機械設計 #77:機能で図面の投影を選ぶ — 現場に形状を推測させない
図面の投影は一度動けばよいのではなく、境界が変わっても作り、測り、使い、復旧し、監査できることが重要である。
機能から始める
部品や注記を決める前に、入力状態、運転条件、期待結果、許容限界、故障症状、測定方法を書く。不明な点を大きな安全率に隠さず、担当者と試験を決める。
基本チェック
- 主な機能と、それを説明できる投影図:正面図は、モデルを開いたときの向きではなく、部品が働く向きから選ぶ。機能がどの面にあるかを明示する。
- データム、姿勢、かくれた形状:部品は加工されるときの姿勢で描く。内部形状はかくれ線を重ねるより、断面図で示すほうが読みやすい。
- 製造に必要な断面図または詳細図:断面図や詳細図は、外形からは肉厚、内径、座面が読み取れない場所にだけ追加する。
- 寸法の配置と、読み方が一通りに定まること:寸法は、その形状が作られる投影図に一度だけ記入し、現場が実際に触れるデータムから測る。
- 検査のための作業空間と、測定値の解釈:すべての寸法が、実際に使う測定器で届くかを確認する。測定条件が結果を変える場合は明記する。
- 仕様違い、尺度、改訂の整合:一枚の図面に一つの仕様だけを載せる。異なる尺度で描いた図にはその尺度を併記し、改訂をモデルと一致させる。
故障モード
| 故障モード | 症状 | 確認 |
|---|
| 境界を楽観視 | デモは通るが実運転で失敗 | 最小・最大・異常条件で試験 |
| インターフェースが曖昧 | 誤状態、誤取付け、誤表示 | 基準、責任、アクセスを確認 |
| 工程を省略 | ずれ、記録欠落、復旧困難 | 実際のルートを歩いて測定 |
| 保全を未設計 | 交換が長い、安全に再開できない | 初心者の保全トライアル |
投影図を選ぶ前に:この図面はどの投影法か
最初に答えるべき問いであり、複数の市場を相手にするとき最も読み違いが起きる箇所です。世界では二つの 正投影法が並行して使われており、同じ部品でも投影図の位置が逆になります。
| 第三角法 | 第一角法 |
|---|
| よく使う地域 | 日本(JIS)、北米 | 欧州、ISOに従う多くの国 |
| 平面図の位置 | 正面図の下 | 正面図の上 |
| 左から見た図の位置 | 左側 | 右側 |
| 覚え方 | 見る方向と同じ側に図を置く | 見る方向と反対側に図を置く |
採用している投影法は、規格で定められた円すい台の記号で表題欄に明示します。この記号のない図面は、 逆に読まれる余地を残した図面です。対称に近い部品では、組み立てるまで誰も気付きません。
日本の取引先では第三角法が既定です。欧州の供給元から図面を受け取ったときは、読む前に記号を確認して ください。思い込みで進めないことです。
正面図の選び方
正面図は最も多くの情報を伝える方向にします。優先順位は次のとおりです。
- 部品の特徴的な輪郭がよく分かる方向。
- 加工するときに部品が置かれる姿勢。作業者はその姿勢で図面を読みます。
- 上の二つと矛盾しなければ、機械に組み付けたときの姿勢。
長い軸は旋盤上の姿勢である水平に置くのが普通です。板物は大きな面を正面にします。「用紙の中で見栄え がよいから」で方向を選ぶのは、優先順位の付け方を誤っています。
投影図は何枚あれば十分か
十分とは、部品の読み方が一通りに定まる、ちょうどその枚数であり、それ以上ではありません。
| 部品の種類 | 通常必要な枚数 |
|---|
| 回転体(軸、ブシュ) | 一図と直径の記号。内部に穴があれば断面を追加 |
| 板物 | 一図と板厚の記入 |
| 複数の面に段のある箱形 | 二図から三図 |
| 傾いた面 | その面に直角な補助投影図を追加 |
| 特徴の多い小さな範囲 | 尺度を明記した部分拡大図 |
図を増やすことは安全策ではありません。余分な図はそれぞれ、寸法が重複して書かれる場所を増やします。 重複した寸法は、改訂のときに食い違いを起こします。
その寸法はどの投影図に属するのか
必要な投影図をそろえるのは仕事の半分です。残りの半分は、その特徴が最もよく分かる図へ それぞれの寸法を置くことです。置く図を誤ると、読む人は図の間を行き来して情報を組み立てる ことになり、行き来のたびに読み違いの機会が生まれます。
| 特徴 | 記入する図 | 理由 |
|---|
| 穴や軸の直径 | 円に見える図 | 直径の記号は、円い面が見えて初めて意味を持つ |
| 穴や溝の深さ | 断面図、または軸方向の図 | 深さは円に見える図では分からない |
| 穴の並びの位置 | 並び全体が一度に見える図 | 図をまたいで個別に書くと、穴どうしの関係が失われる |
| 板の厚さ | 一か所だけ、厚さの記号を添えて | すべての投影図に繰り返さない |
| 角度、テーパ | 角度が実形で見える図 | 別の図へ投影した角度は縮み、測れない |
| 隅の丸み、面取り | その輪郭が見える図 | 別方向から見た図に書くことは、誰も確認しない場所に書くこと |
短くまとめると、実形で見える図にその寸法を書くということです。どの図でもはっきり見え ない特徴があるなら、それは断面図か部分拡大図が足りない合図であり、近くの図へとりあえず書 いてよい合図ではありません。
形ではなく機能でまとめる
一つの取付部を成す二つの位置決め穴は、部品の反対側にあっても寸法を隣り合わせに置きます。 逆に、重要でない締結用の穴はひとまとめにし、規則で書きます。
この並べ方によって、読む人は意図を読み取れます。どの寸法どうしが厳しく結び付いていて、 どれは通ればよいのか、ということです。左から右、上から下という幾何的な順序で並べた図面は、 見た目は整っていますが機能については何も語りません。
かくれ線:残すときと消すとき
かくれ線は道具であって義務ではありません。断面図を一枚節約できて、しかも読みやすいな ら使い、図を混乱させるなら消します。
| 状況 | どうするか |
|---|
| 薄い部品にある単純な通し穴 | かくれ線を残す。断面図は要らない |
| 内部に段や交差する穴が多い | 断面にし、その図からかくれ線は消す |
| 対称な部品で内部構造が繰り返す | 半断面にし、半分は外形、半分は断面 |
| かくれ線が見える線と重なる | 断面か部分拡大図にする。線の重なりは必ず読み違いを生む |
かくれ線に寸法を付けないでください。 寸法は見える線に付けます。かくれ線としてしか現れ ない特徴に寸法が必要なら、それこそが断面にすべき場面です。
MINATA発行チェック
- [ ] 機能、境界、サイクル、故障症状を記載した。
- [ ] インターフェース、責任、誤操作防止が明確である。
- [ ] 六項目に証拠と合否限界がある。
- [ ] 製造、組立、運転、保全を実機で試した。
- [ ] 異常、復旧、安全停止を試験した。
- [ ] 改訂、サプライヤー、検査、履歴が一致する。
良い設計は、製造、運転、保全、変更を通過する前提の連鎖である。図面の投影では、結果が継続する証拠を残すことがMINATAの基準である。
よくある質問
第一角法と第三角法は何が違いますか
投影図を置く位置です。第三角法(日本の図面、JIS)では、平面図は正面図の下、左から見た図は左側 に置きます。第一角法は逆になります。同じ部品でも投影法を読み違えれば、段、くぼみ、組付けの向きを逆 に理解することになります。
図面がどちらの投影法かはどう分かりますか
表題欄の円すい台の記号を見ます。記号がなければ推測せず問い合わせます。特に対称に近い部品では、逆に 読んでも組み立てるまで表面化しません。
正面図はどの方向にしますか
最も多くの情報を伝える方向で、加工時の姿勢を優先します。軸は水平、板物は大きな面を正面にします。現 場で図面を読む人はその姿勢で部品を見ているため、姿勢の一致した図面は読み違いが減ります。
念のため投影図を増やしてもよいですか
よくありません。余分な図は寸法が重複する場所を増やし、重複した図面は改訂のときに食い違いやすくなり ます。原則は、読み方が一通りに定まるだけの枚数で止めることです。
傾いた面はどう表しますか
その面に直角な方向から見た補助投影図で表します。傾いた面を通常の投影図へ投影すると縮んだ形になり、 測れず、実寸法も記入できません。
よくある質問(続き)
穴の直径はどの図に書きますか
穴が円に見える図です。直径の記号は円い面が見えて初めて意味を持ちます。軸方向の図に書くと、 直径のことなのか溝の幅のことなのかを読む人が推測することになります。
かくれ線に寸法を付けてよいですか
避けてください。寸法は見える線に付けます。かくれ線としてしか現れない特徴に寸法が必要なら、 その図面は断面図が足りていません。
寸法はどんな順序で並べますか
幾何的な順序ではなく、機能のまとまりで並べます。同じ取付部に属する寸法を隣り合わせに置け ば、どれとどれが厳しく結び付いているかが読み取れます。左右上下にきれいに並べる方法は、整 って見えても機能を伝えません。
傾いた面のある部品では角度をどこに書きますか
角度が実形で見える図、多くはその面に直角な補助投影図に書きます。通常の投影図へ投影した角 度は縮んでしまい、測れず、実際の寸法も記入できません。
かくれ線を全部消すのが安全ですか
そうとは限りません。全部消すと単純な部品にも断面図が必要になり、図面が無駄に長くなります。 原則は、断面図の代わりになり読みやすいなら残し、見える線と重なるときや内部構造がすでに複雑 なときは消す、というものです。
まとめ
機能で図面の投影を選ぶは、書類を整えるための手続きではない。設計意図を、繰り返し製作でき、組み立てられ、測定できる結果へ変えるための手段である。良い図面は、設計者がそばで説明しなくても伝わる。情報の構成そのものがその役割を果たさなければならない。
現場のための早見表
判断は、状況・表し方・目的を具体的に対応づけると下しやすくなります。
| 状況 | 表し方・制御の仕方 | 目的 |
|---|
| 取付面 | 直角に見る正投影で、輪郭を丸ごと見せる | 寸法と取付の基準を与える |
| 閉じたポケットや溝 | 機能部を通る断面で見せる | 深さ、丸み、面粗さを示す |
| 長い部品 | 記号を付けた省略図で見せる | 全長と特徴位置を示す |
この表は、プロジェクトに適用される規格を置き換えるものではありません。「投影の選び方」を、製造・組立・検査のときに答えられる問いへ変えるためのものです。
実際の場面
二つの位置決め穴と一本の案内溝を持つブラケットは、正面図が取付面へ直角に向いていれば三面で足ります。向きを誤ると溝がかくれ線になり、深さや刃物の向きを現場に推測させることになります。よくある失敗は、投影が多すぎて読みを乱すか、少なすぎて人によって解釈が分かれるかのどちらかです。
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