機械設計 #105:図面のキー溝 — トルクを伝えながら組立性を守る
図面のキー溝は境界が変わっても機能、意図、製造、検査、発行、保全を守らなければならない。
発行前に証拠
図面を変更したりパッケージを発行したりする前に、入力、期待結果、合否限界、故障症状、測定方法を書く。全ての前提、値、変更に担当を付ける。
基本チェック
- トルクを伝える機能と、キーの規格: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- データム、向き、幅、深さ: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 軸に生じる応力と、溝底の丸み: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- ボスのはめあい、すきま、組立の作業空間: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 検査と、供給元の工程能力: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 改訂と、保守での交換: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
| 故障モード | 症状 | 確認 |
|---|
| 意図が欠落 | ファイルは正しいが機能が違う | 要求と証拠を確認 |
| パッケージが不完全 | サプライヤー・検査が停止 | 発行完全性を確認 |
| 文書が不一致 | 数値は正しいが改訂違い | 全資料を基準化 |
キー溝の記入:四つの寸法と、それを置く図
キー溝の寸法は数が少ないのですが、それぞれ書き方が複数あります。あいまいに書くと、現場は設計者と違う解釈 をし、しかも組み立てるまで誰も気付きません。
| 寸法 | どの図に書くか | 注意 |
|---|
| キー溝の幅 | キー溝を通る横断面 | 軸側とボス側の公差は別の値 |
| 深さ | 横断面 | どこから測るかを明記する。下の項を参照 |
| キー溝の長さ | 軸方向の投影図 | 溝の端が円弧のとき、どこまで測るのか |
| 溝底の丸み | 横断面または共通注記 | 応力集中を防ぐため |
深さ:二つの書き方。どちらかを選び、明示します
最もあいまいになりやすい箇所です。キー溝の深さには二つのまったく違う書き方があり、同じ部品で二つの違う数 値になります。
| 書き方 | 何を測るか | 利点 |
|---|
| キー溝の深さ | 円筒面から溝底まで | 直感的で分かりやすい |
| 軸の残り寸法 | 溝底から反対側の円筒面まで | マイクロメータで直接測れる。引き算が要らない |
生産では二つ目が好まれます。溝底と反対側の面にマイクロメータを当てれば数値が出るからです。一つ目は思い描 きやすい代わりに、間接的に測って引き算する必要があり、引き算のたびに誤りの機会が生まれます。
ボス側も同じです。キー溝の深さを書くか、溝底から反対側の穴壁までの寸法を書きます。どちらでもかまいませ んが、図面一式の中で一貫させ、測る人が推測しなくて済むよう明示してください。
キー溝の長さはどこまで測るか
エンドミルで加工したキー溝は、両端が工具半径の円弧になります。このとき「キー溝の長さ」は、二つの円弧の 中心間とも、両端の最も外側の縁の間とも解釈できます。差はちょうど工具の直径一つ分です。
読み違いを防ぐ方法は、円弧の中心までの寸法を書き、端部の半径を併記するか、全長であることを明記することで す。通し溝やブローチ加工の溝ではこの問題は起きません。
キー溝の角度位置
部品にキー溝が一つだけで、角度の関係を必要とするほかの部位もないなら、角度位置を書く必要はありません。た だし次の場合は書きます。
- キー溝が二つ以上ある場合。相互の角度関係が組付けの向きを決めます。
- キー溝をほかの部位(油穴、平面、組付けの印)と一直線にそろえる必要がある場合。
- 相手部品が一方向にしか組めない場合。
必要なときは、理論的に正確な角度寸法と、データム系に対する位置の要求で書きます。「等配」や「図による」と 書いてはいけません。
はめあいの選び方、キーと締めしろの使い分け、キー結合の三つの壊れ方は 機械設計 #56 — キーとキー溝 にあります。
キー溝の公差と溝底のR:最も応力の集まる場所
キー溝の四寸法を記すだけでは足りません。幅のはめあいと溝底のすみRが、キーががたつくか、軸が割れるか を決めます。
キー溝幅のはめあい
キー溝の幅は、キーが締まるかゆるむかを決め、荷重で選びます。
| はめあい | キー溝公差(規格による) | 向く場合 |
|---|
| すきまばめ(案内用) | 軸溝H9、ハブ溝D10 | キーが軸方向に滑る、または着脱が頻繁 |
| 普通 | 軸溝N9、ハブ溝JS9 | 一方向のトルク、反転が少ない |
| しまりばめ | 軸溝P9、ハブ溝P9 | 重荷重、反転、キーのがたを防ぐ |
ゆるいキーは反転荷重で叩き、溝を次第に広げます。きついキーは組付けと交換が難しくなります。実際の 荷重の状態で選び、どの軸にも同じはめあいを既定にしません。
溝底のR:疲労の起点
キー溝の底は内側の角で、軸が反転トルクを受けるとき強い応力集中源になります。鋭い角は疲労き裂の 始まりやすい場所です。減らすには、溝底にキー寸法に応じた規格値のRを付け(図面に明記し、鋭い角の ままにしない)、疲労を受ける軸には、エンドミル溝(角底)より円盤カッタ溝(丸底)を優先します。
深さの基準と軸強度への影響
- 深さの基準:ハブのキー溝深さは、溝深さだけでなく、反対側の穴面から測った寸法(はめ合わせられる
寸法)で記します。キーをはめるには正しい頂すきまが要り、それは基準に依存するからです。
- 強度への影響:キー溝は断面を削り、応力集中を加え、軸のねじり容量を下げます。重荷重の軸は、キー
溝を見込んで軸径を検討し直すか、単一のキー溝で足りないときはスプラインや別の継手を使います。
MINATA発行チェック
- [ ] 機能、意図、境界、故障症状を記載した。
- [ ] 責任、接点、工程、誤操作防止が明確である。
- [ ] 六項目に証拠と合否限界がある。
- [ ] 製造、組立、検査、発行、保全を実機で試した。
- [ ] 改訂、サプライヤー、パッケージ、構成記録が一致する。
良い設計は、検証できる問いで終わる。図面のキー溝では、機能と意図が信頼できる証拠を残すことがMINATAの基準である。
よくある質問
キー溝の深さはどちらの書き方にしますか
直接測れるほう、つまり溝底から反対側の円筒面までの寸法が、生産では便利なことが多いです。マイクロメータで そのまま数値が出るためです。キー溝の深さを書いてもかまいませんが、二つは違う数値になるため、図面一式で一 貫させ、明示してください。
エンドミルで加工したキー溝の長さはどこまで測りますか
明記が必要です。両端の円弧の中心までか、円弧を含む全長かです。二つは工具の直径ちょうど一つ分違います。安 全なのは、円弧の中心までの寸法に端部の半径を併記する書き方です。
キー溝の幅の公差は軸側とボス側で同じですか
同じではありません。二つの部品は結合の中で役割が違うため公差域も異なり、適用するキーの規格から取ります。 両方に同じ値を書くことは、側面のすきまを決める部分を捨てることです。
キー溝の角度位置はいつ書きますか
キー溝が二つ以上あるとき、ほかの部位と一直線にそろえる必要があるとき、相手部品が一方向にしか組めないとき です。それ以外では不要であり、余分な記入は検査する寸法を一つ増やすだけです。
溝底の丸みは書く必要がありますか
書くべきです。底の鋭い角は、軸の断面がすでに減っている位置での応力集中部です。正逆の荷重があれば、そこが 疲労き裂の起点になります。空欄にすることは、その判断を現場の工具任せにすることです。
よくある質問(続き)
キー溝はすきまばめとしまりばめ、どちらにしますか。
荷重によります。反転して重荷重の軸は、キーが叩いて溝を広げないようしまりばめ(P9溝)に、軸方向に 滑る案内キーはすきまばめ(H9/D10)にします。どの軸にも同じはめあいを既定にしません。
なぜキー溝の底は割れやすいのですか。
内側の角で、反転トルクのもとで強い応力集中源になるからです。溝底にキー寸法に応じた規格値のRを付け、 疲労を受ける軸には円盤カッタ溝(丸底)を優先します。
ハブのキー溝深さはどこから測りますか。
反対側の穴面から(はめ合わせられる寸法)測ります。溝深さだけでは足りません。キーをはめるには正しい 頂すきまが要り、それは基準に依存します。基準を誤ると、キーの頂すきまも狂います。
まとめ
図面のキー溝は、書類を整えるための手続きではない。設計意図を、繰り返し製作でき、組み立てられ、測定できる結果へ変えるための手段である。良い図面は、設計者がそばで説明しなくても伝わる。情報の構成そのものがその役割を果たさなければならない。
現場のための早見表
キー溝は、状況・与え方・目的を対応づけると決めやすくなります。
| 状況 | 与え方・制御の仕方 | 目的 |
|---|
| 溝の幅 | キーの規格とはめあいに従う | 側面で正しくトルクを伝える |
| 深さ | 軸とハブに配分する | ハブを持ち上げない |
| 溝の端 | フライスかブローチに合わせる | 加工できない角を作らない |
実際の場面
キー溝は、キーの上面でトルクを伝えるのではありません。深さの誤差を足し合わせると、二つの側面が働く前にキーが底へ当たり、緩みやつぶれを生みます。図面は、自分で寸法を置く前に規格で呼ぶべきです。
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