機械設計 #92:分割部品 — 精度は合わせ面と締付け方法で決まる
分割部品は境界が変わっても機能、精度、製造、検査、保全を守らなければならない。
形状より先に機能
セット、接合、抜き勾配、肉厚を決める前に、入力状態、期待結果、合否限界、故障症状、測定方法を書く。全ての値と変更に担当を付ける。
基本チェック
- 部品を分割する機能上の理由: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 合わせ面、データム、位置決めの形状: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 締結部品の配置と、管理された締付力: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 変形、すきま、ばり、清浄度: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 組立後の検査: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
- 分解、再組立、再現性: 値、出典、方法、担当、合否の証拠を記録する。
| 故障モード | 症状 | 確認 |
|---|
| セット・接合が曖昧 | はめあい・交換が違う | 識別と組立機能を監査 |
| 工程を省略 | 反り、すきま、ひけ、ずれ | 工程を確認・測定 |
| 文書が不一致 | 名称は正しいが改訂違い | 全資料を基準化 |
二つ割りにして得るものと、その代償
二つ割りの部品、つまり二つ割り軸受箱、二枚のカバー、二つ割りブシュは、一体の部品では解けない問題を解き ます。
| 二つ割りにする理由 | 例 |
|---|
| 軸を抜かずに取付けと取外しができる | 長い軸の中間軸受、クランク軸の軸受 |
| 内側の部品を通せない | すでに組んだ部分を囲うカバー |
| 内部の形状は分かれている間のほうが加工しやすい | 溝、深いくぼみ、油の通路 |
| 一体では加工も輸送もできない大きさ | 大きな機械ベース、大型の溶接構造の箱 |
代償は、精度がすべて合わせ面と、二つの半体の位置決め方法に集中することです。一体の部品にこの問題は ありません。二つ割りにした瞬間から、合わせ面のずれはそのまま、組んだ後の穴や輪郭のずれになります。
位置決めはピンで行い、ボルトで行わない
最も重要で、最もよく破られる原則です。
| 役割 | 担当する部品 | 理由 |
|---|
| 二つの半体を正しい位置に決める | 位置決めピン | ピン穴は精度よく加工でき、外して組み直すたびに再現する |
| 二つの半体を締め付ける | ボルト | ボルト穴にはすきまがあり、位置は決められない |
ボルト穴は組めるように必ずすきまを持っています。位置決めをボルトに期待すると、外して組み直すたびに二つ の半体の位置が少しずつ変わります。軸受箱では、それがそのまま真円でない穴になり、軸受は偏った荷重を受け ます。
位置を固定するにはピン二本で十分です。角度の誤差を小さくするため、できるだけ離して配置します。半体 を一方向にしか組めないようにするなら、対称にせずずらして配置します。
順序:機能部の仕上げは組んだ後に行います
合わせ面を通る穴のある二つ割り部品では、正しい順序はほぼ常に次のようになります。
- 二つの半体をそれぞれ荒加工する。
- 両方の合わせ面を加工する。
- 組み合わせ、ピンを入れ、規定のトルクでボルトを締める。
- 組んだ状態のまま、穴と機能面を仕上げ加工する。
- 組の記号を刻み、必要なら再び分解して残りの工程を行う。
決め手は三番目と四番目です。正しいトルクで締めた状態で仕上げた穴が、機械が動いてからも真円を保ちます。 半体ごとに仕上げてから組み合わせると、締めたときに各半体がわずかに変形するため、穴はゆがみます。
これに伴う結果として、二つの半体は一つの組になり、単体交換ができなくなります。組番号を刻み、図面に 明記します。 機械設計 #90 と同じ原則です。
合わせ面:書くべき四つのこと
- 合わせ面の平面度、および独自の表面粗さの要求があるかどうか。
- どこに置くか。穴の中心を通すのが最も一般的ですが、荷重の受け方や取外しの方向によっては、ずらした
ほうがよい場合もあります。
- シムの有無。シムがある場合、その厚さは穴の公差の連鎖に入ります。
- 仕上げ加工時と最終組立時の締付トルク。この二つは同じでなければなりません。
継ぎ目が、二つ割り部品の成否を決めます
部品を二つの半体に割ると合わせ目が一つ増え、その継ぎ目が誤差の入り込む場所になります。継ぎ目 そのもので、次の三つを管理します。
- 位置決めの再現性:ボルトだけでは、外して組み直すたびに二つの半体が少しずつずれます。位置
決めピンを二本(テーパピンまたはリーマ通しの平行ピン)加え、毎回もとの位置へ戻します。ボルトは 締付力を、ピンは位置を保つ——別々の役目です。
- 平らで密な合わせ面:二つの合わせ面は平らで、すきまも段差も生じないようにします。精密な継ぎ目
では研削またはきさげ、油のかかる継ぎ目では溝とガスケットを加えて漏れを止めます。
- 継ぎ目の段差:穴が合わせ目を横切る場合(二つ割りハウジングの軸受穴など)、半体間のわずかな
段差でも穴は真円から外れます。だから穴は、ボルトを使用荷重まで締めた後に中ぐりし、半体ごとに 加工しません。
加工の順序が継ぎ目穴の真円度を決めます
| やり方 | 穴の真円度の結果 |
|---|
| 半体を別々に中ぐりしてから合わせる | 継ぎ目で穴がゆがみ、軸受が入りにくい |
| 合わせ、全荷重まで締め、それから中ぐり | 使用状態で穴が真円 |
| 合わせ、軽く締め、中ぐり、組立時に強く締める | 最後の締付で穴が再びゆがむ |
ボルトを締めると組立体全体が変形するので、穴が真円になるのは中ぐりしたときと同じ荷重のときだけ です。図面に締付トルクと「組立後に中ぐり」の注記を入れ、現場が都合で半体ごとに中ぐりしない ようにします。
MINATA発行チェック
- [ ] 機能、境界、セットまたは形状、故障症状を記載した。
- [ ] 基準、責任、工程、誤操作防止が明確である。
- [ ] 六項目に証拠と合否限界がある。
- [ ] 製造、組立、検査、保全を実機で試した。
- [ ] 改訂、サプライヤー、材料、構成記録が一致する。
良い設計は、製造、運転、保全、変更を通過する前提の連鎖である。分割部品では、精度と機能が信頼できる証拠を残すことがMINATAの基準である。
よくある質問
二つの半体をボルトで位置決めしてよいですか
いけません。ボルト穴は組めるようにすきまを持っているため、締め付けはできても位置は決められません。位置 決めはピン、締付けはボルトです。この二つの役割を混同することが、軸受箱が外すたびに違う位置に収まる原因 です。
穴の仕上げは組む前と後のどちらですか
組んだ後です。ピンを入れ、規定のトルクで締めた状態で行います。半体ごとに仕上げて組み合わせると、締めた ときの変形で穴がゆがみます。仕上げ時のトルクは最終組立時のトルクと同じにします。
二つの半体は単体で交換できますか
組んだ状態で穴を仕上げた場合はできません。二つで一つの組になるため、組番号を刻み、図面に明記します。単 体交換とは、残った半体と一緒に穴を加工し直すことを意味します。
合わせ面は穴の中心を通すべきですか
中心を通すのが最も一般的で、加工も組立も容易です。ただし主な荷重が合わせ面と同じ方向に働く場合は、荷重 の最も大きい位置に合わせ面が来ないよう、ずらすことを検討します。
位置決めピンは何本必要ですか
位置を固定するには二本で十分です。角度の誤差を小さくするためできるだけ離して配置し、半体を一方向にしか 組めないようにするなら、対称にせずずらして配置します。これで逆組みの防止も兼ねられます。
よくある質問(続き)
二つ割り軸受ハウジングは、なぜ合わせた後に中ぐりするのですか。
ボルトを締めると組立体全体がわずかに変形し、穴が真円になるのは中ぐりしたときの荷重のときだけ だからです。半体を別々に中ぐりして合わせると、継ぎ目で穴がゆがみ、軸受が発熱して早く摩耗します。
ボルトで固く締まっているのに、なぜノックピンが要るのですか。
ボルトは締付力を保ちますが横方向の位置は保たず、何度か分解すると半体がずれます。位置決めピンを 二本入れると、毎回半体をもとの位置へ戻し、継ぎ目穴の精度を保てます。
合わせ面は研削が必要ですか。
精度によります。精密な軸受継ぎ目は、すきまも段差も出ないよう研削またはきさげします。一般の機械 本体の継ぎ目はフライスの平面で足り、油のかかる継ぎ目はガスケットと溝を加えて漏れを止めます。
まとめ
分割部品は、書類を整えるための手続きではない。設計意図を、繰り返し製作でき、組み立てられ、測定できる結果へ変えるための手段である。良い図面は、設計者がそばで説明しなくても伝わる。情報の構成そのものがその役割を果たさなければならない。
現場のための早見表
分割部品は、状況・示し方・目的を対応づけると位置が安定します。
| 状況 | 示し方・制御の仕方 | 目的 |
|---|
| 合わせ面 | 共通のデータムと面粗さを指定する | 二つの半体の位置を安定させる |
| 位置決め | 締結の機能と分けたピンを使う | 組み直してもずれない |
| ボルト | 締める順序とトルクを規定する | 想定した変形に収める |
実際の場面
軸を抱く二つ割りは、正しいトルクで締めれば所定の内径に入っても、外して単体で測ると違う値になります。だから機能寸法は、位置決めピンと締付順序を含めた「組んだ状態」に結び付けて指定しなければなりません。
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