機械設計 #82:図面の尺度と配置 — 速く読めることも技術要求
図面の尺度と配置は境界が変わっても読め、作れ、検査でき、保全でき、安全でなければならない。
機能から始める
投影、記号、形状、注記を決める前に、入力状態、期待結果、許容限界、故障症状、測定方法を書く。不明点を大きな係数に隠さず、担当と試験を決める。
基本チェック
- 各投影図と詳細図が答える問い: 投影図ごとに答える問いを持たせる。他の図がすでに示していることを繰り返す図は、読む速さを落とす。
- 尺度、用紙サイズ、印刷したときの読みやすさ: 尺度と用紙サイズは、画面ではなく現場が手に持つ印刷物で読めるかどうかで決める。
- 投影図の主従関係と読む順序: 主となる投影図が先に目に入り、残りが理解の順に続くように配置する。
- 寸法、注記、データムの配置: 寸法、注記、データムは、対象となる形状の近くに置き、外形線をまたがせない。
- 改訂、表題欄、構成の明確さ: 改訂、表題欄、構成が一目で読めるようにする。違う部品が作られるのはたいていここから始まる。
- 製造、検査、保全の視点からの確認: 発行前に、製造の視点、検査の視点、保全の視点で一度ずつ図面を読む。
故障モード
| 故障モード | 症状 | 確認 |
|---|
| 意味が曖昧 | 加工・検査が違う | 規格と証拠を確認 |
| 接点を省略 | 組立・保全で誤り | 実工程を確認 |
| 文書が不一致 | 名称は正しいが改訂違い | 全資料を基準化 |
尺度:推奨系列から選び、どこに適用するかを書きます
尺度は任意の数値ではありません。規格には推奨する系列が定められており、その外の値を使うと読む人 が暗算をすることになります。暗算が必要な箇所では、必ず誰かが計算を誤ります。
| 区分 | 推奨系列 | 使う場面 |
|---|
| 現尺 | 1:1 | 既定。換算せずそのまま読める |
| 倍尺 | 2:1、5:1、10:1(および10の倍数) | 特徴の多い小さな部品、部分拡大図が必要な範囲 |
| 縮尺 | 1:2、1:5、1:10、1:20、1:50、1:100(および10の倍数) | 大きな部品、組立図、配置図 |
これに伴う規則が三つあります。どれを落としても現場との議論になります。
- 主となる尺度は表題欄に書きます。 図面全体に適用される尺度です。
- 別の尺度で描いた部分拡大図や投影図には、その図のそばに尺度を書きます。 たとえば「詳細A(5:1)」
です。書かなければ表題欄の尺度で読まれます。
- 図面に記入する寸法は常に部品の実寸法であり、紙の上で測れる寸法ではありません。尺度が変えるの
は絵であって数値ではありません。初めて図面を扱う人が最も混同する点です。
用紙サイズの選び方
用紙はA系列で、一段ごとに面積が二倍になります。A4、A3、A2、A1、A0です。原則は、読める尺度を先に決 め、それに合う用紙を選ぶことです。手元のA4に部品を押し込み、収まるまで尺度を下げる、という順序で はありません。
実際に役立つ確認が一つあります。想定した用紙サイズで試し刷りし、裸眼で読むことです。表面性状の記号を 読むのに画面で400パーセントまで拡大しなければならないなら、印刷は正しい尺度でも配置は失敗しています。
配置:空きではなく読む流れに沿って並べます
| 原則 | 具体的には |
|---|
| 機能ごとに寸法をまとめる | 同じはめあいの寸法を隣に置き、図全体へ散らさない |
| 寸法は外形線の外側へ | ハッチング部の上や外形線の上に数値を置かない |
| 寸法線の間隔をそろえる | 外形線から最初の寸法線を離し、以後は等間隔にする |
| 二重に記入しない | 一つの寸法は、それが最もよく分かる図に一度だけ書く |
| 寸法群の周りに余白を残す | 余白は図面を読めるようにするものであり、無駄な場所ではない |
| 密集した範囲は部分拡大図へ | 穴や段の多い範囲は拡大図として切り出す |
この中で最も誤りを防ぐ規則は二重に記入しないことです。二か所に書いた寸法は、改訂のたびに両方を直 す必要があり、遅かれ早かれ片方だけ直す回が来ます。
表題欄:十の欄と、それぞれの理由
表題欄は手続きのために埋める枠ではありません。どの欄も、誰かがいつか尋ねる問いに答えていま す。たいていは、描いた本人がその図面を忘れた何年か後のことです。
| 欄 | 答える問い | 欠けるとどうなるか |
|---|
| 部品名称 | これは何か | 部品表でも倉庫でも見つけられない |
| 図番、部品番号 | 一意の識別 | 発注も追跡もできない |
| 改訂 | どれが現行か | 二枚が机の上にあり、どちらに従うか分からない |
| 材料と質別 | 何でできているか | 現場が習慣で選ぶ |
| 尺度 | 絵がどれだけ縮小・拡大されているか | 大きさの関係を読み違える |
| 単位 | ミリメートルか、別の単位か | 単位の取り違えはこの中で最も高くつく誤り |
| 普通公差 | 個別指示のない寸法はどうなるか | 指示のない寸法がすべて未定義になる |
| 投影法の記号 | 第一角法か第三角法か | 左右を逆に読み、しかも誰も気付かない |
| 作成・確認・承認と日付 | 誰が何に責任を持つか | 問題が起きたとき責任の所在が不明 |
| 会社名と顧客名 | この図面は誰のものか | 使用権と機密の扱いが曖昧になる |
最も空欄になりやすい三つは、単位、普通公差、投影法の記号です。しかも三つとも、部品が できあがるまで目で見つけられない種類の誤りを生みます。
複数枚の図面:番号の付け方と、繰り返すべきもの
部品や組立体が一枚に収まらないときは、規約を最初に決めます。
- 「n / 総枚数」の形で枚数を書く。 受け取った側が、抜けがないかを自分で確認できます。総枚
数のない「2枚目」は、自分で検算できない図面です。
- 一枚目に完全な表題欄を置く。 以降は簡略な表題欄でもかまいませんが、**図番と改訂は必ず繰
り返します**。印刷して回すうちに枚がばらばらになるためです。
- 改訂は組全体に付ける。 一枚を直したら組全体の改訂を上げます。枚ごとに付けると、表題欄を
見ても分からない形で二つの改訂が混ざった組ができます。
- 部品表は一枚だけに置き、他の枚はそこを参照します。何枚にも分けて載せません。
図面の余白は無駄な場所ではありません
詰め込んだ図面は、二枚に分けた余裕のある図面より読むのが遅く、読み違いも多くなります。今の一 枚に詰めるか、もう一枚増やすかで迷ったら、本当の費用は紙ではなく、読む時間と読み違いにあるこ とを思い出してください。
MINATA発行チェック
- [ ] 機能、境界、故障症状を記載した。
- [ ] 基準、責任、誤操作防止が明確である。
- [ ] 六項目に証拠と合否限界がある。
- [ ] 製造、組立、検査、保全を実機で試した。
- [ ] 改訂、サプライヤー、構成記録が一致する。
良い設計は、製造、運転、保全、変更を通過する前提の連鎖である。図面の尺度と配置では、結果が継続する証拠を残すことがMINATAの基準である。
よくある質問
尺度1:2の図面に書く寸法はどちらですか
部品の実寸法です。紙の上で測れる寸法ではありません。尺度が変えるのは絵であって数値ではありません。 初学者が最も混同する点であり、印刷物を直接測って寸法を得てはならない理由でもあります。
規格の系列にない尺度を使ってよいですか
避けてください。推奨系列(2:1、5:1、10:1および1:2、1:5、1:10など)は、読む人が暗算せずに大きさを見積 もれるようにするためのものです。1:3や1:7のような尺度は換算を強い、換算が必要な箇所では誰かが誤ります。
部分拡大図にはその図の尺度が必要ですか
必要です。図のそばに「詳細A(5:1)」のように書きます。書かなければ、その図は表題欄の尺度で読まれ、大 きさの関係を誤解されます。
用紙サイズと尺度はどちらを先に決めますか
読める尺度を先に決め、それに合う用紙を取ります。逆に手元のA4へ押し込み、収まるまで尺度を下げる方法は、 形は正しくても現場で誰も読めない図面を生みます。
一つの寸法を二重に書いてはいけないのはなぜですか
改訂のたびにすべての箇所を直す必要があり、遅かれ早かれ片方だけ直す回が来るためです。そのとき図面は自 分自身と矛盾し、現場は読んだほうの数値を採ることになります。
よくある質問(続き)
表題欄に必ず要る欄はどれですか
最低限、部品名称、図番と部品番号、改訂、材料と質別、尺度、単位、普通公差、投影法の記号、作成 者と承認者および日付、会社名です。最も空欄になりやすいのは単位、普通公差、投影法の記号の三つ です。
枚数だけでなく総枚数も書く理由は何ですか
受け取った側が抜けを自分で確認できるようにするためです。総枚数のない「2枚目」では、その組が三 枚なのか五枚なのか誰にも分かりません。
改訂は枚ごとですか、組全体ですか
組全体です。一枚を直したら組全体の改訂を上げます。枚ごとに付けると、表題欄からは分からない形 で二つの改訂が混ざった組ができます。
二枚目以降にも完全な表題欄が要りますか
簡略な表題欄でかまいませんが、図番と改訂は必ず繰り返します。印刷して回すうちに枚が離れるため、 どの組のどの改訂かを一枚ごとに言える必要があります。
今の一枚に詰めるか、もう一枚増やすか
すでに詰まっているなら増やします。本当の費用は紙ではなく、読む時間と、詰まった図面が生む読み 違いです。
まとめ
図面の尺度と配置は、書類を整えるための手続きではない。設計意図を、繰り返し製作でき、組み立てられ、測定できる結果へ変えるための手段である。良い図面は、設計者がそばで説明しなくても伝わる。情報の構成そのものがその役割を果たさなければならない。
現場のための早見表
判断は、状況・表し方・目的を具体的に対応づけると下しやすくなります。
| 状況 | 表し方・制御の仕方 | 目的 |
|---|
| 特徴の多い小さな部品 | 2:1や5:1に拡大する | 寸法と記号を読めるようにする |
| 単純で長い部品 | 縮小し、部分拡大図を添える | 文字を一か所に詰め込まない |
| 組立図 | 紙の寸法より部品の関係を優先する | 全体から細部への読みの流れを作る |
この表は、プロジェクトに適用される規格を置き換えるものではありません。「尺度と配置」を、製造・組立・検査のときに答えられる問いへ変えるためのものです。
実際の場面
粗さ記号を読むのにPDFを400%まで拡大しなければならないなら、たとえ印刷尺度は正しくても、配置は失敗しています。良い図面は、寸法のまとまりの周りに余白を残し、穴の多い領域には部分拡大図を分けて与えます。
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