機械設計 #85:部品名の標準化 — 探し、買い、保全できる名前にする
部品名標準化は境界が変わっても明確で、製造、検索、検査、保全ができなければならない。
名称より先に機能
名称、刻印、材料、注記を決める前に、機能、入力、期待結果、故障症状、合否限界、測定方法を書く。全ての値に担当を付ける。
基本チェック
- 部品の機能と、命名の規則: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 一意の識別記号、言語、略語: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 図面、部品表、基幹システム、供給元での一貫性: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 改訂と変更の履歴: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 検索と交換の実績: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 管理する担当者と、見直しの周期: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
| 故障モード | 症状 | 確認 |
|---|
| 識別が曖昧 | 部品・記録が違う | 実ロットを検索・監査 |
| 接点を省略 | 購入・組立・保全で誤り | 実工程を確認 |
| 文書が不一致 | 名称は正しいが改訂違い | 全資料を基準化 |
使える名前の構造
部品名は飾りの札ではありません。部品表の中、倉庫の中、そして五年後の機械の記録の中で使う検索の鍵 です。使える構造は二つの部分からできています。
【機能を表す名詞】 + 【修飾語:位置、対象、区別できる特徴】
| 完全な名前 | 機能を表す名詞 | 修飾語 |
|---|
| ベース板(ポンプ) | ベース板 | ポンプ |
| ガイド軸(上) | ガイド軸 | 上 |
| ストッパ(材料投入側) | ストッパ | 材料投入側 |
| カバー(軸継手) | カバー | 軸継手 |
機能を表す名詞を先に置くのは、まとめて引けるようにするためです。「ベース板」と入力すれば機械の中 のベース板がすべて出てきます。逆にすると一覧は対象ごとに並び、まとめて引く力を失います。
良くない名前と、望ましい名前
| 良くない名前 | 問題点 | 望ましい名前 |
|---|
| 「魚」「うさぎの耳」 | 社内の通称。新任者や供給元には通じない | 「偏心位置決めストッパ」 |
| 「L字板」 | 形を述べているだけで、機能が分からない | 「電動機支持板」 |
| 「板 100×50 SS400」 | 寸法と材料を名前に詰め込んでいる | 「クランプ板」。寸法と材料には別の欄がある |
| 「部品3」 | 何の情報も持たない | 実際の機能に沿った名前 |
| 「新しいベース板」 | 「新しい」は次の改訂で意味を失う | 改訂記号または部品番号で区別する |
| 「Support Bracket ASSY-2」 | 言語と略語が混ざっている | 言語と用語をそろえる |
名前に入れない四つのもの
- 寸法 — 寸法の欄も図面もあります。名前に入れると、寸法を変えるたびに名前が変わり、部品表と購買
の履歴まで引きずります。
- 材料 — 材料の欄があります。理由は同じです。
- 図番や部品番号 — 専用の欄があります。繰り返すことは、食い違いの起きる場所を作ることです。
- 一時的な状態 — 「新」「手直し」「仮」はいずれも数か月で意味を失います。
これが実際に費用になる理由
思い付きの名前は四つのことを壊し、その四つはどれも費用になります。古い機械の記録から部品を見つける こと、交換のときに正しく買うこと、次の機械へ設計を再利用すること、そして予備品を在庫するこ とです。「魚」という名前の部品を見つけられるのは、名付けた本人だけです。それがまさに危険なのです。
名前を決める前の手早い確認方法があります。部品の一覧を設計に関わっていない人に渡し、それぞれ何をする 部品か当ててもらうことです。外れた箇所が、まだ使えない名前です。
意味のある番号と意味のない番号:どちらかに決め、混ぜない
部品名称は人が理解するためのもの、部品番号は計算機と倉庫が扱うためのものです。考え方は二 つあり、この二つは混ぜられません。
| 意味のある番号 | 意味のない番号 |
|---|
| 例 | MD-AL-0125-A(分類、材料、連番、改訂) | 100234 |
| 利点 | 番号を読めば、どの分類の部品か分かる | 属性が変わっても番号を変えずに済む |
| 欠点 | 材料を変えると番号が嘘になる。分類が増えると桁が足りなくなる | 何の部品かは 仕組みを照会しないと分からない |
| 向く規模 | 部品が少なく、変更も少ない小規模 | 管理システムを持ち、部品数の多い規模 |
意味のある番号の実務上の落とし穴です。番号にALを含むアルミ部品を、後から鋼へ変更したとしま す。番号を残せば番号が嘘をつき、番号を変えれば購買の履歴と、その番号を参照していたすべての図 面とのつながりを失います。大きな仕組みほど、意味のない番号にして属性はデータベースに持たせる 方向へ移っていくのはこのためです。
どちらを選ぶかより大切なことがあります。どちらかに決めて一貫させることです。半分だけ意味 のある体系は、どちらの方法でも引けない体系になります。
派生品:番号を共有してよい場合とそうでない場合
| 状況 | 扱い |
|---|
| 形状が同じで、組付けに影響しない塗装色だけ違う | 仕組みが対応していれば、基番+色の接尾語で共有できる |
| 形状が同じで材料が違う | 別番号。機械的性質で互換でない |
| 左勝手と右勝手 | 別番号。図面が一枚でも部品は二つ |
| 同じ系列で長さだけ違う | 別番号。数が多ければ一枚の図面に派生表を作る |
| 公差だけ変更し、旧部品でも組み付く | 同じ番号で改訂を上げる |
短くまとめれば、問いは以前と同じです。この二つは互換か。それに答えられれば、番号の判断は おのずと決まり、規約を議論する必要はありません。
派生表:一枚の図面、複数の番号
寸法がいくつか違うだけの系列、たとえば同じ径で長さの違う軸、同じ外形で板厚の違う板などでは、 似た図面を何枚も作らず、派生表を持つ一枚の図面にします。
派生表に必要な三点です。
- 変わる寸法は図の上で文字(L、t、D)で示し、値は表に置きます。
- 表の一行がそれぞれ一つの部品番号です。注記ではありません。
- 変わらない寸法は図の上に数値のまま残し、表へ入れません。表がふくらまないようにします。
この方法は保守すべき図面の数を減らし、さらに重要なこととして、系列全体に共通する変更を一か所 で直せるようにします。
MINATA発行チェック
- [ ] 機能、識別、境界、故障症状を記載した。
- [ ] 責任、接点、誤操作防止が明確である。
- [ ] 六項目に証拠と合否限界がある。
- [ ] 製造、購買、検査、保全を実機で試した。
- [ ] 改訂、サプライヤー、データ、履歴が一致する。
良い設計は、製造、運転、保全、変更を通過する前提の連鎖である。部品名標準化では、識別と機能が信頼できる証拠を残すことがMINATAの基準である。
よくある質問
機能で名付けますか、形で名付けますか
機能です。「L字板」は形を述べていますが何をするかを伝えず、一台の機械に違うL字板が五つあることもあり ます。「電動機支持板」なら検索でき、購入でき、意味も通じます。
部品名に寸法を入れてよいですか
いけません。寸法と材料には図面と部品表に専用の欄があります。名前に入れると、寸法を変えるたびに名前が 変わり、部品表、購買の履歴、納入済みの機械の記録まで巻き込みます。
長年社内の通称を使ってきた機械はどうしますか
通称は会話で使い、記録には標準の名前を使います。橋渡しが必要なら、移行期間だけ部品表の備考欄に通称を 書きます。図面上の正式名称にしてはいけません。
名前は日本語と英語のどちらにしますか
機械全体で一つの言語にそろえ、顧客の要求があればそれに従います。言語より重要なのは一貫性です。同 じ種類の部品には常に同じ機能名詞を使い、同じものを「支持板」と呼んだり「取付板」と呼んだりしないこと です。
よくある質問(続き)
意味のある番号と意味のない番号、どちらを使いますか
規模によりますが、より大切なのはどちらかに決めて一貫させることです。意味のある番号は読みやす い代わりに属性が変わると嘘になり、意味のない番号は照会が要る代わりに間違いません。半分だけ意 味のある体系は、どちらの方法でも引けません。
材料を変えたら番号も変えますか
旧部品と新部品が機械的性質で互換でないなら変えます。これが派生のあらゆる場面での判断基準であ り、番号の規約を議論する話ではありません。
左勝手と右勝手で番号を共有してよいですか
いけません。図面を共有できても部品は二つです。番号を共有すると倉庫が区別できず、組み付ける人 が取り違えます。
派生表と複数の図面はどう使い分けますか
寸法がいくつか違うだけで、それ以外が同一のときは派生表です。保守すべき図面が減り、系列全体に共 通する変更を一か所で直せます。
派生表があれば個別の部品番号は不要ですか
不要にはなりません。表の一行がそれぞれ一つの部品番号です。派生表が節約するのは図面であって番号 ではなく、倉庫と調達は引き続き番号ごとに動きます。
まとめ
部品名の標準化は、書類を整えるための手続きではない。設計意図を、繰り返し製作でき、組み立てられ、測定できる結果へ変えるための手段である。良い図面は、設計者がそばで説明しなくても伝わる。情報の構成そのものがその役割を果たさなければならない。
現場のための早見表
名前の付け方は、状況・言い方・目的を対応づけると迷いません。
| 状況 | 言い方・制御の仕方 | 目的 |
|---|
| 機能を表す名 | 部品+役割で言う | 例:センサ受け板 |
| 区別する属性 | 必要なら左右・上下を足す | 図番だけに頼らない |
| 購買上の名 | 供給者の呼称に合わせる | 早く探して交換できる |
実際の場面
「Plate A」「Plate B」という名は設計中は使いやすくても、保全のときには意味を持ちません。「左のセンサ取付板」と呼べば、倉庫・現場・技術が同じ部品を認識できます。図番は、あくまで唯一の識別子として残します。
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