機械設計 #95:樹脂のリブとボス — ひけを作らずに剛性を上げる
樹脂リブとボスは境界が変わっても機能、製造、検査、費用、保全を守らなければならない。
数値より先に機能
肉厚、公差、基準、穴群を決める前に、入力、期待結果、合否限界、故障症状、測定方法を書く。全ての値と変更に担当を付ける。
基本チェック
- 機能上必要な剛性と、力の伝わり方: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 壁の厚さに対するリブまたはボスの厚さ: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 抜き勾配、丸み、離型: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- ひけ、反り、冷却、外観面: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- ねじ、インサート、締結の荷重: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 型の試作、測定、合否基準: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
| 故障モード | 症状 | 確認 |
|---|
| 機能が未定義 | 過剰公差または機能不足 | 機能スタックを再構築 |
| 基準が実在しない | 検査と組立が不一致 | 実治具で試す |
| 文書が不一致 | 数値は正しいが改訂違い | 全資料を基準化 |
リブとボス:すべては壁の厚さとの比率で決まります
リブもボスも、樹脂が局部的に厚くなる場所です。つまりどちらもひけとボイドの出る恐れがある場所です。 どちらも使ってよいのですが、取り付く壁の厚さと釣り合わせる必要があります。
| 部位 | 壁との関係 | 理由 |
|---|
| リブ付け根の厚さ | 壁よりはっきり薄くする | 壁と同じ厚さなら、反対側の面はほぼ確実にひける |
| リブの高さ | 充填のしやすさで上限が決まる | 高すぎると充填しにくく、離型もしにくい |
| リブ付け根の丸み | 丸みを付ける。直角にしない | 直角は応力集中部であり、流れも妨げる |
| リブの抜き勾配 | 両側面に必須 | リブは型開き方向で最も深い部位だから |
| リブどうしの間隔 | 間に型のコアを作れるだけ空ける | 近すぎると薄い鋼の板が残り、折れやすい |
覚えておきたい逆説があります。リブを厚くしてもほとんど硬くならず、ひけだけがはっきり増えます。硬く したいならリブを高くするか本数を増やします。厚くするのではありません。
付け根の丸み:二方向のせめぎ合い
リブ付け根の丸みは二つの働きをします。応力集中を減らすことと、樹脂がリブへ流れ込みやすくすることです。 しかし丸みが大きすぎると、接合部にちょうど材料を足すことになり、避けようとしていた厚い部分を自分で 作ってしまいます。
したがって付け根の丸みはせめぎ合いです。割れず充填できるだけ大きく、厚い部分を作らないだけ小さくします。 感覚で決めず、型メーカーに相談すべき箇所です。
ボス:単独で立たせないこと
ボスはねじや位置決めピンのための樹脂の柱であり、これも厚い部分です。原則が三つあります。
- 中実ではなく中空にする。 中実のボスは典型的な厚い部分です。ボスの壁もリブと同じ比率の原則に従い
ます。
- 平面の真ん中にボスを単独で立たせない。 単独のボスは弱く、反対側の面がひけやすくもあります。補強
リブで最も近い壁につなぐか、壁に寄せて配置します。
- リブと同様に、付け根に丸みを付け、抜き勾配を与えます。
ねじ用のボスでは、壁の厚さがねじの締付力と、ねじが入るときの周方向の応力にも耐える必要があります。ねじ の種類と想定する締付トルクと一緒に決め、切り離して考えないでください。
形状を固める前の手早い確認
- リブとボスそれぞれの反対側の面を見ます。そこは外観面ですか。外観面なら、ひけの危険は理屈ではなく実際
の問題です。
- 局部的に厚くなっている箇所を数えます。厚い箇所が散らばって多いなら、個別に手直しするのではなく構造を
組み直す合図です。
- 近すぎるリブの対がないか確認します。型の側から考えます。二つのリブの間には、射出圧を受ける薄い鋼の板
が立っています。
リブとボスの具体的な数値
前の節では、リブとボスは壁の厚さとの比率で判断すると述べました。この節では、図面に載せる数値を 示します。
| 寸法 | よく使う目安 | 理由 |
|---|
| 根元のリブ厚さ | 壁厚の0.5〜0.6倍 | これより厚いと根元が反対面にひける |
| リブ高さ | 壁厚の3倍以下 | 高すぎると充填しにくく反りやすい |
| リブ間の間隔 | 壁厚の2倍以上 | 近すぎると局所的に発熱し、型の冷却が難しい |
| リブの抜き勾配 | 片面0.5度以上 | リブが擦れずに型から抜けるように |
| リブ根元のR | 壁厚の0.25〜0.5倍 | 応力を下げるが、大きすぎると厚肉の塊になる |
ボス:壁につなぎ、ひけと戦う
ボス(ねじやピンのための柱)は局所的な厚肉の塊なので、中実のまま残すとほぼ必ず反対面にひけます。 扱い方は三つあります。
- ボスを補強リブで壁につなぐ:単独で立たせるより剛性が高く、樹脂の流路にもなります。
- ボス周りの肉厚を比率で保つ:ボスの壁は主壁のおよそ0.6倍、リブと同じにして、厚肉の塊に
しません。
- 穴とボス根元にRを付ける:鋭い根元はねじ締め時に応力を集中させるので、根元に小さなRを
付けます。
インサートやタッピンねじを受けるボスでは、外径とボス壁が締付荷重にも耐えなければなりません。 樹脂へのインサートの記事も参照してください。
MINATA発行チェック
- [ ] 機能、境界、故障症状を記載した。
- [ ] 基準、責任、工程、誤操作防止が明確である。
- [ ] 六項目に証拠と合否限界がある。
- [ ] 製造、組立、検査、保全を実機で試した。
- [ ] 改訂、サプライヤー、材料、構成記録が一致する。
良い設計は、製造、運転、保全、変更を通過する前提の連鎖である。樹脂リブとボスでは、機能とばらつきが信頼できる証拠を残すことがMINATAの基準である。
よくある質問
リブは壁と同じ厚さでよいですか
いけません。リブの付け根は壁よりはっきり薄くします。そうでなければ反対側の面はほぼ確実にひけます。厚い リブはほとんど硬くもならないので、硬さが要るなら高さを増やすか本数を増やします。
付け根の丸みは大きいほどよいですか
そうではありません。丸みは応力集中を減らし、樹脂がリブへ流れ込むのを助けますが、大きすぎると接合部に材 料を足すことになり、避けようとしていた厚い部分を作ります。せめぎ合いなので型メーカーに相談します。
ねじ用のボスは中実と中空のどちらですか
中空にし、壁の厚さはリブと同じ比率の原則に従います。中実のボスは典型的な厚い部分で、反対側の面のひけと 内部のボイドを生みます。ボスの壁はねじの締付力にも耐える必要があるため、ねじの種類とトルクと一緒に決め ます。
平面の真ん中に立つボスは問題ですか
弱く、ひけやすくもあります。補強リブで最も近い壁につなぐか、壁に寄せて配置し直します。単独のボスは締付 力と横方向の力に対してはっきり弱くなります。
リブどうしを近づけて配置してよいですか
型の側から考えます。二つのリブの間には射出圧を受ける薄い鋼の板が立っており、近すぎれば折れやすく、型の 製作も難しくなります。最小の間隔は、リブの高さと型の材料に応じて型メーカーに確認します。
よくある質問(続き)
リブを壁と同じ厚さにしてよいですか。
やめたほうがよいです。壁と同じ厚さのリブは根元に塊を作り、ゆっくり冷えて反対面にひけます。リブ厚 は壁厚のおよそ0.5〜0.6倍に保ちます。
リブの高さはどこまで許されますか。
壁厚のおよそ3倍までです。それより高いとリブ先端まで充填しにくく反りやすいので、剛性が要るなら 一本の高いリブより、低いリブを複数入れます。
ボスがひけやすいのですが、どう減らしますか。
ボス壁を主壁のおよそ0.6倍に保ち(中実でなくくり抜く)、ボスを補強リブで壁につなぎ、ボス根元に Rを付けます。単独で立つ中実のボスは、典型的なひけの原因です。
まとめ
樹脂のリブとボスは、書類を整えるための手続きではない。設計意図を、繰り返し製作でき、組み立てられ、測定できる結果へ変えるための手段である。良い図面は、設計者がそばで説明しなくても伝わる。情報の構成そのものがその役割を果たさなければならない。
現場のための早見表
リブとボスは、状況・作り方・目的を対応づけると崩れません。
| 状況 | 作り方・制御の仕方 | 目的 |
|---|
| リブ | 主壁より薄く、根元に丸みを付ける | 剛性を上げ、ひけを減らす |
| ねじボス | 中空にしてリブで支える | 厚い肉のかたまりを避ける |
| 間隔 | 一点にリブを集めない | 不均一な収縮を減らす |
実際の場面
単独で立つボスは締めると割れやすく、厚すぎるボスは反対面にひけを作ります。ボスを壁へ二、三本の細いリブでつなぐほうが安定しますが、流れとウェルドラインの位置を確認します。
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