機械設計 #94:樹脂肉厚 — 厚さより均一さを優先する
樹脂肉厚は境界が変わっても機能、精度、製造、検査、保全を守らなければならない。
形状より先に機能
セット、接合、抜き勾配、肉厚を決める前に、入力状態、期待結果、合否限界、故障症状、測定方法を書く。全ての値と変更に担当を付ける。
基本チェック
- 機能上必要な剛性と、最小の肉厚: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 肉厚の均一さと、変わり目の丸み: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 流動長さ、ゲート、ウェルドライン、エアだまり: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- ひけ、反り、冷却、繊維の方向: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 測定と、成形工程の能力: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 設計変更と、型の試作の証拠: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
| 故障モード | 症状 | 確認 |
|---|
| セット・接合が曖昧 | はめあい・交換が違う | 識別と組立機能を監査 |
| 工程を省略 | 反り、すきま、ひけ、ずれ | 工程を確認・測定 |
| 文書が不一致 | 名称は正しいが改訂違い | 全資料を基準化 |
肉厚が均一でないと不良が出る理由
溶けた樹脂は型へ入り、冷えて収縮します。厚い部分は薄い部分より冷えるのが遅いため、後から収縮します。 そのときには外側の皮はすでに固まっています。結果として次のどちらかが起きます。
| 現象 | 現れる場所 | 見え方 |
|---|
| ひけ | 厚い部分の反対側の外面 | 斜めの光ではっきり見えるくぼみ。外観を損なう |
| ボイド | 厚い部分の内部 | 内部の空洞。外から見えないまま部品を弱くする |
荷重を受ける部品では、ボイドはひけよりはるかに危険です。外観検査には現れませんが、実際に荷重を受ける断 面を減らします。
「厚さより均一さ」と言われる理由がここにあります。念のため厚くすることは、多くの場合逆効果です。足 した厚みこそが、ボイドとひけの発生源だからです。
硬くしたいなら、厚くせずリブを足します
| 硬くする方法 | 結果 |
|---|
| 肉厚を増やす | ひけとボイドが出る。冷却時間が延び、樹脂量と価格が増える |
| リブを足す | 同じ樹脂量ではるかに効果が高く、肉厚も均一に保てる |
| フランジ、曲げ縁、曲面を足す | 局部的に厚くせずに硬くできる |
| より硬い樹脂に変える | 価格が上がり、肉厚が均一でない問題は解決しない |
リブは、同じ量の樹脂を厚い壁として広げるよりはるかに大きな剛性を与えます。ただしリブも壁の厚さと釣り合 わせる必要があります。そうでないと、リブの付け根自体が厚い部分となり、ひけの原因になります。
肉厚の変わり目はなだらかに
肉厚を変えざるを得ないときは、急に変えないことです。直角の段は流れを妨げると同時に応力集中部を作り ます。樹脂の流れと冷却の速さが徐々に変わるよう、十分な長さでテーパまたは丸みを付けます。
一般的な原則は、流れの方向に沿って厚い側から薄い側へ進み、樹脂が通る経路では肉厚を安定させることです。 薄い側から厚い側へ流れ込む形は、その逆より欠陥が出やすくなります。
ウェルドライン:見えない弱点
二つの流れが再び出会う場所、つまり穴の後ろ、ピンの周り、二つのゲートの間にはウェルドラインができま す。その部分はほかより結合が弱く、最初に割れる場所になり得ます。
設計側でできることが三つあります。荷重を受ける主要な部分にウェルドラインが来ないよう穴とピンを配置する こと。流れが早く分かれないよう肉厚を均一に保つこと。そしてゲートの位置について早めに型メーカーと相談す ることです。ゲートが流れを決め、流れがウェルドラインの位置を決めるからです。
厚肉部と肉厚変化の扱い:中実のままにせず肉を盗む
肉厚の不均一が不良を生むと知っているだけでは足りず、厚くせざるを得ない箇所をどう扱うかが問題です。 基本は肉盗み(コアリング)です。厚い塊をくり抜いて壁を公称肉厚近くに戻し、ゆっくり冷えて ひける中実の塊を残さないようにします。
- 中実の塊はくり抜く:厚いボスやリブは、剛性が要るなら補強リブを残しつつ、均一肉厚の殻に
くり抜きます。中実のまま残しません。
- なだらかな肉厚変化:肉厚が変わる箇所は、段差ではなくおよそ3対1(厚さ変化1に対し長さ3)
でなじませます。急な段差はひけを作り、流れをせき止めます。
- 内側の角にRを付ける:鋭い内角は応力を集中させ、流れを乱します。肉厚のおよそ0.5倍のRで
なじませます。
流動長/肉厚比とゲート位置
溶融樹脂は、冷えて固まるまでの一定距離しか型を充填できません。流動長と肉厚の比(L/T)は、 一つのゲートがどこまで充填できるかを示します。薄い壁ほど許される比が小さくなるので、ゲートを 近くに置くか、数を増やします。
設計上の帰結は次のとおりです。
- 充填距離に対して薄すぎる壁はショートショットになります。流路をわずかに厚くするか、ゲートを
追加して直します。
- ゲートは厚い域に置き、流れを厚肉から薄肉へ向かわせます。薄肉から厚肉へ流すと、最後に冷える
厚肉部が樹脂を引き、ボイドを作ります。
- ゲート位置は、二つの流れが出会う場所に跡とウェルドラインを残します。ウェルドラインは母材より
弱いので、意匠と強度の両面から位置を選びます。
MINATA発行チェック
- [ ] 機能、境界、セットまたは形状、故障症状を記載した。
- [ ] 基準、責任、工程、誤操作防止が明確である。
- [ ] 六項目に証拠と合否限界がある。
- [ ] 製造、組立、検査、保全を実機で試した。
- [ ] 改訂、サプライヤー、材料、構成記録が一致する。
良い設計は、製造、運転、保全、変更を通過する前提の連鎖である。樹脂肉厚では、精度と機能が信頼できる証拠を残すことがMINATAの基準である。
よくある質問
樹脂部品の外面がくぼむのはなぜですか
その裏側がほかより厚いためです。多くはリブの付け根、ボスの付け根、あるいは中実の塊です。厚い部分は冷え るのが遅く、外側の皮が固まった後に収縮するため、表面を内側へ引き込みます。対策は厚い部分を減らすことで あり、保圧を上げることではありません。
硬くするために肉厚を増やしてもよいですか
多くの場合は逆効果です。足した厚みがひけとボイドを生み、冷却時間を延ばし、価格を上げます。リブやフラン ジのほうが、同じ樹脂量ではるかに高い剛性を与え、しかも肉厚を均一に保てます。
内部のボイドは危険ですか
荷重を受ける部品ではひけより危険です。外観検査には現れませんが、実際に荷重を受ける断面を減らすためです。 見た目に問題のない部品でも、厚い部分の内部に空洞があることがあります。
肉厚を変えるときはどうしますか
十分な長さでテーパまたは丸みを付け、急な段にしません。直角の段は樹脂の流れを妨げると同時に応力集中部を 作ります。同じ一か所で二つの問題を同時に起こすことになります。
ウェルドラインはどこにでき、避けられますか
二つの流れが再び出会う場所で、多くは穴の後ろやピンの周りです。完全には避けられませんが、位置を動かすこ とはできます。荷重を受ける部分に来ないよう穴とピンを配置し、ゲートの位置を早めに型メーカーと相談します。
よくある質問(続き)
中実の厚い樹脂塊はどう扱いますか。
くり抜いて壁を公称肉厚近くに戻し、剛性が要るなら補強リブを残します。中実のまま残すと、塊は ゆっくり冷え、反対面がひけ、内部にボイドを作りがちです。
肉厚変化は段差にすべきか、なだらかにすべきか。
なだらかに、およそ3対1の比でなじませます。急な段差はひけを作り流れをせき止めますが、なだらかな なじみは均一な充填を助け、断面変化部の応力を下げます。
なぜゲートを厚い域に置くのですか。
流れを厚肉から薄肉へ向かわせるためです。薄肉から厚肉へ流すと、最後に冷える厚肉部が樹脂を引き、 ボイドを作ります。ゲートは跡とウェルドラインも残すので、意匠と強度の両面から位置を選びます。
まとめ
樹脂肉厚は、書類を整えるための手続きではない。設計意図を、繰り返し製作でき、組み立てられ、測定できる結果へ変えるための手段である。良い図面は、設計者がそばで説明しなくても伝わる。情報の構成そのものがその役割を果たさなければならない。
現場のための早見表
肉厚は、状況・与え方・目的を対応づけると決めやすくなります。
| 状況 | 与え方・制御の仕方 | 目的 |
|---|
| 主要な壁 | 流れに沿ってほぼ均一に保つ | ひけと反りを減らす |
| 厚みが変わる部分 | 丸みで移行させる | ホットスポットを避ける |
| 剛性が要る部分 | 肉を増やさずリブを足す | 成形サイクルを短くする |
実際の場面
ねじ穴の周りで肉厚を倍にすると、外面にひけが出やすくなります。より良い解決は、中空のボスにしてリブでつなぎ、材料が推奨する肉厚比を保つことです。
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