生産技術 #04:削り出し、鋳造、溶接構造 — 数量による損益分岐点
先に結論を述べます。数量が少ない、または金型を払わずに高い精度と機械的性質が必要な部品には無垢材からの削り出しを選びます。数量が多く形状が複雑で、金型費用を多くの製品に分けたいなら鋳造を選びます。大きな部品、ベースフレームで、金型なしに軽く速く作りたいなら溶接構造(板と形鋼から組む)を選びます。この三つは同じ部品を作りますが、費用構造がまったく異なります。削り出しは材料と機械時間、鋳造は初期の金型、溶接構造は溶接と矯正の手間がかかります。本記事は、正しく選ぶために数量による損益分岐点を見積もるための指針です。
三つの成形法の早見比較
| 項目 | 削り出し | 鋳造 | 溶接構造 |
|---|
| 初期の金型・治具費用 | 非常に低 | 高(金型) | 低〜中(溶接治具) |
| 1部品あたり費用 | 高 | 大量では低 | 中 |
| 経済的な数量 | 1〜数十 | 数百以上 | 1〜数十 |
| 材料の無駄 | 高(多くの切り屑を除去) | 低 | 低 |
| 達成できる精度 | 高(IT7が容易) | 中、合わせ面は仕上げが要る | 低、合わせ面は仕上げが要る |
| 機械的性質 | 均一で良好 | 鋳造工程による | 良好だが溶接応力あり |
| 初品までの時間 | 速 | 遅(金型製作) | 中 |
| 複雑な形状 | 限られ、機械時間がかかる | 非常に柔軟 | 箱・枠形状に限られる |

削り出し:少ないと安く、多いと高い
削り出しは、無垢材の塊(鋼、アルミ)からフライスと旋盤で部品を切り出します。金型が不要なため起動費用はほぼゼロで、材料と機械時間だけを払います。だからこそ削り出しは低数量で常に勝ちます。1部品でも10部品でも金型投資が不要です。
その代わり、1部品あたりの費用は高く、数量が増えてもほとんど下がりません。各部品が同じ切り屑の除去と同じ機械時間を要するためです。複雑な形状、深いポケット、薄い壁では機械時間が速く増します。材料の無駄も大きく、仕上げ1 kgの部品が5 kgの塊から始まり、残りが切り屑になり得ます。
技術的な利点は、母材(圧延鋼、押出アルミ)からの均一な機械的性質、高い精度、ガス巣や鋳造欠陥がないことです。したがって、高荷重で信頼性を要する部品、または少数量は、通常削り出しを選びます。
鋳造:最初は高く、数を重ねると安い
鋳造は、部品の形状の金型に溶けた金属を注ぎ、凝固させて取り出します。最大の費用は金型の製作(模型、砂型、またはダイカストの金属金型)で、これは固定で数量に依存しません。数百・数千の製品に分けると、1部品あたりの金型費用が非常に小さくなるため、鋳造は大量で圧倒的に勝ちます。
鋳造は、削り出しなら多くの機械時間を要する非常に複雑な形状も作れます。曲がった壁、内部の空洞、補強リブ、自由形状などです。ほぼ必要な量だけ注ぐため、材料の無駄が低いです。
欠点は、鋳造部品が通常、合わせ面と精密な穴を仕上げ加工する必要があることです。鋳造面が粗く公差が広いためです。機械的性質は鋳造の品質に依存し、工程が悪いとガス巣、引け巣、偏析があり得ます。そして金型製作の時間が初品を遅くし、急な試作や設計がまだ変わるときに向きません。
溶接構造:大きな部品に柔軟
溶接構造は、切った板と形鋼(角、I形、U形)を溶接で組みます。機械のベースフレーム、車両フレーム、大型構造を支配します。無垢の塊では重く高価すぎ、鋳造金型では数量が少なく寸法が大きいため不経済な所です。
利点は、低い起動費用(図面と簡単な溶接治具だけ)、非常に大きな部品を作れること、設計を変えやすいこと、材料を箱梁として配置するため同じ剛性で無垢の塊より軽いことです。鋳造より初品が速いです。
欠点は、溶接が局所的に熱を入れ、残留応力と反りを生じることです。重要な溶接構造は通常、合わせ面を仕上げ加工する前に応力除去(ストレスリリーフ)が要ります。全体の精度は低く、合わせ面と位置決め穴は溶接後にフライスします。品質は溶接工の技量と溶接検査の手順に依存します。
損益分岐点:数量で選ぶ
損益分岐点の考え方は、各方法が固定費用(金型・治具)と変動費用(1部品あたり)を持つことです。総費用 = 固定 + 変動 × 数量。
- 削り出し: 固定 ≈ 0、変動が高い。原点から立ち上がる急な費用線。
- 鋳造: 固定が高い(金型)、変動が低い。高く始まるが緩やかな費用線。
- 溶接構造: 固定が低く、変動が中。中間。
非常に少ない数量では、金型を払わないため、削り出し(大きな部品なら溶接構造)が最も安いです。数量が増えると、ある点で鋳造の総費用が削り出しを下回ります。それが損益分岐点です。その上では鋳造が安く、その下では削り出しが安いです。具体的な損益分岐点は金型価格、複雑さ、機械時間単価に依存しますが、法則は常に成り立ちます。
見積もりの例
中程度の形状のアルミブラケットが必要とします。
- 試作機に5個作る: 鋳造金型を作る価値はない。アルミ材からの削り出しが正しく、速く、正確で、金型費用がない。
- 商業製品に年2,000個作る: 鋳造金型費用を2,000で割ると非常に小さく、各部品は一つずつフライスするよりはるかに安い。鋳造(そして合わせ面を仕上げフライス)が正しい。
- 2メートルの大きな機械ベースフレームを1台作る: 無垢の塊を作らず(重く高価すぎる)、金型も作らない(1台、大寸法)。角鋼からの溶接構造、応力除去、その後に基準面をフライス。
すべての「鋳造」が同じではない
鋳造と言うとき、金型費用と損益分岐点は鋳造技術で大きく変わります。
- 砂型鋳造: 金型は砂から作り、安く、大きな部品を作れるが、表面が粗く公差が広い。模型の費用が低いため損益分岐点が低く、数十から数百部品で経済的。機械本体、ベース、鋳鉄部品に適する。
- ダイカスト: 金属金型は高価で寿命が高く、きれいな表面とより良い公差、速いサイクルを与える。金型が高価なため損益分岐点が高く、数千部品以上でのみ経済的。大量の小さなアルミ・亜鉛部品に一般的。
- ロストワックス鋳造(精密鋳造): 複雑な部品、良い表面、再加工が少ないが、単価が高い。難しい形状の小部品、合金鋼に適する。
したがって「鋳造と削り出し」を比べるとき、どの鋳造かを明記する必要があります。年300個の部品は砂型鋳造で損益分岐しても、ダイカストでは損益分岐しないことがあります。数量、複雑さ、表面の要求が一緒に適した鋳造技術を決め、そこから初めて実際の損益分岐点が出ます。
方法の組み合わせがしばしば実際の解
実際には、多くの部品が純粋に一つの方法ではありません。よくある組み合わせをいくつか挙げます。
- 荒鋳造のあと仕上げ加工: 切り屑と機械時間を減らすためほぼ最終形状(ニアネットシェイプ)に鋳造し、その後、合わせ面と精密な穴だけをフライス・旋削。数個の面が精度を要する大量部品に最も一般的。
- 枠を溶接のあと基準面をフライス: 溶接構造で大きな枠を作り、応力除去のあと、大型の平面フライスで合わせ面をフライスし位置決め穴をあける。
- 鋳造部品と溶接板を組む: 複雑な領域を持つ大きな部品で、複雑な組を別に鋳造し、板の枠に溶接する。
共通点は、安い方法で質量の大部分を作り、機能面だけに高い方法(仕上げ加工)を使うことです。この考え方は、生産技術 #03の板金切断法の選び方に似ています。部品を一つの技術に押し込めるのではなく、各面の要求で分けます。
価格のほかに時間とリスクがある
純粋な費用の損益分岐点は物語のすべてではありません。他の二つの要因がしばしば選択を決めます。
- 初品までの時間。 まだ試験中で設計が変わり得るとき、鋳造金型を作るのは危険です。設計変更は金型を無駄にします。この段階では、削り出しや金属3Dプリントのほうが、1部品あたり高くても安全です。設計変更はプログラムの変更だけで済み、金型を失わないためです。
- 品質リスク。 鋳造部品は、重要な部品ではX線や超音波で内部欠陥(ガス巣、引け巣)を検査する必要があります。溶接構造は溶接検査が要ります。この検査の費用と時間を総費用に加える必要があります。
よくある道筋は、試作と小ロットの段階では速さと柔軟性のために削り出しを使い、設計が固まり数量が増えたら費用を下げるため鋳造へ切り替えることです。この移行は最初から計画する必要があります。削り出し用と鋳造用の図面は完全には同じでないためです(鋳造は抜き勾配、すみR、均一な肉厚が要る)。
よくある失敗
- 低数量に鋳造金型を作る。 金型費用を分けきれない。削り出しのほうが安い。
- 非常に大量に削り出しを使う。 各部品が高く遅い。鋳造のほうがはるかに経済的。
- 鋳造・溶接部品の合わせ面の仕上げ加工を忘れる。 鋳造・溶接面は直接組むには精度が足りない。
- 溶接構造の残留応力を無視する。 仕上げフライス前に応力除去しないと、加工後に部品が反る。
- 1部品の単価だけを比べ金型費用を忘れる。 固定と変動の両方を加え、実際の数量で割る必要がある。
手早い選定チェックリスト
- [ ] 予定数量はどれだけか。少 → 削り出し、多 → 鋳造を検討。
- [ ] 部品は大きく枠・箱形状か。該当 → 溶接構造。
- [ ] 形状は複雑(内部の空洞、曲がった壁)か。該当 → 鋳造が有利。
- [ ] 均一な機械的性質、高い信頼性が必要か。該当 → 削り出しに傾く。
- [ ] 金型・治具費用を総費用に加え、実際の数量で割ったか。
- [ ] 合わせ面の仕上げ加工の段階(溶接なら応力除去)を価格と時間に入れたか。
製品に削り出し、鋳造、溶接構造の間で迷っているなら、MINATAは実際の数量で損益分岐点を見積もり、適した成形方針を助言できます。MINATAの技術・製造サービスをご覧ください。
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