 | 約 31.83 mm |
| AT10 | 10 mm | 14 | 約 44.56 mm |
これらの値は初期参考用にとどめてください。
実際の設計では、使用するベルトメーカーの最新カタログを確認します。あるメーカーの最小歯数を別メーカーへ機械的に写してはいけません。
特に高性能ベルト、異なる材料、異なる荷重条件では、最小プーリの推奨が異なりえます。
張力は非常に軽視されやすい点
タイミングベルトには適切な張力が必要です。
張力が弱すぎると、ベルトは振動しやすく、歯飛びしやすく、位置が不安定になります。
張力が強すぎると、軸と軸受へのラジアル荷重が増えます。モーターの負荷も増え、プーリとベルトが早く摩耗します。
新しく組んだ機械は、張力が最適でなくても走るかもしれません。しかし数か月の生産運転の後、不具合が現れ始めます。
たとえば、
- ベルトの偏摩耗
- プーリの発熱
- 軸受の異音
- 軸の振動
- 止め位置の不安定
- ベルトの鳴き
- ベルト歯の異常摩耗
- ベルトが片側へ寄る
ですから設計には、明確な張力調整機構をもつべきです。
「ベルトを入れて手で引っ張って張ればよい」という設計にすべきではありません。
次をもちましょう。
- モーター調整用の長穴
- 必要ならテンショナプーリ
- ねじによる調整機構
- 保守時の作業空間
- 組立時の張力ガイド
- 張力の検査基準
生産機は、新しく組んだときに走れるだけでは足りません。
後で調整・交換・検査しやすくもなければなりません。
プーリのアライメントに注意
タイミングベルトはプーリのずれに非常に敏感です。
二つのプーリが同一平面でない、軸が平行でない、あるいはプーリが傾いていると、ベルトは片側へ寄って走ります。
すると次が現れえます。
- ベルト縁の摩耗
- ベルトがフランジに擦れる
- ゴム粉
- 騒音
- ベルトの発熱
- 寿命低下
- 高速時の振動
ベルトが片寄ったら、張力だけを調整してはいけません。
まずアライメントを確認します。
注意点:
- 二つのプーリは同一平面であること
- 二つのプーリ軸は平行であること
- プーリが振れないこと
- フランジを正しい位置で使うこと
- プーリ支持が十分に硬いこと
- テンショナからの偏った押し付け力がないこと
- 試運転時に観察できる空間があること
多くの場合、ベルトの不具合はベルト自体ではなく、プーリ取り付け機構から来ます。
使用環境はベルト寿命に大きく影響する
タイミングベルトは通常、ゴムまたはポリウレタン製で、内部に種類に応じてガラス繊維・鋼・アラミド・カーボンの抗張体があります。
そのため、使用環境が非常に大きく影響します。
確認すべき点:
- 環境温度
- 切削油、機械油
- 水または湿気
- 粉じん
- 薬品
- 紫外線
- クリーンルーム要求
- 食品・医療要求
- 屋外条件
たとえば油のある環境で使うなら、荷重だけでベルトを選べません。ベルトに適切な耐油性があるかを見る必要があります。
水や湿気があれば、ベルトだけでなくプーリ・軸・軸受・表面処理も見直す必要があります。
温度が高ければ、標準ベルトはもう適さないかもしれません。
かなりよくあるミスが、荷重は入念に計算したのに環境を忘れることです。乾いた条件では走るのに、油・水・熱のある区域に入れると、ベルト寿命が急に落ちます。
ベルト幅をぎりぎりに選ばない
カタログは、計算後に最小ベルト幅を出すことがあります。
しかし実際の設計では、荷重変動・衝撃・激しい加減速・連続運転のある機構では、ぎりぎりに選ぶべきではありません。
実条件は通常、計算ほどきれいではありません。
- 実荷重が想定より高いことがある
- 組立時の張力が正しくないことがある
- プーリがわずかにずれることがある
- ベルトが油・粉じん・熱の影響を受けることがある
- 荷重が偏心することがある
- 機構が時間とともに振動することがある
- 作業者が別種のベルトに替えることがある
ベルトを限界ぎりぎりに選ぶと、機構は小さなずれに非常に敏感になります。
生産機では、重要な位置で妥当な余裕をとる方が、実運転後に機械を直すよりずっと安上がりです。
タイミングベルトは常にボールねじを代替できるわけではない
多くの機構が、ボールねじよりコストを下げるか速度を上げるためにタイミングベルトを使います。
これは多くの場合に妥当です。長ストローク、軽荷重、高速、それほど厳しくない精度要求。
しかしタイミングベルトには弾性があります。
ベルトが長いほど、伸びが顕著になります。加減速時、荷重がベルトを少し変形させることがあります。多くの機構では、このずれは許容できます。
しかし高い剛性、大きな推力、高精度な位置決め、正確な測定、圧入、加工、あるいは重荷重の垂直軸を要求する機構では、入念に検討する必要があります。
ボールねじは、多くの場合、剛性とより正確な直線力の伝達で優位があります。
安く・速く・配置しやすいというだけでタイミングベルトを選ぶべきではありません。
その機構の機能に十分な剛性があるかを見なければなりません。
実務での簡易選定の目安
軽荷重・良コスト・相対位置決めの機構なら:
荷重とサイズに応じて、T5、T10、XL、L などの台形歯を検討できます。
より高いトルク伝達が必要で、通常の自動機で使うなら:
S5M、S8M、STS などの円弧歯または同等ラインを検討できます。
サーボを使い、加減速が多く、なめらかで安定した走行が要るなら:
GT、HP-STS、Mega Torque などの高性能歯ラインを見るべきです。
非常に大きな荷重、または一部用途でチェーンを代替したいなら:
Poly Chain GT などの重荷重ラインを見られますが、メーカーカタログで入念に計算する必要があります。
保守で交換するなら:
正しいピッチ、歯数、幅、長さ、歯形、材料、プーリメーカー、荷重条件を確認します。ベルト長さだけを見てはいけません。
重要な軸なら:
同メーカー・同シリーズのベルトとプーリを選び、公式カタログで計算し、図面や BOM に仕様を明記します。
タイミングベルトを選ぶとき覚えておくべき一言
タイミングベルトは、正しい長さを選ぶだけではありません。
次を正しく選ぶ必要があります。
- 歯形
- ピッチ
- 幅
- 歯数
- プーリ
- 張力
- 材料
- 環境
- 精度
- 荷重と加速度
- 保守性
これらを飛ばすと、後の不具合は通常、図面上ではなく生産現場で現れます。
まとめ
タイミングベルトは、機械設計で非常に有用な伝達機構です。
クリーンで、コンパクトで、速く走り、チェーンのような潤滑が要らず、よく同期伝達できます。
しかしタイミングベルトは、感覚で選ぶ部品ではありません。
台形歯は、コスト・普及性・軽荷重の位置決めに有利です。
円弧歯は、大きなトルク伝達、なめらかな走行、自動機により適します。
改良円弧歯や高性能ラインは、大トルク・精度・小型を同時に要するときに適します。
選ぶとき、設計者はすべての要因を見る必要があります。荷重、速度、加速度、バックラッシ、最小プーリ、張力、環境、アライメント、寿命、保守性。
機械設計では、正しい場所で使えば、タイミングベルトは非常に良い選択です。
しかし習慣で選び、ベルト長さだけを見て、歯形・プーリ・張力・使用環境を無視すると、実運転後に非常に厄介な不具合の源にもなりえます。
MINATA からの補足
MINATA はこれらのノートを、実務的な機械設計の視点からの参考資料として共有しています。タイミングベルトの選定、図面の確認、方式の比較、あるいは設計中の日本語・ベトナム語の技術的解釈について相談したい点があれば、お気軽にご連絡ください。一緒に確認いたします。
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