機械設計 #96:樹脂部品のインサート — 小さな接合を熱と力から設計する
樹脂インサートは境界が変わっても機能、製造、検査、費用、保全を守らなければならない。
数値より先に機能
肉厚、公差、基準、穴群を決める前に、入力、期待結果、合否限界、故障症状、測定方法を書く。全ての値と変更に担当を付ける。
基本チェック
- インサートの機能と、荷重の向き: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 材料の組合せと熱膨張: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- ローレット、アンダーカット、深さ、保持力: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 成形、位置決め、冷却: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 締付トルク、抜け荷重、損傷の限界: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 検査、供給元の工程、交換: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
| 故障モード | 症状 | 確認 |
|---|
| 機能が未定義 | 過剰公差または機能不足 | 機能スタックを再構築 |
| 基準が実在しない | 検査と組立が不一致 | 実治具で試す |
| 文書が不一致 | 数値は正しいが改訂違い | 全資料を基準化 |
インサートを入れる三つの方法と、それぞれの代償
樹脂部品の中の金属インサートは、実在する問題を解決します。樹脂へ直接切ったねじは、着脱の回数にほとんど 耐えられないという問題です。ただしインサートの入れ方が、強度と費用の両方を決めます。
| 方法 | やり方 | 得られるもの | 失うもの |
|---|
| 成形時に入れる | 射出の前に型へインサートを置く | 最も強い保持。後工程が不要 | 成形の周期が延び、型が複雑になり、位置ずれの危険もある |
| 加熱して圧入する | インサートを加熱し、成形済みの穴へ押し込む | 樹脂がローレットへ流れ込み、非常によく効く。管理もしやすい | 設備と、そのための時間が必要 |
| 常温で圧入する | わずかに小さい穴へ押し込む | 最も速く、最も安い | 保持が最も弱く、残留応力と後の割れが起きやすい |
繰り返し着脱する部品や振動を受ける部品では、加熱圧入がよい落としどころになることが多いです。成形時に入 れる方法に近い強度が得られ、型に手を加えず、成形の周期も延びません。
力の向きは二つ、保持の仕組みも二つ
インサートは性質の違う二つの力に耐える必要があり、それぞれ別の形状が担当します。
| 力 | 保持する形状 | 不足するとどう壊れるか |
|---|
| 抜け出し(インサートが引き抜かれる) | 周方向のローレット、つば、広がった端部 | ねじを締めるときにインサートが穴から抜ける |
| 回り(インサートが穴の中で回る) | 軸方向のローレット、粗面、円でない形状 | インサートが空回りし、ねじを締められなくなる |
周方向のローレットだけのインサートは抜けには強くても回ります。軸方向だけならその逆です。ねじを受けるイ ンサートには両方が必要で、専用のインサートに二種類のローレットがあるのは飾りではありません。
周囲の樹脂は十分な厚さが必要です
インサートは樹脂の中にある中実の金属です。したがって厚い部分と同じ問題を作ります。周囲の樹脂が厚くなり、 冷えるのが遅く、反対側の面にひけを生み、インサートの周りに残留応力を残します。
やるべきことが三つあります。
- 周囲に十分な樹脂の厚さを確保する。 薄すぎると、インサートを入れるとき、あるいは最初にねじを締め
たときに割れます。最小値はインサート製造元のカタログから、寸法ごとに調べます。
- 厚い部分をボスとして扱う。 インサートの周りを中空のボスにし、付け根に丸みを付け、補強リブで壁に
つなぎます。
- 反対側の面が外観面かどうかを見ます。ひけが現れるのはそこです。
金属と樹脂では熱膨張が大きく違います
多くの設計で見落とされる点です。工業用樹脂の熱膨張は金属の数倍あり、種類によっては一桁大きくなります。 インサートを含む組立体での帰結です。
- 温度が上がると、樹脂はインサートより大きく伸びます。部品が二つの金属面の間で固く締め付けられていると、
樹脂の部分が圧縮を受け、時間とともにクリープします。誰も外していないのに締結が緩んでいきます。
- 一つの部品に離れた位置のインサートが複数あると、その中心間距離は相手の金属板より温度で大きく変化しま
す。相手側の穴には、すきまか長穴が必要です。
よく使う工業用樹脂の線膨張係数は 材料 #08 にあります。
インサートはどれだけ保持するか:ローレット、ボス肉厚、熱膨張
インサートは二つの異なる荷重を受け、そのローレット模様がどちらに強いかを決めます。
- トルク:インサートにねじをねじ込むとき、インサートが樹脂の中で回ってはいけません。軸方向
(縦)のローレットが回転によく耐えます。
- 引き抜き:インサートを穴から引き抜く向きの荷重。横方向のローレットや周溝が引き抜きによく
耐えます。
- 多くのインサートは、両方に耐えるようひし目や複合のローレットを使います。継手が受ける主荷重で
選びます。
インサート周りのボス肉厚は円周応力に耐える必要があります
インサートを圧入または加熱圧入すると、周りの樹脂に円周(押し広げる)応力がかかります。ボスが 薄すぎると割れます。よく使う目安は、ボス外径がインサート径のおよそ2倍で、押し広げる荷重と 後のねじ締めに耐える樹脂の輪を確保します。
| 入れ方 | 保持 | 注記 |
|---|
| 成形同時(モールドイン) | 非常に強い | インサートが成形熱・圧に耐える必要。位置決めが悪いとずれる |
| 加熱/超音波で下穴へ | 強く、制御しやすい | 溶けた樹脂がローレットを包む。下穴寸法が要 |
| 冷間圧入 | 中 | ボスに残留応力を残し、時間とともにクリープしうる |
熱膨張:金属と樹脂は一緒には動きません
樹脂は金属より数倍大きく熱で膨張します。高温で動く、または温度が繰り返し変わる組立体は、時間と ともにインサート周りが緩みます。高温の組立体では、引き抜きに強いローレットを選び、保持トルクを 初回組立時だけでなく熱サイクル後にも確認します。
図面または受入票に、最低保持トルクと引き抜き力を記載し、「インサートを入れる」だけで なく、施工者が達成すべき目標値を分かるようにします。
MINATA発行チェック
- [ ] 機能、境界、故障症状を記載した。
- [ ] 基準、責任、工程、誤操作防止が明確である。
- [ ] 六項目に証拠と合否限界がある。
- [ ] 製造、組立、検査、保全を実機で試した。
- [ ] 改訂、サプライヤー、材料、構成記録が一致する。
良い設計は、製造、運転、保全、変更を通過する前提の連鎖である。樹脂インサートでは、機能とばらつきが信頼できる証拠を残すことがMINATAの基準である。
よくある質問
樹脂へ直接ねじを切ってもよいですか
ほとんど外さない部品、荷重が軽く振動もない部品なら使えます。ただし樹脂へ直接切ったねじは着脱の回数にほ とんど耐えられず、数回でねじ山がつぶれます。定期的に着脱する箇所にはインサートを使います。
成形時に入れるのと加熱圧入のどちらがよいですか
成形時に入れる方法が最も強く保持しますが、型が複雑になり周期も延びます。加熱圧入はよい落としどころで、 強度が近いうえ型に手を加えません。常温圧入は最も速く安い代わりに最も弱く、残留応力も残ります。
インサートが穴の中で空回りするのはなぜですか
回り止めの形状がないためです。周方向のローレットは抜けには効きますが回転には効きません。回転を止めるに は軸方向のローレット、粗面、円でない形状が必要です。ねじを受けるインサートには両方の形状が要ります。
インサート周囲の樹脂はどれくらいの厚さが必要ですか
インサート製造元のカタログから寸法ごとに調べます。値は樹脂の種類とインサートの寸法で変わります。薄すぎ ると、インサートを入れた瞬間か、最初にねじを締めたときに割れます。
温度が変わる環境でインサート入りの樹脂部品を使うときの注意は
樹脂は金属より数倍大きく伸びます。二つの金属面の間で固く締め付けられていると、樹脂が圧縮を受け、時間と ともにクリープして締結が緩みます。離れた位置に複数のインサートがある場合、相手の金属部品にはすきまか長 穴を設けて膨張差を吸収させます。
よくある質問(続き)
縦のローレットと横のローレットは何が違いますか。
縦(軸方向)のローレットは回転、つまりねじを締めるトルクに耐えます。横のローレットや周溝は引き 抜きに耐えます。主荷重で選び、多くのインサートは両方に耐えるひし目を使います。
インサート周りのボスはどれくらいの厚さが要りますか。
外径がインサート径のおよそ2倍が目安で、施工時の円周応力と後のねじ締めに樹脂の輪が耐えるように します。ボスが薄すぎると圧入時に割れます。
なぜ高温の組立体は時間とともにインサートが緩むのですか。
樹脂が金属より数倍大きく熱で膨張するため、熱サイクルを繰り返すとインサート周りの樹脂がクリープ して緩みます。高温の組立体では引き抜きに強いローレットを選び、熱サイクル後に保持トルクを確認 します。
まとめ
樹脂部品のインサートは、書類を整えるための手続きではない。設計意図を、繰り返し製作でき、組み立てられ、測定できる結果へ変えるための手段である。良い図面は、設計者がそばで説明しなくても伝わる。情報の構成そのものがその役割を果たさなければならない。
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