機械設計 #98:検査基準を選ぶ — データムは現場に存在しなければならない
検査基準は境界が変わっても機能、製造、検査、費用、保全を守らなければならない。
数値より先に機能
肉厚、公差、基準、穴群を決める前に、入力、期待結果、合否限界、故障症状、測定方法を書く。全ての値と変更に担当を付ける。
基本チェック
- 機能上のデータムと検査のデータムの関係: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 安定した接触と、再現できる段取り: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 作業空間、治具、測定子、測定の方向: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 不確かさ、温度、作業者による差: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 供給元および受入検査との合意: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- そのデータムが機能を守っている証拠: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
| 故障モード | 症状 | 確認 |
|---|
| 機能が未定義 | 過剰公差または機能不足 | 機能スタックを再構築 |
| 基準が実在しない | 検査と組立が不一致 | 実治具で試す |
| 文書が不一致 | 数値は正しいが改訂違い | 全資料を基準化 |
3-2-1の原則:六つの自由度を拘束する
空間にある物体には六つの自由度があります。三つの軸に沿った並進と、三つの軸まわりの回転です。再現性のあ る測定とは、指示計を当てる前に六つすべてを拘束することです。
| データム | 拘束する自由度 | 面に求められること |
|---|
| 第一次データム(A) | 三つ。一軸方向の並進と、二軸まわりの回転 | 最も大きく、平らで、安定していて、支持面積が十分な面 |
| 第二次データム(B) | 二つ | Aに直角な面または線。向きを決めるのに十分な長さ |
| 第三次データム(C) | 残りの一つ | 手の届く部位。最後の回転を止められればよい |
A面に三点、B面に二点、C面に一点で支える。これが3-2-1という呼び名の由来です。A、B、Cの順序は見た目を整 えるための並び順ではなく、位置決めの優先順位です。順序を変えれば部品の置かれ方が変わり、測定結果も変 わります。
使えるデータム面が満たすべき五つの条件
| 条件 | 理由 |
|---|
| 面積が十分 | 小さい面では部品がぐらつき、段取りのたびに違う姿勢になる |
| 安定していて柔らかくない | 薄い壁は締めると変形し、実態と違う良い数値が出る |
| 段取り時に手が届く | 閉じたくぼみの中のデータムは、測れないデータム |
| その後に皮膜も再加工もされない | 塗装やめっきでデータム面が変わる |
| 組付けの状態を再現する | 部品を、機械の中にあるときと同じように保持する必要がある |
最後の条件が最も重要で、最も抜けやすい条件でもあります。設計画面の上では便利でも、機械の中で部品が実際に 当たる面でないデータムは、見た目のよい数値を出しても機能を代表しません。
実際の面と、理想の基準
図面上で混同されやすい二つの概念があります。
- データム形体: 部品の上にある実際の面。凹凸があり、形状の誤差もあります。
- データム: その面から導き出す理想的な平面、軸、点です。
実際の面が粗い、あるいは反っているとき、そこから理想的なデータムを導くことは不安定になります。そこで使う のがデータムターゲットです。面全体ではなく、特定の数点または小さな領域を接触箇所として指定します。鋳 物、溶接構造、レーザ切断の部品ではよく必要になります。
三つの基準は一致させます
設計の基準、加工の基準、検査の基準は同じ体系にします。食い違うと基準の移し替えによる誤差が生まれます。 加工の基準では合格した部品が、設計の基準で測ると不合格になり、しかも双方が自分の立場では正しいのです。ど うしても異なる場合は、その移し替えの誤差を公差の連鎖に算入し、無視しないでください。
データムは、治具と測定機が触れられる実在の面でなければなりません
3-2-1の原則は、部品を拘束するのに何点要るかを示します。この節は、どの面をデータムに選ぶかの話 です。データムは、治具と測定機がそのまさに場所に触れられて初めて意味を持つからです。
- データムは届く場所であること:隠れた面、内部の中心線、プローブが届かない稜線を選びません。
治具が位置決めし、測定機が同じ場所を参照できるだけの広い面、または十分深い穴を選びます。
- 測定データムは機能データムと一致させる:部品が実使用で当たるまさにその面を主データムに
選びます。ある面で測っても、組立時には別の面で着座するなら、測定で合格した部品でも入らない ことがあります。
粗い面には全面ではなくデータムターゲットを使う
鋳造、鍛造、溶接の部品では粗い面が凸凹しているので、全面をデータムにすると段取りごとに位置が 変わります。対策はデータムターゲットです。粗い面の上に、着座点となる小さな点や領域をいくつか 具体的に指定し、位置を寸法で記します。治具はまさにその点に載るので、毎回同じように位置決めできます。
| 面の種類 | データムの選び方 |
|---|
| 加工した平らで広い面 | 全面をデータムにする |
| 加工した穴 | 穴の中心(位置決めピン) |
| 粗い面(鋳造・鍛造) | データムターゲット:主に3点、二次に2点、三次に1点 |
加工データムと測定データムは異なりうる
加工の都合で現場があるデータムで治具に載せ、図面は機能データムを指定することがあります。両者が 異なるなら、その関係を測り直します。加工データムに対して「合格」でも、機能データムに対してはずれて いることがあるからです。機能データムを先に記し、検査者が誤った原点から測らないようにします。
MINATA発行チェック
- [ ] 機能、境界、故障症状を記載した。
- [ ] 基準、責任、工程、誤操作防止が明確である。
- [ ] 六項目に証拠と合否限界がある。
- [ ] 製造、組立、検査、保全を実機で試した。
- [ ] 改訂、サプライヤー、材料、構成記録が一致する。
良い設計は、製造、運転、保全、変更を通過する前提の連鎖である。検査基準では、機能とばらつきが信頼できる証拠を残すことがMINATAの基準である。
よくある質問
A、B、Cの順序はなぜ重要ですか
順序が位置決めの優先順位を表しているためで、アルファベット順ではありません。まずAが三つの自由度を拘束し、 次にBが二つ、最後にCが一つを拘束します。順序を変えれば測定時の置かれ方が変わり、部品が同じでも結果が変 わります。
どの面を第一次データムにしますか
最も大きく安定した面であり、機械へ取り付けたときに部品が実際に当たる面です。最後の条件が前の二つより 重要です。組付けの状態を反映しないデータムでは、良い数値が出ても機能について何も言えません。
粗い鋳肌ではどうデータムを取りますか
データムターゲットを使います。面全体ではなく、特定の数点または小さな領域を接触箇所として指定します。粗い 面を面全体でデータムにすると、段取りのたびに違う高い部分に当たり、測定が再現しません。
設計の基準と加工の基準が違う場合は
基準の移し替えによる誤差が生まれます。一方の基準では合格し、他方では不合格になります。設計、加工、検査の 三つの基準を一致させるのが最善です。どうしても異なるなら、移し替えの誤差を公差の連鎖に加えます。
図面の要求が測れないと検査から言われたら
図面を直します。検査に頑張らせるのではありません。再現できる測定方法のない要求は未完成の要求です。原因は 多くの場合、選んだ基準で段取りが組めないことか、測定条件が書かれていないことです。
よくある質問(続き)
内部の中心線をデータムに使ってよいですか。
治具と測定機がそれを参照できる場合(穴や軸を通して)に限ります。プローブが触れられず、治具が 着座できないデータムは、図面上は妥当に見えても、測り直すことができません。
粗い鋳肌の面ではどうデータムを取りますか。
データムターゲットを使います。粗い面の上に着座点となる小さな点をいくつか具体的に指定し(ふつう 3-2-1)、位置を寸法で記します。粗い面の全面をデータムにすると、段取りごとに位置が変わります。
測定データムと加工データムが異なると問題ですか。
誤解を招くことがあります。加工データムに合格でも、機能データムに対してはずれていることがあります。 図面には機能データムを記し、現場が別のデータムで治具に載せるなら、両者の関係を測り直します。
まとめ
検査基準を選ぶは、書類を整えるための手続きではない。設計意図を、繰り返し製作でき、組み立てられ、測定できる結果へ変えるための手段である。良い図面は、設計者がそばで説明しなくても伝わる。情報の構成そのものがその役割を果たさなければならない。
現場のための早見表
検査基準は、状況・選び方・目的を対応づけると決めやすくなります。
| 状況 | 選び方・制御の仕方 | 目的 |
|---|
| 基準A | 安定した面で、当たり面積が十分 | 三つの自由度を止める |
| 基準B | Aに直角な面か線 | 二つの自由度を止める |
| 基準C | 残る、近づきやすい特徴 | 最後の自由度を止める |
実際の場面
粗い鋳肌の面は大きく見えても、数点でしか当たらないなら良い基準ではありません。検具の基準シミュレータは、部品が働くときに位置決めされる状態を、正しく再現しなければなりません。
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