機械設計 #104:ピンとブッシュのはめあい — 取外し可否を最初に決める
ピンとブッシュのはめあいは境界が変わっても機能、製造、検査、費用、保全を守らなければならない。
数値より先に機能
幾何値、粗さ、はめあいを決める前に、入力、期待結果、合否限界、故障症状、測定方法を書く。全ての値と変更に担当を付ける。
基本チェック
- ピンまたはブシュの機能と、力の伝わり方: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- すきまばめ、中間ばめ、締まりばめのどれか: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 材料、温度、潤滑、摩耗: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 圧入の力、工具の作業空間、損傷の危険: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 検査、交換、保守の方法: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 公差、供給元の工程能力、合否基準: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
| 故障モード | 症状 | 確認 |
|---|
| 機能が未定義 | 過剰公差または機能不足 | 機能スタックを再構築 |
| 基準が実在しない | 検査と組立が不一致 | 実治具で試す |
| 文書が不一致 | 数値は正しいが改訂違い | 全資料を基準化 |
原則:片側を締め、もう片側は外せるようにする
ピンと穴、ブシュとハウジングのどの組合せでも、最初の問いは「締まりばめか、すきまばめか」ではありません。 どちらの部品が永久に残り、どちらの部品が交換されるのかです。摩耗する部品は安く外せるものにし、高価な 部品や作り直しにくい部品は守ります。
| 組合せ | 締めておく側 | 外せるようにする側 | 理由 |
|---|
| 二枚の板をつなぐ位置決めピン | 残るほうの板(基準の板) | 保全のときに外す板 | ピンは基準の板とともに残り、もう一方は位置決めされるだけ |
| ハウジングの中の滑りブシュ | ハウジング(ブシュを圧入する) | ブシュの中を通る軸 | ブシュは摩耗する部品。ブシュの交換のほうがハウジングの交換より安い |
| よく開ける組立体のダウエルピン | 片側は圧入、もう片側はわずかなすきま | すきまのある側 | 両側を圧入すると、傷めずに外せなくなる |
典型的な誤りは、ピンを両方の板へきつく圧入することです。最初の組立はとても正確ですが、最初の保全でピ ンを打ち抜くことになり、打ち抜くたびに穴を傷めます。数回で位置決めの精度は失われます。
はめあいは、その部品が果たす役割で選びます
| 部品が果たす役割 | はめあいの区分 | 備考 |
|---|
| 正確に位置決めし、手で外せる | ごく小さなすきま、または中間ばめ | 手または軽い工具で外せる |
| しっかり位置決めし、頻繁には外さない | きつめの中間ばめ | 外すには抜き工具が必要 |
| 永久に固定し、はめあい面で力を伝える | 締まりばめ(圧入) | 円周方向の応力と肉厚の確認が必要 |
| ブシュの中で滑る、または回る | すきまばめ | 潤滑と速度に応じて選ぶ |
具体的な記号は 機械設計 #29 — 穴基準はめあい にあります。すきまと締めしろの数値は、寸法区分ごとに規格の表から取ります。経験から推測してはいけません。
材料が違えば、温度がはめあいを変えます
図面が常温では正しく、運転温度では誤りになる箇所です。アルミのハウジングへ青銅のブシュを圧入する例がよく あります。アルミは青銅より大きく膨張するため、温まるとハウジングのほうが大きく広がり、締めしろが減りま す。ブシュがハウジングの中で回ることがあります。
逆に、アルミ板の中の鋼のピンは、高温で緩み、低温で締まります。温度が変化する環境で使う組立体では、三 つのことを行います。
- 両方の材料の線膨張係数を調べる。
- すきままたは締めしろを、温度範囲の両端で計算し直す。20度だけで済ませない。
- 差が大きければ、締めしろに頼らず、止めねじや段付きなど機械的な回り止めに切り替える。
よく使う材料の線膨張係数の表は 材料 #08 にあります。
圧入の力学:しめしろ、保持力、そして縮む内径
しまりばめを選ぶことは、しめしろ(内側の部品が穴よりわずかに大きい量)を選ぶことです。しめしろが 大きいほど保持力は上がりますが、材料の応力も上がり、薄いブシュを割ったり降伏させたりする閾値が あります。だからしめしろは、保持に足りる量であって、締まるほど良いわけではありません。
- 小さいしめしろ:軽い保持で、圧入も抜きも容易。横荷重の小さい位置決めピンに向きます。
- 大きいしめしろ:しっかり保持しますが、大きな圧入力を要し、割れや降伏の恐れがあります。かじりを
避けるため、焼きばめ・冷やしばめ(穴を温める、内側部品を冷やす)で組むことが多いです。
圧入後にブシュ内径が縮む——組付け後に内径を仕上げる
よくある落とし穴です。ブシュをハウジングに圧入すると、壁が締め付けられてブシュの内径が縮みます。 薄肉ブシュは数百分の一ミリ縮むことがあり、入れる軸を焼き付かせるには十分です。対策は、ブシュが単体の ときではなく、ハウジングに圧入した後にブシュ内径をリーマ仕上げ・加工することです。
追加の抜け止めと材料の組合せ
変動荷重や熱を受ける部品では、圧入だけでは足りないことがあり、抜け止めを加えます。
| 抜け止め | 向く場合 |
|---|
| ねじ止め剤・固定剤(嫌気性) | 小さなすきまを埋め、回転を防ぎ、振動に耐える |
| 横ピン・止めねじ | 回転と軸方向の抜けに対する確実な止め |
| 段付き+止め輪 | 正確な軸方向位置決め、かつ取り外し可能 |
材料の組合せも重要です。熱膨張の等しい二部品なら、しめしろは温度に対して安定します。鋼を アルミへ圧入すると、高温でアルミがより膨張してしめしろが減り、抜けることがあります。高温の 組立体は、室温だけでなく使用温度でしめしろを計算します。
MINATA発行チェック
- [ ] 機能、境界、故障症状を記載した。
- [ ] 基準、責任、工程、誤操作防止が明確である。
- [ ] 六項目に証拠と合否限界がある。
- [ ] 製造、組立、検査、保全を実機で試した。
- [ ] 改訂、サプライヤー、材料、構成記録が一致する。
良い設計は、製造、運転、保全、変更を通過する前提の連鎖である。ピンとブッシュのはめあいでは、形状と機能が信頼できる証拠を残すことがMINATAの基準である。
よくある質問
位置決めピンはどちらの板へ圧入しますか
残るほう、つまり基準の板です。保全のときに外す板には、わずかなすきまか中間ばめにします。両方へ圧入すると、 保全のたびにピンを打ち抜くことになり、打ち抜くたびに穴を傷めます。
滑りブシュはどこを締めますか
ハウジングへ圧入し、軸がブシュの中を通るようにします。ブシュは設計上摩耗する部品なので、交換できる側でな ければなりません。ブシュの交換は、ハウジングの穴を修理するよりはるかに安く済みます。
アルミのハウジングに青銅のブシュを圧入すると何が問題ですか
アルミは青銅より熱膨張が大きいため、組立体が温まるとハウジングのほうが大きく広がり、締めしろが減ります。 ブシュがハウジングの中で回ることがあります。高温で運転する組立体では、運転温度で締めしろを計算し直すか、 機械的な回り止めを追加します。
ピンをきつく圧入しすぎるとどうなりますか
外せなくなるだけでなく、大きな締めしろは周囲の部品に円周方向の応力を生みます。肉厚が薄ければ、割れたり、 隣の穴が変形したりします。締まりばめには常に、円周方向の応力と肉厚の確認が伴います。
テーパピンは使うべきですか
テーパピンは正確に位置決めでき、何度外しても穴を傷めにくいため、定期的に開ける組立体に向きます。代わりに 穴をテーパリーマで仕上げる必要があり、工程と工具が一つずつ増えます。初期の加工費と後の保全費のせめぎ合い です。
よくある質問(続き)
強く圧入するほどしっかり保持しますか。
そうとは限りません。しめしろが大きいほど保持力は上がりますが応力も上がり、薄いブシュを割るか降伏 させる閾値があります。実荷重を保持できるしめしろを選び、大きいときはかじらないよう焼きばめを 検討します。
なぜハウジングに圧入した後、ブシュ内径が焼き付くのですか。
圧入がブシュ壁を締め付け、内径を数百分の一ミリ縮めるからです。ブシュが単体のときではなく、ハウジング に圧入した後に内径をリーマ仕上げ・加工して避けます。
高温で鋼をアルミへ圧入するとき、注意点は何ですか。
アルミは鋼より熱で大きく膨張するので、高温でしめしろが減り、抜けることがあります。室温だけでなく 使用温度でしめしろを計算し、機械的な抜け止めの追加を検討します。
まとめ
ピンとブッシュのはめあいは、書類を整えるための手続きではない。設計意図を、繰り返し製作でき、組み立てられ、測定できる結果へ変えるための手段である。良い図面は、設計者がそばで説明しなくても伝わる。情報の構成そのものがその役割を果たさなければならない。
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