機械設計 #90:合わせ加工 — 二つの部品を一緒に作って初めて精度が出る
合わせ加工は境界が変わっても機能、精度、製造、検査、保全を守らなければならない。
形状より先に機能
セット、接合、抜き勾配、肉厚を決める前に、入力状態、期待結果、合否限界、故障症状、測定方法を書く。全ての値と変更に担当を付ける。
基本チェック
- 組で作る機能上の理由: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 共通のデータムと向き: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 加工の順序と取り代: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 組の識別、刻印、保管: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- はめあいと、組んだ状態での機能の検査: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 交換と手直しの規則: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
| 故障モード | 症状 | 確認 |
|---|
| セット・接合が曖昧 | はめあい・交換が違う | 識別と組立機能を監査 |
| 工程を省略 | 反り、すきま、ひけ、ずれ | 工程を確認・測定 |
| 文書が不一致 | 名称は正しいが改訂違い | 全資料を基準化 |
共加工が本当に必要になるのはどんなときか
共加工とは、二つ以上の部品を一緒に締め付けて一つの工程で加工することです。多くは穴あけ、リーマ加工、 輪郭加工です。部品どうしの相対精度は非常に高くなりますが、代わりに互換性を失います。
| 状況 | 共加工すべきか |
|---|
| 穴の位置が、公差の積み上げで達成できる以上に一致する必要がある | すべき。最も正当な理由 |
| 軸を抱く二つ割りのハウジングで、組んだ後に真円の穴が必要 | すべき。ほぼ必須 |
| 合わせ面が平らで、ぴったり合う必要がある | すべき |
| 量産部品で、互換性を保つ必要がある | すべきでない。公差と共通のデータムで解く |
| 「念のため」だけの理由 | すべきでない。安心と引き換えに互換性を捨てている |
判断の問いはこうです。この部品が壊れたとき、単体で交換するのか、組で交換するのか。組でしか正しく 交換できないなら共加工は妥当です。倉庫が個々の部品を単体で持つ必要があるなら、締め付けて一緒に削るの ではなく、公差とデータムで解きます。
選ぶ前に知っておくべき代償
- 単体交換ができない。 一つ壊れれば組で交換します。予備品も組で持つ必要があり、場所も費用もかか
ります。
- 修理が難しくなる。 何年も稼働した後に片方を失えば、両方を作り直すことになります。しかも図面に
作り直せるだけの情報が必要です。
- 工程順序が縛られる。 熱処理、表面処理、組立をその共通工程の前後に並べる必要があり、自由に入れ
替えられません。
- 一社に依存する。 二社へ分けて並行製作することができません。
組が入れ替わらないようにする三つの手当て
図面で空欄になりがちな、実行の部分です。
| 手当て | 具体的には |
|---|
| 組の識別記号 | 両方の部品に組番号を刻む。後の加工や皮膜で消えない位置に置く |
| 図面に明記する | どの工程を一緒に行うかを示し、「共加工、単体交換不可」と書く |
| 共通データムと順序 | 締め付けた状態で使うデータムを指定し、分離の前後で何を加工するかを示す |
識別記号は最も簡単で、最も忘れられやすい手当てです。組番号のない同じ形の部品が二つ組立台に並べば、一度 入れ替わるだけで共加工の効果はすべて失われます。
表面処理も通る部品では、その記号が処理後も残るかを確認します。皮膜の前に刻んで皮膜に埋もれてしまえば、 記号がないのと同じです。 機械設計 #89 — 部品への刻印 を参照してください。
対で共加工したら、その対を離さないこと
共加工が効くのは、二つの部品が寿命の間ずっと一緒にいる場合だけです。誰かが分解して別の相手と 組み直した瞬間に、せっかく出した精度は消えます。難しさは加工そのものよりも、対の記録と管理に 現れることが多いです。
図面と部品そのものに、次の四つを載せます。
- 合いマーク:対ごとに固有の番号を両方の半体に刻みます。「1-1」「2-2」のように、組立者と
修理者がどの半体とどの半体が組むのかを分かるようにします。
- 混用禁止の注記:組図に「共加工品——混用禁止」の一行を入れ、二つの半体を交換可能な予備品
として扱わせないようにします。
- 合否寸法は組立寸法:対を組んだ状態のすきまや同軸度を検査します。半体ごとに測って公差を
積み上げてはいけません。共加工そのものが、各半体の誤差を互いに打ち消しているからです。
- 予備部品の方針:予備を対で供給するのか、片方が壊れたら組立体ごと戻して再加工するのかを
先に決めます。単体の半体を持ってきてそのまま合うことはありません。
例:二つ割り軸受ハウジング
二つ割りハウジングは、二つの半体をボルトで締めた後に中ぐりします。したがって丸い穴は、その まさに蓋と本体の対、組んだその向きでしか正しくありません。左の蓋を右の本体に付け替えたり、蓋を 180度回して付けたりすると、穴は数百分の一ミリずれ、軸受が発熱して焼き付くには十分です。だから 蓋には必ず合いマークと向きの矢印を付けます。
MINATA発行チェック
- [ ] 機能、境界、セットまたは形状、故障症状を記載した。
- [ ] 基準、責任、工程、誤操作防止が明確である。
- [ ] 六項目に証拠と合否限界がある。
- [ ] 製造、組立、検査、保全を実機で試した。
- [ ] 改訂、サプライヤー、材料、構成記録が一致する。
良い設計は、製造、運転、保全、変更を通過する前提の連鎖である。合わせ加工では、精度と機能が信頼できる証拠を残すことがMINATAの基準である。
よくある質問
共加工はどんなときに選びますか
部品どうしに必要な相対精度が、公差の積み上げで経済的に達成できる水準を超えるときです。一致しなければ ならない穴の並び、軸を抱く二つ割りのハウジング、ぴったり合う必要のある合わせ面などです。安心のためだ けに使うものではありません。
共加工の欠点は何ですか
部品が互換性を失うことです。一つ壊れれば組で交換し、予備品も組で持つ必要があります。さらに工程順序が 縛られ、製作を一社に集約することになります。
組が入れ替わらないようにするには
両方の部品に組番号を刻み、後の加工や皮膜で消えない位置に置きます。そして図面に、共加工であり単体交換 不可であることを明記します。記号のない同形の部品は、一度入れ替わるだけで共加工の効果を失います。
共加工した部品の片方が壊れたら
原則として両方を作り直します。だからこそ図面には、最終寸法だけでなく、データム、工程順序、共通工程の 要求まで、最初から作り直せる情報が必要です。
共加工を避ける方法はありますか
あります。公差の段階で解く方法です。両方の部品に共通のデータムを使い、組付けの接点を反映したデータム 系で位置を指示し、穴の並びには最大実体公差方式を検討します。それでも足りないときに初めて共加工を選び ます。
よくある質問(続き)
共加工した対では、どの寸法を検査しますか。
組んだ対の寸法です。すきま、同軸度、組立体の平行度を測ります。半体ごとに測って公差を積み上げると 実際より悲観的な値になります。共加工が二つの半体の誤差を互いに打ち消しているからです。
片方が壊れたときはどう交換しますか。
単体の半体がそのまま入ることはありません。予備を対で供給しておくか、組立体ごと戻して残った半体に 合わせて新しい半体を加工します。これは設計の段階で決め、壊れてから考えないようにします。
合いマークは向きも示すべきですか。
複数の向きで組める部品(対称な軸受蓋など)なら示すべきです。正しい向きを表す矢印や偏心マークを 加えます。正しい対でも向きを間違えれば精度は台無しになるからです。
まとめ
合わせ加工は、書類を整えるための手続きではない。設計意図を、繰り返し製作でき、組み立てられ、測定できる結果へ変えるための手段である。良い図面は、設計者がそばで説明しなくても伝わる。情報の構成そのものがその役割を果たさなければならない。
現場のための早見表
判断は、状況・制御の仕方・目的を具体的に対応づけて示すと下しやすくなります。
| 状況 | 表し方・制御の仕方 | 目的 |
|---|
| 二つの軸受半体 | 締め付けトルクをかけた同じ状態で組んでリーマ加工する | 仕上がり穴の同心度を保つ |
| 蝶番の対 | 対として一緒に位置決めしてから穴をあける | 組んだときに噛んだり段差が出たりしない |
| 密封の合わせ面 | 一組として擦り合わせる、または合わせて仕上げる | 漏れ経路を制御する |
この表は、プロジェクトに適用される規格を置き換えるものではありません。「合わせ加工」を、製造・組立・検査のときに答えられる問いへ変えるためのものです。
読み違いを捕まえる確認
図面を発行する前に、設計に加わっていない人に図面を指さしてもらい、その対をどう作り、どう検査するかを言葉で説明してもらいます。その読み方が本来の意図と違えば、口頭で補うのではなく文書を直します。最初の一個は、腕のよい組立者がすき間を埋めて組んでしまうため合ってしまうことがありますが、後の量産ロットは、締め方や解釈が人によって違うためばらついていきます。
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