材料 #11:アルミ A5052・A6061・A7075 — 加工・溶接・強度で選ぶ
先に結論を述べます。板や筐体に、容易な曲げ、良好な溶接性、耐食性が必要ならA5052を選びます。汎用の構造部品に、強度・加工・溶接の釣り合いが必要ならA6061を選びます。荷重を担う部品に、鋼に近い非常に高い強度が必要なら、溶接性の悪さと高い費用と引き換えにA7075を選びます。この三つは三つの異なる合金系に属するため、性質が大きく異なります。A5052は軟らかく延性があり、A6061は万能で、A7075は超高強度だが加工に手がかかり、ほぼ溶接できません。材質を誤ると、部品が十分に強くない、溶接できない、費用が過剰で組み立てにくい、のいずれかになります。本記事は、加工・溶接・強度の三要素で正しいアルミ材を選ぶための指針です。
三つの材質の早見比較
| 項目 | A5052 | A6061 | A7075 |
|---|
| 合金系 | Al-Mg(5000系) | Al-Mg-Si(6000系) | Al-Zn(7000系) |
| 標準的な引張強さ | 中(約230 MPa) | 良(約290〜310 MPa、T6) | 非常に高(約570 MPa、T6) |
| 被削性 | 良(やや粘る) | 非常に良 | 良 |
| 溶接性 | 非常に良 | 良 | 悪、構造的にほぼ溶接不可 |
| 曲げ・板成形 | 非常に良 | 中 | 悪 |
| 耐食性 | 非常に良 | 良 | 中(保護が必要) |
| 陽極酸化 | 良(装飾) | 良 | 可能だが色が不均一 |
| 相対価格 | 低 | 中 | 高 |
| 代表的な用途 | 板、筐体、槽、曲げ部品 | 構造、フレーム、汎用機械部品 | 高荷重部品、金型、航空 |

A5052:軟らかく延性のある板、溶接と耐食が良好
A5052は5000系(アルミ-マグネシウム)に属し、曲げ、成形、溶接が必要なときに最も一般的な板材です。熱処理では硬化せず、冷間加工で強化します。強度は中程度ですが延性があり、特に海洋・化学環境で非常に耐食性が高いです。
用途は、盤の筐体、シールド板、貯槽、プレス・曲げ部品、機器のカバーなどに広く使われます。利点は、割れずに曲げやすいこと、溶接が良好なこと、装飾・防食のための陽極酸化面がきれいなことです。欠点は、強度が高くないため高荷重の部品に向かないこと、加工時にA6061より工具にやや粘ることです。板を折り、密に溶接し、防錆が必要という課題なら、A5052は経済的で正しい選択です。
A6061:最も釣り合いの取れた万能材
A6061は6000系(アルミ-マグネシウム-シリコン)に属し、熱処理で硬化します(T6状態が一般的)。最も釣り合いの取れた材質で、構造部品や機械部品に最も広く使われます。フレーム、ブラケット、ベース板、汎用のCNC切削部品などです。
利点は、非常に良い被削性(きれいな切り屑、粘りが少ない)、T6状態での良好な強度、溶接可能(ただし溶接部は局所的に強度が下がり、必要なら再熱処理すべき)、良好な耐食性、良好な陽極酸化です。欠点は、T6状態での板成形(折り曲げ)がA5052より劣り、急な曲げで割れやすいことです。機械部品に「何でも良い水準でこなす」材質が必要なとき、A6061はほぼ常に妥当な出発点です。
A7075:超高強度だが溶接に難があり高価
A7075は7000系(アルミ-亜鉛)に属し、最も強いアルミ合金の一つで、T6状態の引張強さは普通の構造用鋼に近づき、しかもはるかに軽いです。高荷重部品に使います。金型、荷重を担う治具、航空部品、強くて軽い必要のある機械部品などです。
利点は、非常に高い比強度と良好な被削性です。重要な欠点は、構造的にほぼ溶接できないこと(溶接部が割れ、強度が著しく低下)、耐食性が劣るため通常は陽極酸化や保護皮膜が必要なこと、板成形が悪いこと、高価なことです。したがってA7075は、強度が本当の制約であり、部品が溶接ではなくボルト・リベットで組まれるときにのみ使うべきです。A6061で足りる部品にA7075を使うのは、過剰な出費であり、組立を自ら難しくします。
どれを選ぶか:加工・溶接・強度を天秤にかける
手順は次のとおりです。
- 部品は溶接が必要か。 必要 → A5052(板)またはA6061(構造)。A7075は避ける。
- 板の曲げ・折りが多いか。 多い → A5052。
- 非常に高い強度が必要で溶接しない(ボルト)か。 → A7075。
- 汎用の機械部品、CNC切削、良好な強度、溶接可能か。 → A6061(良い既定)。
- 強い腐食環境(海洋、化学)か。 → A5052。A7075を使うなら保護皮膜が必須。
三要素はしばしば衝突します。A7075は最も強いが溶接できず高価、A5052は溶接・曲げが最良だが弱い、A6061は中間です。したがって決定的な問いは通常「この部品は溶接するか」と「強度は本当の制約か」です。この二つに答えれば、選択はほぼ終わります。
初心者への実務的な助言として、迷ったらA6061-T6から始め、明確な理由があるときだけ変えます。板で曲げや密な溶接が必要で大きな荷重を担わないならA5052へ下げ、A6061では強度が足りず部品が溶接ではなくボルト組みだと計算が示すならA7075へ上げます。こうすれば、弱すぎる材質を選ぶ(機能が失敗)過ちと、高すぎる材質を選ぶ(浪費、組立が難しい)過ちの両方を避けられます。A6061は汎用の機械部品の需要の大部分を覆うため、それを基準にするのは安全です。
調質(テンパー)は材質と同じくらい重要
同じアルミ材でも、性質は調質で大きく変わり、O、H、T4、T6などの記号で表します。
- O: 焼きなまし軟質、最も延性があり強度が最も低い — 深絞り成形用。
- H(例:A5052-H32): 加工硬化、5052の板に使う。
- T4: 溶体化して自然時効。T6: 溶体化して人工時効、最も高強度 — A6061とA7075に一般的。
図面に調質なしで「A6061」とだけ書くのは不十分です。軟らかいA6061-Oは強いA6061-T6とまったく異なります。常に材質を調質とともに示します(例:A6061-T6、A5052-H112)。A6061-T6から溶接する部品では、溶接部が局所的に焼きなまされてT6強度の一部を失うことを忘れないこと。機能が要求するなら、溶接後に再熱処理します。
例:実際の三部品を読む
- 板から折る制御盤の筐体、密閉と防錆が必要: A5052-H32。よく曲がり、密に溶接でき、耐食性が良く、安い。
- CNC切削のベース板と支持フレーム、ボルト組み、良好な強度: A6061-T6。きれいに加工でき、十分な強度、妥当な価格。
- 剛性と軽さが必要な高荷重治具、ボルト組み: A7075-T6。高強度で、溶接しないためボルト組みが正しい。保護のため陽極酸化。
素材形状と入手性が選択に影響する
性質のほか、素材形状と市場の入手性も実際の選択を左右します。
- A5052は多くの厚さの板で最も一般的で、棒や大きな塊は少ないです。厚い切削の塊部品なら、A5052は自然な選択ではありません。
- A6061はあらゆる形状で入手できます。板、丸棒、角棒、管、押出プロファイルです。これが機械部品の既定材である理由の一つで、ほぼ常に正しい形状が見つかります。
- A7075は主に塊加工用の厚板と棒で、高価で、ときにロット注文になります。
材質の選択は「正しい形状と寸法が在庫にあるか」という問いと一緒でなければなりません。厚さ60 mmの塊部品にA5052を選ぶと素材が入手しにくく、A6061へ換えれば性質にも合い入手も容易です。押出プロファイルの部品(アルミフレーム)には、6000系が最も多く押し出される系です。
熱伝導、電気伝導、特有の要求
アルミは一般に熱と電気をよく伝えますが、その程度は材質で異なり、合金化が進むほど下がります。放熱が必要な部品(ヒートシンク、電源筐体)には、低合金の系のほうがよく伝えます。A6061は通常、放熱と強度の妥当な釣り合いです。放熱と成形だけが必要で強度が不要な部品には、より純粋なアルミ(1000系)やA5052が使えます。
見落とされがちな要素が表面処理との適合性です。A5052とA6061は均一できれいな色に陽極酸化でき、装飾目的に適します。A7075は陽極酸化できますが、亜鉛含有が高いため色が不均一です。製品の外面に均一な陽極酸化色が必要なら、材質選択の際の検討点です。表面処理の選択肢と選び方は、材料 #13で別に述べます。
鋼との手早い比較:いつアルミを選ぶか
アルミは軽く(密度は鋼の約三分の一)耐食性が良いですが、剛性(弾性率)は鋼の約三分の一しかありません。これは、同じ形状のアルミ部品が同じ荷重で鋼部品の三倍たわむことを意味します。したがって軽量化のために鋼をアルミに置き換えるとき、通常は剛性を補うために断面を増やすかリブを加える必要があり、同じ形状は保てません。重量と耐食性が重要ならアルミが勝ち、低コストで剛性と絶対的な強度が必要なら鋼が勝ちます。高強度のA7075でもアルミの剛性を持つため、「鋼と同じ強度」は「鋼と同じ剛性」を意味しません。
よくある失敗
- 溶接が必要な部品にA7075を使う。 溶接部が割れ強度を失う。A6061かA5052を選ぶ。
- 高荷重部品にA5052を使う。 強度が足りない。A6061-T6かA7075が必要。
- 図面で調質を省く。 一般的な「A6061」。T6/T4/Oを明記する必要がある。
- A6061-T6を急に折り曲げる。 割れやすい。曲げる板はA5052か軟らかい調質を使う。
- 腐食環境でA7075の表面保護を忘れる。 他の二つより防錆が劣る。
- A6061で足りるのにA7075を使う。 過剰な出費で、組立を自ら難しくする。
手早い選定チェックリスト
- [ ] 部品は溶接が必要か。必要 → A5052/A6061、A7075は避ける。
- [ ] 板の曲げ・折りが多いか。多い → A5052。
- [ ] 強度は本当の制約か。非常に高い+溶接しない → A7075。
- [ ] 汎用の機械部品、CNC切削か。→ A6061-T6。
- [ ] 環境は強い腐食か。該当 → A5052または保護皮膜。
- [ ] 図面に材質を調質とともに(T6/H32…)明記したか。
- [ ] A6061-T6を溶接するなら、溶接部の強度低下・再熱処理を見込んだか。
- [ ] 選んだ材質に、正しい形状(板/棒/塊)が入手できるか。
- [ ] 鋼をアルミに置き換えるなら、剛性を補ったか(断面増・リブ追加)。
- [ ] 外面に均一な陽極酸化色が必要なら、A7075を避けたか。
アルミの表面処理(陽極酸化、塗装)は、材料 #13 — 陽極酸化、めっき、粉体塗装を参照してください。特定の部品にアルミ材を選び、加工・溶接・強度・素材の入手性を天秤にかける必要があるなら、MINATAは図面と実際の作動条件に基づいて助言できます。MINATAの技術・製造サービスをご覧ください。
参考:MISUMI技術カタログ(FA用メカニカル標準部品)の「材料の種類と用途」表(JIS H 4000アルミ合金)および質別記号(T/H/O)。
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